強度といえばこの和紙!国産楮100%手漉き和紙
この和紙の基本情報
山形県産
那須楮(栃木県産)100%使用
ソーダ灰煮
4匁(もんめ:紙の重さを基準にした厚さの単位。4匁はだいたい障子紙ぐらいの薄さ)
強度が必要な時に最も使われている和紙
楮の産地
和紙に使われる原料の中で特に有名な楮ですが、実は産地によって品質に差があります。
先日和紙職人さんに伺ったお話によると、楮の産地の気候は、繊維の細さに影響を与えるそうです。
傾向としては、寒冷な地域でできる楮は細い繊維になり、温暖な地方でできる楮は太くかつ大味な繊維になる、とのことでした。
現在日本で売られている和紙は、タイで栽培された楮を使っているものが多いです。タイの気候は温暖なため、楮の繊維は太くて粗いです。
こういった繊維を使って薄い紙を漉こうとすると、繊維の太さや粗さが邪魔になり、表面が滑らかな紙を作ることは難しくなります。
今回ご紹介している和紙は、栃木県産の那須楮を100%使用しています。
栃木県は、気候が寒冷なので、楮の繊維はとてもきめ細やかです。なので、4匁という薄さでも、表面が非常になめらかで、質の高い紙になっています。
繊維の処理
和紙を作る際には、楮の繊維の純度を高め、柔らかくするために、煮沸する工程があります。(煮熟と呼ばれています。)
この煮熟を行う際には、繊維の中の余計な成分、リグニンなどを溶かす為、アルカリ性の溶液を使います。
一般的な和紙の多くは、繊維の中の不純物をより簡単に速く溶かしてしまうために、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)という非常に強い薬品を使っています。
しかし、苛性ソーダを使ってしまうと、楮の繊維そのものまでも傷つける上に、繊維の周りにある色々な無害な成分も溶かし過ぎてしまいます。そのため紙は痩せ、墨や絵の具の発色にも悪い影響が出ます。
苛性ソーダを使って作った紙を顕微鏡で見ると、繊維と繊維の間に大きな隙間があるそうです。この繊維の隙間は、紙にカビ菌などが入る大きな原因になるため、保存性も下がってしまいます。
また、苛性ソーダを使っている紙は、高確率で塩素漂白もされています。この塩素漂白剤は、紙の黄変の原因にもなってしまうので、注意が必要です。
今回ご紹介している紙は、苛性ソーダよりもアルカリ性が大幅に弱いソーダ灰を使用して煮熟しています。もちろん塩素漂白剤は使用していません。
そのため、繊維の傷みは最小限に抑えられており、紙の強度、保存性ともにとても優れた紙になっています。
こちらの商品の使用例
原材料にも、原材料の処理にも細心の注意を払い、職人さんに一枚一枚丁寧に漉いていただいているこの紙は、パルプ入りの紙と比べて、水に濡れても破れにくいという強みがあります。
また、重ね塗りをたくさんしても、表面がボロボロになりにくいので、絵画や版画にも大活躍します。水彩紙でもパルプ入りだと表面がボロボロになることがあると思うのですが、和紙も同じでパルプが入っていないものの方が強いです。
以下、実際にこの紙が使用されている現場を挙げています。
篳篥(ひちりき)の吹き口に使われるリードのシール部分
歌舞伎、文楽三味線のバチの滑り止め(歌舞伎三味線は特に演奏が激しく、流血することがよくあります)
床山(とこやま)の現場
何度も色を重ねる版画
日本画や水墨画などの絵画
この和紙の描き味
この和紙の滲みには、繊維の長さがとてもよく現れます。
パルプ入りの和紙は、滲みの境界線がとても柔らかく、マイルドなのですが、繊維が長い和紙は、繊維の長さが滲みに現れるため、少しギザギザした境界線になります。
雁皮紙等と比べると比較的滲む紙ですが、筆勢があれば細い線も字も問題なく描けますよ。
国産楮100%手漉き和紙は、丁寧に作られた本当に良い紙ですので、紙の強度や保存性にお困りの際は、是非お試しください。
和紙の強度に関しては、こちらの記事も併せてお読みくださいね!↓
和紙や筆のことでお困り事がありましたら、是非一度ご相談ください。
丸山雄進堂
大阪市中央区島之内2-6-23
06-6211-6226
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