見出し画像

人生、鮭とばじゃ。テキトーが良いのじゃよ〜私の元に、仙人が!?〜 小説ver


幸せになれない/生まれる必要はあるのか?


私「何でだろう。毎日、色々頑張っているのに、成果って、出ないよなぁ。嫌になるよ、毎日毎日。いいことないのに、嫌なことはあるし」

今日も仕事はうまくいかないし、このご時世で最近遊びらしいことも出来ていない。それに加えて、推しもいない。もちろん恋人もいない。とぼとぼと歩いていると、ふいに背後から奇妙な声が聞こえてきた。


福丸仙人(以下、仙人)「笑止千万。まだまだ、青いのう。そこの小娘!」



私「えっ、誰?ってか、小娘って、久々に聞いたセリフ」 

彼女の背後には、いかにも仙人然とした、白い髭を生やした老人が雲の上に浮いていたのである。まるで、転生もののような気分になった。2020年からのこのご時世で、私はどうかしちゃったのか?と、彼女は思う。

仙人「福丸じゃ。だからじゃよ。がんばるから、うまくいかないんじゃ」


仙人は、一人納得したかのように、うんうんと、頷いている。

私「てか何?もしかして、自己啓発本みたいなパターンのやつ?」

彼女は、そういえば200冊以上も、自己啓発本を読んでいた。その中では、大体不思議な存在が現れて、凡人にアドバイスするのだ。展開は大体読めるのだが、なんとなく読んでしまって、次から次へと読み倒したものだが、なんら彼女の生活は変わらないのだった。

仙人「おぬし、自己啓発本が好きそうな顔しとるのぉ。読んで満足するタチじゃろ?いいカモじゃのう。おんなじような本に金を使うなら、その分で、美味しいものでも食べりゃいいのに、甘味なぞを」


私「一応、ダイエットしてるので。それに、本にお金を使った方がいいって、みんな言ってるじゃないですか」


仙人「して、その本読んで今どうなっとる?ダイエット?ハハハ、そんな体型で笑わせてくれるわ。果たして、イライラしながら、痩せれるのかな?」


私「それは、そうだけど…」

そうなのだ、全てが悪循環のようで、頑張ってダイエットしても、痩せもしないし、喜びもない。かといって、自分の健康を気遣いたいのだが…


仙人「テキトーがいいんじゃ、人生なんつーのは。考えてみぃ。成功なんてせんよ。おぬし、成功したことなんてあるかい?」



私「まぁ私は…でも、ほら、YouTuberとか、tiktokerとか、色々成功者はいるじゃないですか」


仙人「ホホホ。いや若いの。お主、高校受験、希望校だったか?大学は?やりたい習い事をできていたか?やりたい仕事についてるか?」


私「確かに…」


仙人「それに、成功すればするほど、あれもこれも欲しい、となる。して、おぬしのように成功してない者も、欲望だらけで満たされていない。一体いつになったら、みんな幸せになる?まことに嘆かわしい世の中じゃ」


仙人の風貌には、言葉の説得力があった。いや、見かけで判断してはいけないとは、思う。でも…と、彼女は思う。


仙人「まったく、幸せを求めようと、しすぎなんじゃ。この世の中は、のぅ。最近は特に酷い。そんなに映えてどうするのかい?映えと見栄。自分だけで消費すりゃええが、最近は持たざる者を見下す輩もおる。いいこと教えてやろう。幸せはな、探すと見つからないんじゃ。」


私「でも、楽しかったことを寝る前に3つ書いたり、感謝日記をつけたらいいって聞きました」


仙人「そういう人もいるんじゃな。ところで、知っとるか?辛いことの方が記憶に残りやすいという論文もある。最近はよく、自分は生まれる必要がなかった、とかいう人もいるな。こんな時代だからと」


私「実は私も、そう思ってます。まぁ、面と向かって人には言わないですけど。生まれる意味ありますか?そもそも生まれたくて、生まれたわけでもないのに。楽しいことも、あんまりないし…」


仙人「ハハハ。近頃の人間ってぇのは、欲望の権化じゃのう。たしかに、楽しいことは少ないかもしれない。でも、そんなに辛いこともないものじゃ」


私「高校の頃、バイト先で嫌なことがありましたけど…あれが、一番嫌な出来事です」


口にするのも嫌な経験だ。声にしてしまえば、封印してきた記憶が蘇ってしまいそうで怖かった。あれから、ずっと、忘れられていない。学生時代、学校での嫌な出来事も。先生とのいざこざも、家族との確執も…なんで、こんなに立て続けに起こるの?、と、何度となく思ってきた。

仙人「ほぅ。おぬし、今までそれを考えてきたのか?無駄じゃのう?」


私「はぁ?ふざけないでよ。あなたにこの、辛い気持ちわからないでしょう?私だって、忘れたいの!忘れられないんだから、しょうがないでしょ?」

仙人「おぬしの思いは、わからぬ。では、その辛かったことは、どのくらいの期間だったのか?」


私「バイトは…1年かな」

仙人「一年?24時間ずっと働き倒しだったのか?」


私「そんなわけないでしょ?シフト、一日4時間。週3」

仙人「本当に、その一年ずっと、嫌だったのか?」

私「たしかに…店長が変わってからだから、一年ではないかも…」

仙人「そうじゃろ。総時間一年もないんじゃ。それをずっと、例えば50年間考えていたらどうなる?50年、嫌な人生じゃよ。冷静に考えれば、嫌なこともそこまでないのが、人生なんじゃ」

私「まぁ…そうかもしれない…」

仙人「このご時世じゃ、考えることなんてたくさんあるな。不確実な時代じゃ。でも、考えて解決したか?少し考えるのはいい。でも、考えすぎたり、自分じゃどうしようもないことを考えたりしていないか?」


私「たし…かに」


仙人「近頃のやつはのう、暇すぎるのかな。考えてばかりじゃ。小童の知能レベルでは解決もせんことを。なんとかなるんじゃ。幸せも少ないかもしれないが、辛いことも少ないのだ。食べるものも食べれている。今の日本では。それで、何を「生まれなきゃよかった」なんざ、よぅわからんの」


私「でも、仕事無くなった人もいるよ?このご時世なんだから。食べれない人だっているじゃん」

仙人「最低限なら、なんとかなるじゃろ。例えば仕事を選ばないとか、困ったら生活保護だってある。とやかく言う人は、いるがのう。考えすぎなんじゃ」


私「…」

仙人「ところで今、おぬしは何歳じゃ?」


私「まぁ、20と数年生きてきました。ていうか、年齢聞くのは、時代的に合っていなくないですか?人間、年齢じゃないでしょ」

仙人「おう、すまんのぅ。でも別に差別しようとして聞いたのではないから、許してくれぃ。ちなみにわしは1300歳じゃ。わしからみたら、おぬしはまるで、赤子じゃよ」


私「1000年も生きて、退屈じゃないですか?」


仙人「退屈?ほほほ。娯楽を欲しがりすぎじゃよ。刺激がそんなに欲しいんか?わしは、満足しとる。今と自分を受け入れると、人生っていうのは楽しゅうなるぞ」


私「羨ましいかぎりですが、そんなに悟れません。欲まみれの現代人なんです、私は」

仙人「人生の楽しみっていうのはのう、長くいきてからわかるんじゃ。人間なら最低でも、50くらいから。そこまで、生きて、自分の人生ってぇのはわかるもんじゃ。チーズ鱈みたいなもんなんじゃ。味わえば味わうほど良いものなんじゃ。鮭とばとかなぁ…」


独特な例えだ。

私「そういうものですか」


仙人「おっと、そろそろ時間じゃ。それでは、のう。元気に生きるのじゃ、小娘」

そういうと、唐突に仙人は、何処かに去っていったのだった。

私「まぁ、もうちょっと、力抜いて人生を楽しもう」

何故か彼女は、清々しい気分であった。


サポートありがとうございます。 なるべく間を空けずに、記事を更新します。 頂いた金額は、本代に使用して、教養を深めます。 それを記事に還元出来るように、精進して参ります。