ローコンテクストとハイコンテクストのコミュニケーションが生む社会への影響: その②「コンテクストから見た幼児教育のあり方」

記者:Kさん

※こちらの記事は、シリーズ「ローコンテクストとハイコンテクストのコミュニケーションが生む社会への影響」についての漠然とした考察のための一つの視点として、「①幼児教育のあり方」の仮説を探るために、自身の経験も踏まえてまとめた記事です。

日本のコミュニケーションは「空気を読む」「状況を察する」ことが求めらるハイコンテクスト文化です。子供の頃からしつけを受け、意識をしなくても察することができます。しかし、多様化が進むにつれ、教育においては「全て言葉で伝える」ローコンテクスト文化が求められています。
子を持つ母として、ローコンテクストが必要とされる背景と育児のヒントを得るため、「幼児教育・遊び」に着目して考えてみました。

〈 幼児教育における海外文化の違い 
幼児教育とは
文部科学省の初等中等教育分科会(第28回)配付資料では、以下の通り定義されています。

この幼児期の発達の特性に照らした教育とは,受験などを念頭に置き,専ら知識のみを獲得することを先取りするような,いわゆる早期教育とは本質的に異なる。
幼児教育は,目先の結果のみを期待しているのではなく,生涯にわたる学習の基礎を作ること,「後伸びする力」を培うことを重視している。

勉強をすることではなく、人との関わりや遊びを通して人間力を学ぶことが大切とされています。

欧米と日本との比較
ローコンテクスト文化の欧米とハイコンテクスト文化の日本にどのような違いがあるのか?考察していきたいと思います。

教育について
日本:「協調性重視」「答えは一つ」みんなが平等に学べる。
欧米:「個性重視」「答えは一つではない」自分の意見を述べることが大切。
算数の回答
日本「3+5は何?」答えは1つ「8」
欧米「足して8になるものは何?」何通りもあるため、それぞれ異なる答えがあっていいとされる。
子育てについて
日本:「客観性重視」他の人に迷惑をかけないよう、しつけを受ける。
欧米:「主体性重視」個人を尊重し、自立心が育つことを大切にする。
子供が公共の場で駄々をこねて泣いてしまった時、親の注意の仕方
日本:その場で「(迷惑がかかるから)静かにしなさい」
欧米:人がいない場所に連れて行き「あなたはどうしたいの?」

教育にローコンテクストが求められる理由としては、グローバルや多様性の視点で必要なコミュニケーションだからと言えるでしょう。
とはいえ、ハイコンテクストからローコンテクストへの急激な方向転換は、日本の古き良き「解釈」や「感性」を奪うこととなるため、バランスよく取り入れていくことが良いのではないかと考えました。

ハイコンテクストを大切にしつつ、ローコンテクストを取り入れるには? 〉
興味あるものについて対話する機会を増やす
幼児教育にローコンテクストなコミュニケーションを取り入れるには、FICCが毎月行なっているクロスシンクワークショップのように、好きなことを共有したり、感じたことを対話するなど、人に話す経験を重ねることが大切なのではないかと考えています。

例えば、テーマは子供たちが夢中になるキャラクターやアニメ。日本のアニメはハイコンテクスト文化から生み出された優れもの。鬼滅の刃で登場するキャラクターそれぞれに背景があるように、ストーリーから学ぶことがたくさんあります。キャラクターそのものに固着したり、ただ見るだけではなく、ストーリーの文脈から自分なりの解釈を広げていけるか?子供一人では難しいかもしれませんが、一緒に話してみることが第一歩だと考えています。

〈 おわりに 〉
幼児教育や子育てにおいて欧米と日本で大きく違います。それぞれに文化や社会的な背景があり、どちらが正解というものではありません。
これからは、ハイコンテクストとローコンテクストを状況に応じて使い分けるハイブリッドなコミュニケーションが必要となり、幼少期から身につけていく必要があります。
そのためには「答えは一つではない」ことを頭の片隅に置きつつ対話を重ねることで、自分の考えをしっかりと発言でき、豊かなコミュニケーションがとれるようになってほしいと願っています。

出典:文部科学省「第1章 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の方向性」
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1395402.htm