紹興酒を呑みに紹興へ。 2016.8
2016年8月。日本人駐在者のいなくなる、盆休みの時期。
連休にして、常州から片道約250km、浙江省の紹興へ 1泊2日のコンパクトな旅。
” 紹興で紹興酒を飲む " というシンプルなテーマで出発。
天気も良く、ドライブ日和。。。
少し、長い記事になっています。時間のある方はどうぞ。
ルートマップ 2016.8.14
常州から、無錫、蘇州、杭州から紹興 も考えたが、杭州は大都市で高速道路も混み合うことがあるので、嘉兴 の脇を抜けて、寧波方面へ大きな橋を渡って、紹興へ入ることにする。
嘉興 東湖 jia xing dong hu
先を急がないので、嘉興市にある " 東湖 " を軽く散歩に立ち寄る。
午後の程よい運動が、夜の酒をより美味しくしてくれるって寸法だ。
日差しはは強いが、水辺の風は心地良い。
嘉紹大橋 jia shao da qiao
" 嘉绍大桥 jia shao da qiao ジャーシャオダーチャオ "、
字の如く嘉興市と紹興市を結ぶ、杭州湾入口にかかる、大きな橋である。
主橋全長は 10.137 km、幅 40.5 m 対向8車線の、総工費は1兆円越え。
2013年に開通している。
陸橋、水上橋を合わせた世界の橋全長 ランキング39位。
瀬戸大橋ですら6つの橋を繋ぎ合わせた全長で12km、上のランクにいるが、単独の主橋でこの全長はトップクラス。
ちなみに、橋の全長ランキングTOP40の中、中国が19本、台湾が2本、合わせて21本を占めている( wikipedia 調べ ) 。
もはや架橋大国の中国。何かとずさんな工事が目立つ中国がこういう大掛かりな工事をやってのけるのは謎だが。。。
吊り橋の大きな支柱の上に " 嘉興大橋 "の四文字。
これは、中国の文豪である魯迅 ( 紹興出身 )の手書きの原稿の文字から字体を抽出して書かれているらしい。ここを通って、紹興に入るのはなかなか良い感じ。
紹興 shao xing
夕食
紹興では有名なレストランだが、システマチック。
多くの旅行客に対応できるようになっているが、一人旅には風情に欠ける感じ。
紹興酒を使った土地の料理が出てきて、呑みたい気分はできてるがここはサラッと離れることに。
団体ツーリストや、家族連れには重宝するお店。ということで。。。
夜食
ここが独り者にはいい雰囲気。
” 唯独一家民居餐馆 wei du yi jia min ju can guan "、と看板にある。
” ただ一軒だけの、民居レストラン "。良い響きだ。
紹興酒と言えど、いろいろある。 " 陈年 " = 熟成年数の違い、仕込み、度数の違い。。。
” 散装 " = 計り売り、があるので、100ml、いろいろ飲みたいんだってお願いしたら50ml ぐらいでも注いでくれた。口に合うものを見つけて、それをたっぷり飲めばいいと思ったが、あれこれ試すだけで出来上がっていく。
楽しかった。酒飲みでも日本人。紹興酒というお酒の経験値が乏しい、いやほぼ知らないに等しい。
サラッとした瓶詰めの製品しか知らない。上海蟹のお供として、年に数回口にしただろうか。
学びながら酔っ払う。
酌み交わして語る相手でもいたならもっと飲めただろうな。
ドライブ疲れと、また翌日のドライブに備えた飲み方で、本領発揮まではいかず。
" 黄酒 huang jiu ホァンジュウ "
紹興で作られた黄酒を " 紹興酒 shao xing jiu シャオシンジュウ " と呼ぶのであって、多くの地方で、様々な穀類を使って作られた琥珀色の醸造酒が存在する。
特に名の知れた、紹興の黄酒は春秋の記録にも記されているようでおよそ2500年の歴史があるとのこと。
実際はそれよりも500年も早くに湖南省衡阳に伝わる酒があるようで、それが源流という説が有力のようだが、この紹興という場所で発展させ名を馳せた酒であるということに違いはない。
日本にいた時には紹興酒と言うモノは、” もち米の醸造酒 " の認識だったが、中国で実際に出会うのは、うるち米もあり、きび、とうもろこし、そば、コーリャン、など複数の穀類の混合タイプが主流になっている。
本来はそれらを煮る過程で生まれる自然由来の色素が琥珀色を生んだようだが、近代化において( 精製され過ぎ?) 発色をカラメルで補い品質の安定を計っているらしい。
ワイン同様に、こだわる人にはタイプごとに合わせる料理の組み合わせもある様子。私も紹興を訪れて初めて、これらを一通り味わうことができた。
香雪酒 に至っては、味醂やバルサミコ酢 同様に少し煮詰めればそのまま甘タレのように調味料になる代物だった。
歴史の分だけいろいろな蘊蓄 の尽きないお酒だが、この記事で私が書くのはここまでにする。
江蘇省もどちらかというと白酒 よりも、黄酒 に親しむ地域だが、私は個人的嗜好で中国酒なら白酒の方が多かった。もっと地元文化を積極的に学ぶべきだったと今では思う。
しかし、黄酒に関しては味が複雑で楽しめるが、舌に残る成分も多く感じ、常飲すると日本酒や出汁の味利きに影響があると体感していることも記しておきたい( 言い訳に聞こえる? )。 ほんまに。
梅干菜焖肉 mei gan cai men rou
“ 梅干菜 mei gan cai " とは、紹興の特産で葉野菜の漬物を干した物。からし菜、あぶら菜、白菜などを主原料とし、浙江省、広東省に広く伝わるもの。
葉野菜は、洗って天日に干し、数日して萎れ始めたら塩漬けにして黄色くなるまで発酵させる。それを絞ってさらに天日干しにしたものが” 梅干菜 "だ。良い風味と酸味を持つが " 梅 " と関係があるわけではなく、広東省の” 梅州 " 、土地の名に由来するらしい。
” 梅干菜焖肉 mei gan cai men rou メイガンツァイムンロウ "は、中国八大料理系統の一つ、” 浙菜《ズーツァイ》( 浙江省の料理 ) " の一派で " 绍兴菜 " の伝統料理である。
” 東坡肉 ” を考案した 蘇東坡が杭州に赴任した際に紹興を訪れ、この地の梅干菜と得意の東坡肉を組み合わせて考案した料理だという。
椀の中に豚バラ肉を入れ、梅干菜を詰め込んで蓋をして蒸し上げた料理で。肉の旨みと脂は梅干菜に染み渡り、梅干菜の塩気、酸味、香気が肉に染み渡る。肉の旨みに溢れる料理でありながら、脂っこさを感じさせず、食べ飽きない。
▼ 杭州料理、蘇東坡の故事について記事を書いています。気になる方は。
スタバ
中国でしっかり根付いているスタバ、人の集まるところならどんな街にもある。
日本のコンビニ同様、画一のサービスでインフラ化している。
共産国のトップダウン的な画一と、民主国から出づるサービス優先からの画一と。
自分もスタバには世話になる。しかし人間が求めるものはわがままで、便利に発展する大企業チェーンの看板が街の個性を消していってるのは世界中で同時進行中。
人類が抗えない画一化。。。不便を認めないと、個性や特色を守れないのか。
朝の散歩
明け方の散歩。ホテルの前に聳える塔は、” 大善寺塔 " 。
南宋期の建造物だ。幾度もの修繕を受けているようだが、この街のランドマークになっている。
朝、早いこともあり、飲食店や土産屋もまだ店を開けていない。
少し歩くと、一軒の麺屋さんが一番乗りで店を開けている。仕事に向かう人たちの朝食スポットらしい。
私はこういう地元の人たちが、日常に使うスポットにも興味が強い。
ある。この地の特色。
” 笋干鸡柳拌面 sun gan ji liu ban mian スンガンジーリュウ バンミェン "。
” 干し筍と、鳥ささみの混ぜそば " 、メニューを訳せばこうなるがササミは入っておらず、旨みの補填的に刻まれた鶏皮のようなものがちらほら混ざっている。
メインは、筍と干し豆腐、麺は自家製のコシのある平打ち麺。
思いっきり干し筍が食感と香りで主張してくる、郷土色の濃い愉しい一椀でした。
文豪 魯迅の生家
私は実に文学にほとんど慣れ親しまない人間で、筆下手である。
こうしてnote に文字数の多い記事を書き続けるのが自分でも不思議なくらい。
まぁ、語彙の少なさから察しいただけるかとは思うが、文章より、絵や写真の多い本を好むし、魯迅という人物は名前ぐらいは知っていても、それ以上のウンチクのようなものがない。
魯迅。慎ましい生活を送ったようだが、邸はそれなりに良い家柄の雰囲気が漂っている。
私は此処を訪れたことから、いつか作品に触れる機会が生まれたのかも知れない。
ファンの方には申し訳ないが、あくまで旅の流れで立ち寄ったもので。。。
菜场 cai chang
旅先でも、仕事してます。
ホテル近くに市場を見つけたので、それとなく市場をチェック。
意外に広い。代わりに他の市場と所在する距離があるのかも知れない。
干し筍や、梅干菜を除けば大体の野菜、果物、肉、魚に常州との大きな違いは見かけなかっただろうか。
▼ 一つ大きく目立ったものはこちら。
“ 金华火腿 jin hua huo tui ジンホァフォートゥイ " = 金華ハム。
同じ浙江省でも100km 近く隔てた金華市の特産だが、金華周辺の都市で作られるものも " 金华火腿 ” と呼ぶらしい。
豚のモモ一本丸ごと塩漬けにして干してある。まるで平らな棍棒、あるいはラケットのようだ。
( 後に金華市も旅している、ハム、詳細は別の記事にて・・・)
土産屋にて
2日目の昼食
昼飯にもう少し、紹興の料理を楽しんで帰ることにする。
” 醉鱼干 zui yu gan ズイユュガン "
” 青鱼 ” という紹興の池塘で獲れる魚を干した物も特産品で、これを戻し紹興酒を使った調味液に漬け込んだもの。美味しい。
” 醉青鱼 zoo qing yu ズイチンユュ "
こちらは新鮮な 青魚を使ったもの。紹興で肉ばかり食べていたので、あえて風干しと鮮魚の " 青魚 " を頼んでみた。
” 梅干菜焖肉 mei gan cai men rou メイガンツァイムンロウ "
2日連続の登場。少しハマった様子。梅干菜を理解して、もう一度トライ。前日のものより、ふっくらした厚みのある甘い梅干菜。野菜を一品入れるべきところを、躊躇なくこの料理を頼んだ。美味しい。店ごとに違いがあったのも良かった。
再び紹興酒を飲みたい気分になるが、堪えて帰る。
帰路
中国の道路はどんどん綺麗になっていく。この頃の高速脇の緑も随分整い始めていたと改めて思う次第。
ややルートを変えながら常州の帰路に着く。。。
帰国後、日本で中国の地図は見ることができるが、経路ナビは使えないので具体的な旅の走行距離は出せない。常州から紹興、往復約550−600kmぐらいの旅だっただろうか。
1泊2日だが、景勝地巡りとはまた一味違う旅。テーマがあって楽しめた。
以上
▼ 追加記事。紹興の料理を作ってみた。
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