「めんどくさい」攻略法
「めんどくさい」にはいくつか種類がある。
①手順が曖昧でめんどくさい
しばらく手をつけていないタスク、たまにやるタスクはどうしてこんなにめんどうなのか。
それは手順の記憶が曖昧だからだ。
歯磨きのように毎日やる動きは、手順の記憶がしっかりしている。そういうタスクはめんどくさいと感じる前に身体が自然と動く。
しかしたまにしかやらないタスクは記憶に残りにくい。毎回「手順を思い出す」ところから始めなくてはいけない。これは脳に負荷がかかる。このストレスこそが「めんどくさい」の正体だ。
こういうときは「あれこれ考え始める前にとにかく手を動かす」とおぼえておこう。記憶は動いていたほうが思い出しやすい。久しぶりに行く場所への道順の記憶が曖昧でも、目的地に近づくにつれて辿るべき道をどんどん思い出すのと同じだ。わざわざ脳に負担をかけて手順を思い起こしてから動きだすよりよっぽど楽だ。
動いているとこれからやるべきことが次々と頭に思い浮かぶ。作業への抵抗感はどんどん薄れていき、むしろ途中でやめるほうが難しくなってくる。これが作業興奮の正体だ。
②最初に何をすべきかわからないくらい複雑
しかし「あれこれ考え始める前にとにかく手を動かそう」とは思ってみたものの、最初に何をすべきかが全然イメージできないタスクもある。
そういったタスクに立ち向かうときは「とにかくペンを手に取る」と覚えておいてほしい。
「めんどくさい」に負けそうなときに「頭だけグルグル動かす」のは悪手だ。だから書く。
思考は書かないと同じところを何度もループする。脳が道具を何も使わず保持できる記憶量は少ない。頭の中だけで考えるのは、書いていくそばから消えていく文章を書いているようなものだ。だから紙とペンを使う。もちろんパソコンやスマホでもいい。書くと思考は前に進んでいく。何をすればいいかがわかってくる。
そして「いちばん最初に何をすればいいのか」がわかったら「あれこれ考え始める前にとにかく手を動かす」のルートに入っていけばいい。
③強いストレスがかかるからやりたくない
しかし、とにかくペンを手に取り、初手が明確になっても、それでもやりたくないタスクもある。いやそもそも、考えることすら億劫なこともあるだろう。
たとえば「歯医者に行く」ためにまず必要なのは「予約の電話をする」だとわかっているのに、いつまでも実行できない。歯医者に行きたくないからだ。電話で人と話すのがいやだからだ。予約が希望日に取れなかったら考え直すのがめんどうだからだ。
ストレスの苦味を知っているタスクには、どうしたって拒否反応が起こる。筋トレなど肉体疲労を伴うものや、歯医者など痛みや恐怖の記憶が残るタスクがそれである。
こういう作業には
初手に意識を向ける
迷ったまま動く
自分の動きを観察する
これらのあわせ技が効く。
初手に意識を向ける
これからやろうとしているタスクの全体像をうっかり思い浮かべてしまうと、身体に「こんなにしんどいことをたくさんやらなきゃいけないの……」というストレスがかかる。
まずは最初のタスク、たとえば電話をするならかけるべき電話番号を調べるといった最初の動作だけを思い浮かべるように努める。
もちろん最初の具体的な行動をイメージするのにもストレスはかかる。でも全体像をイメージしたときのストレスには行き場がないのに対して、具体的な動きを想像したときのストレスはちゃんと行動にチャージされる。ぼーっとリラックスして待っていれば、「よしやるか」とスイッチが入る瞬間か必ず来る。
迷ったまま動く
この手のタスクは「やろうかな、どうしようかな」という迷いを断ち切り、「よしやるぞ!」という気分に切り替えようとするとそれだけでかなりのMP(メンタルパワー)を消費してしまう。そこで気分を切り替えるのは後回しにして、まずはとにかく迷ったまま身体を動かす戦略をとる。
しかし迷っているときは思考がさまよう。そんななかで身体を動かすために、意識を自分の動きに固定することで迷いは静まっていく。
自分の動きを観察する
服を脱ぐ。シャワーを浴びる。髪を乾かす、服をきる…… といった動作一つ一つを観察するような感じで終わらせていく。
このとき、自分は自動運転中のロボットに乗っているような感覚でいるとラクに作業が進む。
歯医者に行くことを考えず、よし行くぞ、と決断もせず、ただ出かける準備のひとつひとつをこなしていく。するといつのまにかでかける準備がおわっていて、あとは玄関をでるだけだ。ここまでくると、逆に出かけないほうが難しい。
それでもやっぱり行きたくないときもある。それなら行かなければいい。あるいは別のところに行けばいい。
「やらなくていい」という選択肢を持っておく
「ジムに行くかどうかまだ迷ってる。でもとりあえず準備だけしよう。」
準備が終わってもまだ行きたくないなら、今日は散歩だけして帰ってくればい。
「謝罪のメールを送るのが怖い。でも書くだけ書いてみよう。」
送信ボタンを押せなくても、書くことで要点が整理できる。
「ピアスの穴を空けるのが怖い。でもピアサーだけでも買ってみよう。」
どうしても無理なら友達と遊んでいるときに開けよう。ノリに助けてもらおう。
「病院に行きたくない。でも行けそうな日だけカレンダーで確認してみよう。」
別に行かなくてもいい。でも予定だけは空けておこう。
逃げ道を断つからこそ、意思力が強くはたらくこともあるだろう。でもその原動力は恐怖だ。恐怖はたしかに背中を押してくれるが、普段からうっすらとした不安という維持コストを支払い続けなければならない。
「どっちでもいい」選択肢から、自由に選ぶ。
我々は恐怖に頼らなくたって選べる。
自由な選択を増やしていこう。
読みたい本がたくさんあります。