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陰影の底へ

影や陰に惹かれた写真をまとめてみた。初めは全体的に明るい写真を見ていたけど、最近は陰影が大きく占める風景にも目が留まって、浸るようになった。

影の浅瀬から

時に青みを帯びた、影の水たまり。淡く浅い影には、水彩絵の具に近い透明感がある。


細くて青い幾何学模様と、裾野に広がる影。
子供の声が飛び交うにぎやかさから隔たったこの空間は、確かに美術館。
ジャングルジムと影は放射状になっていて、何かの結晶が地面へ延びていくのを見ている気分。


線路沿いのでこぼこで、真っすぐのはずの電柱の影がうねる。強い日差しで白く乾いている石も、山や茂みから染み出した影が届いている所だけ、川底の色になっている。


白い壁がキャンバスになっている。影の濃さと輪郭のぼかし方だけで感じる、木々の遠近感。
長谷川等伯の水墨画「松林図屏風」を思い出した。


透過した色つきの光と、影が交差する。タイルの水平と垂直に、斜めの影が重なり、ガラスに反射した光がさらにその上を走る。うっすらと樹木っぽい影も。ビル前の景色が、足元に落とし込まれた感じ。

広がり深まる陰影

淡く透けた影もいいけど、
濃い影や三次元に広がっていく陰もいいなと、陰影にはまっていく。


もはやトリックアート。階段の陰った天井部分と、壁の影がきれいにつながっている。階段と影が対になって完成するように、もしかして影の形までデザインされているのだろうか。


一枚目。
光がほろほろ舞い散っている。夢の中で揺蕩う感覚になる仄暗さ。
平面に映っている光が、なぜか少し浮き上がって見える。柔らかく包むような暗がりと、建物の趣が、なんだか懐かしい。


石のタイルに刻まれた、レースの装飾みたいな模様。くっきりとした影の先に、水色が所々重なっているのはなぜだろう。木でできた影なんだろうけど、頭上の景色が気になる輪郭。


斜めに射す陽が、壁の細かい凹凸や窓ガラスの不透明な質感をつぶさずに見せてくれている。
陰の中から浮かび上がる塀も舞台を見ているようで、何気ない景色だけど特別な感じ。


影が生えている。
正確には影ではなく草木のシルエットなんだけど。アップになっているせいか、夜が植物に擬態して空を捕まえようとしているみたいに見える。

陰影の底へ

深くはまっていくと、闇とも呼べる陰影の写真にも行き当たる。暗い中で微かな光の差異でつくられる空気感とか、全く見えない部分の存在感があるような。


道を逸れるほど、伸びた影が斜めに流れていく。
右半分は端正で静かだけど、左へ行くと動きが大きくなって、影の形もくずれていくのが綺麗。


道端のモノの錆やへこみ、汚れ、道路の歪み具合。
日常の生々しさを地味に感じる、空まで薄墨に浸ったような景色が、どこまでか分からないけど続く。なんとなく、「世にも奇妙な物語」を観た後の気分。


部屋の一部が光で切り取られて、リズムよく並ぶ。闇で天井の高さも分からないから、室内なのにトンネルっぽい。落ちている陽だまりを拾うかたちで、奥まで導かれていく。

終わりに

キャンバスによって、思わぬ形に曲がる人工物。
濃淡と形が不規則で、静止しても揺らぎを感じる植物。どちらの影も素敵だ。
陰や闇で、深みが加わったドラマチックな空間。これも素敵だ。

今回写真を整理して、実際に出掛けた時もっと陰影鑑賞しようと思った。
改めて感じたのは、陰影鑑賞には大きく角度がついた太陽光がいいこと。
陰が広がって、影は伸びて別の影とくっついて面白い形になる。抑揚のある、多様な風景を見つけやすい時間帯に暗い所をよく見ようと思った。

陰影採集をして写真がたまってきたので、マガジンを公開しました。もしよければご覧ください。

クリエイターさんの名前が一部表示されていないかもしれませんが、載せている写真は全部noteのリンクです。

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