九州デンタルショー 講演について
近畿デンタルショー2023に引き続き、「cara Print 4.0pro導入による歯科技工所の変化」と題したセミナーを開催します。
◆登壇に対する想い
歯科技工に関する業界に努める皆様に、弊社が取り組んでいることや想いをお伝えする場として、このセミナーを開催することにしました。
ただ、今回は時間が50分枠なので、伝えきる部分が限られています。
物事を進める事で背景と目的は非常に重要だと考えています。伝えきれない背景部分をこちらに記載をしておきます。長文で申し訳無いですがご一読頂けると幸いです。
<背景:歯科技工士が置かれている状況ー無視する事は出来ない7つのポイントー>
①若手技工士不足
1991年には3,155人の合格者数だったが、2023年には820人と約4分の1に減少。
ほぼ全国にあった歯科技工学校養成所も19県、歯科技工学校の無い空白地帯が生まれる。
新卒の有効求人倍率は10倍~20倍に。若い人が雇えない時代になってきている。
過去は供給多寡で辞めても次がいる環境だったが、今は長く働いてもらう環境を整えなければならない。
②歯科技工士の年齢階級割合
平成28年の時点で50歳以上の割合が50%、40歳以上の割合が70%を占める。
令和5年、7年が過ぎた現在は業界の高齢化は進んでいると予想される。
数字以上にアナログ技工の特性上、どうしても長時間労働の体力仕事は年々生産能力は落ちてくる為に数字以上に労働力は低くなっていると考えられる。
長く働く為にも、体力だけに頼らない働き方を模索しなければならない。
③高齢化社会と歯科技工物の推移
厚生労働科学研究補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)「歯科衛生士及び歯科技工士の復職支援等の推進に関する研究」(H28 医療 一般 005)
によると若い世代のカリエス等は減っていき全体的に歯科技工物の量は減って行くと予想されているが、ブリッジと部分床義歯は相対的に増えていく予想が立てられている。
デジタルの発展により、需要より供給能力が勝る可能性もあるかと思うが現段階では懸念点である事は間違い無い。
④労働基準監督署の指導の活発化
歯科技工業界は、職人仕事であり長時間労働が大小に限らず過去からあたりませに行われてきた。しかしながら、ここ数年で労働基準監督署指導が活発化しており多くの雇用ラボの歯科技工所が指導を頂いている。
雇用者が1人でも入れば対象になって来る。少人数だから指導が来ない事は無い。
長時間労働が常識だった業界に急速に労働法に直面している状況である。
個人事業主の方は、過労死ラインで働いている方も多数を占めている現状を鑑みると、「人間らしく生きる」を大切にしないと年齢を重ねた時のリスクが大きくなって来ると考える。
法律縛られない状況は一見自由ではあるが、外圧が無い状況であり、よほど自らを律しないと変えれない事からある意味不利な部分であるとも思える。
個人的推測では40半ばから体力の衰退は始まり、より厳しい労働を重ね続けなければいけなくなるのでは無いかと考えている。40半ば~体を壊して仕事が出来ない状況は多々耳にする話で、体力に任せて長時間労働で売上を上げている所は何時までも続かないと考えている。
公私と健康のライフワークバランスを見直す事は、大小変わらない課題ではないかと考える。
歯科技工士の成功例が、長時間労働を行った上での高収入がモデルケースになっている点は、歴史を振り返ると業界の衰退に繋がったのでは無いかと推測する。ただ、それ自体は個人の自由なので否定するものでは無い。成功の選択肢がもっとあっていいのでは無いか。
⑤働き方改革の強化
残業時間も大臣告示による上限から法律による上限へと変わり厳格化されている。年々、働き方改革は強化をされており、今後も緩まる事が無い予想が立てられる。
また、ネットやSNSの発展により従業員に情報が早く入るようになり、企業側は労働指導のリスクは格段に上がっている。成るべく早く労働時間改善等働き方に向き合わないと、だんだん不利になり時代に取り残されてしまうのでは無いか。過去の技工業界の常識は捨てて、経営者が変わらなければならない時がきている。
⑥物価と最低賃金の上昇
2022年4月から急に物価上昇になり、生活必需品だけではなく、歯科技工に係るものも急激に上がってきている。
近年、最低賃金は時給平均30円上昇をして、2012年から比べても平均212円も上昇している。社会保険料も年々上がってきているので今後も人件費は一定数まで上がり続けるのであろう。
売上の現状維持、生産率が変わらない場合は実質マイナスである。
⑦歯科技工に係る保険点数は原則的に伸びていない
CAD/CAM冠やチタン冠等、新設された補綴物はまだいい点数がついているが、それ以前からある、有床義歯、金属歯冠修復の点数はほぼ上がっていない。
その一方で物価、人件費は上がり続けているため非常に苦しい状況である。
日本の歯科技工士の多くが、保険の歯科技工業務に関わっている為にほぼ全ての技工士に直面している問題である。
上記の7点、従来の長時間労働モデル、歯科技工士の使い捨て(短期間高離職率)モデルの脱却を図りながら経営を行わなければならない
<株式会社フジ.デンタルラボの場合>
①若手技工士不足
福井県は2008年に学校が閉鎖、それまでは毎年1人の入社希望者はいたが、2021年までで4名の新卒入社、2015年からは1人もいない状況。
地域に学校が無い状況は、ある地域よりも状況が厳しく空白化が速く訪れる可能性が高い。
ただ、これは福井県だけでは無く今後全国に起こるであろう現象である。
②歯科技工士の平均年齢
2021年時では歯科技工士の平均年齢は40歳半ばになった。
弊社も長時間労働モデルの会社のため、高齢の技工士から体力仕事が出来なくなり年々生産能力が減ってきていた。
③高齢化社会と歯科技工物の推移
将来への供給能力の不安。歯科技工士としての社会的意義、地域医療を守れないのでは無いかという不安は過っていた。
ただ、地域医療を守る=歯科技工士の長時間労働の上守られるものでは無いと考える。
今まではその状態で支えて来た事は否めないが、今後はこのモデルからの脱却が必須と考える。結局は、過去から学び、業界の殆どが続かない状態は脆弱な地域医療に直結していき、いずれ空白化を招いてしまう。
④労働基準監督署の指導の活発化
長時間労働を行っていた会社だったので、2016年12月に指導を頂く。
未払い賃金、その他費用の合計として約3,000万の支払う。
多くの借金を抱え、社員の不満を多く感じていた時代だった。
会社も傾き、まったく余裕が無い状況。
⑤働き方改革
急激な方向転換を余儀なくされたが、従来の働き方だと改善は出来ない事も分かっていた。
労働法は今後一番の倒産リスクであり、法令順守に向かわない企業はいずれ淘汰されていく焦燥と不安と恐怖を常に抱えていた。
⑥物価上昇や最低賃金の上昇
ここ数年の経費の上昇は激しく、社員給料も少しでも上げていかないとならない。利益は目減りしていく。
⑦技工に係る保険点数の推移
保険点数もあがらず、競争も激しかった事から。料金を適正化する事が難しく、原価を無視した30年前の料金形態で仕事を行っていた。
物価の上昇は上がり続けており、それをサービス残業で吸収するしか方法が無かった。
残業は深夜まで行われる事が常習化していた。
これが、歯科技工士の長時間労働のメカニズムだと思っている。
<社長になった経緯>
社長になりたかった訳でもなく、別の候補がいた中で労基の指導を頂く。
会社方針が労働問題の改善となり、親族である私が責任を担う形で代表取締役に就任。
労基指導から1年、過去の歯科技工の延長上で答えを出そうとして、もちろん全く改善せず、答えが見つからない中、当時の社長に覚悟が決まるまでの時間を半年頂き、方針を必至に考える日々を過ごす。
出した答えが
「徐々に駄目になる事は目に見えている。5年、10年時間稼ぎは出来るかもしれないけれども、真綿で首を絞められるようにゆっくりと死を迎えるくらいなら、やれることをやって前向きに倒れた方が多分いい」
以上の非常に長い背景を当日は時間の関係上話せません。
この背景や当社の経験は、別に弊社だけが特別だとは思いません。
歯科技工業界で昔から従事している皆様にも大小はありと思いますが当てはまるかと思います。
その経験をしてきた皆様に伝えたい事が沢山あります。
今回は保険の有床義歯を中心に話します。
<どこかで有床義歯のデジタルを諦めている方に聞いていただきたい>
有床義歯のデジタル化は歯冠修復や矯正の分野からすると非常に遅れています。
工程も多くデジタル化が出来ない分野もまだ多く、効率化に疑問を持っている方も多いと思います。その上、設備投資も安くは無く、個人、小規模事業者が多くを占める業界において、投資に躊躇されている方もおられる方も多いでしょう。
アナログ技工を中心に行っていた技工所が、デジタルに足を踏み入れる難しさも抱えているかと思います。
しかしながら、日本は2025年問題を抱えており、歯科技工士不足の加速に反し義歯の需要は大きくなって来ると予想されます。
特に保険の有床義歯を作る歯科技工士不足が一番起こる可能性が高いと感じています。
私たち有床歯科技工士が踏ん張らないと、保険有床義歯空白地帯が生まれてしまう可能性もあります。
歯科技工士の職務として、そのような事態は避けたいです。
<弊社の有床義歯のデジタル化はほんの近年の出来事。だから大丈夫>
弊社の有床のデジタル化は2020年から始まり、本格実用化も2021年と最近の事です。
目線は皆さまと同じ所にあり、同じ不安を持ち、同じ葛藤を抱き、同じ所で苦しんで、同じところで躓いて少しづつ進んでいる、何も特別では無い歯科技工所で歯科技工士です。
本来は皆さまの前で話すような技工所ではないと自覚していますが、今回の機会により、弊社の取組を例に挙げ一人でも多くの保険の有床義歯に携わる方々へのデジタル化へ背中を押す一助になればと考え講演させて頂きます。
当日はフジデンタルラボ代表の藤井と歯科技工士の畠中、新人歯科技工士の新見(2022年4月入社)が登壇する予定です。
高名な先生や技工士の方しか中々出れない中で、弊社のような無名の所が出る意味を伝えるため、九州デンタルショーに参加する歯科技工関係者の皆様にはぜひお集まりいただき、ご参加いただけますようお願い申し上げます。
登壇内容
部分床義歯のデジタル化により達成した「経営」「ワークフロー」「人材育成」の改善について、経営者・歯科技工士それぞれの視点から嘘のないリアルをお話いたします。
また、新商品であるお手頃価格且つサブスク型デザインソフトHypsoCADの説明もさせて頂きます。
セミナーに参加いただくことで、デジタル化の導入についての具体的なアドバイスや改善事例を知っていただけるような内容をお届けする予定です。
講演後はクルツアーブースにいますので、直接お話出来たらと思います、
当日皆様と会える事を楽しみにしています。
義歯も色々デジタルが可能になってきました。色々な意見交換もしていきたいです↓↓↓↓↓
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