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知のフォーラム「デジタル×サステナブル社会のデザイン」プログラム社会実装プロジェクト「SDGsとつながるDX化が抱える課題~酒造業編」

2023年12月16 日(土)、国立オリンピック記念青少年総合センター(東京)において開催された第13回CSR構想インターゼミナール(主催: CSR構想インターゼミナール実行委員会(日本経営倫理学会後援)に参加しました。本学からは、経済学部の高浦康有先生(知のフォーラム「デジタル×サステナブル社会のデザイン」プログラム担当教員)、経済学部高浦ゼミ4年生8名が参加しました。「SDGs 達成年まであと 7 年―169 のターゲットに取り組む CSR」のもと、9つの大学ゼミチームが参加し、私たちは出羽桜酒造(山形県天童市)を始めとする東北製造業におけるものづくり・文化貢献活動の拠点視察とDx化に向けた提言を行いました。残念ながら入賞にはなりませんでしたが、地域企業のサステナブル経営について学生たちは思考を深めることができました。

発表スライド

参加学生のコメント

出羽桜酒造に対しての提言としては、出来るところからのDX化である。出羽桜酒造仲野社長の、味や香りといった人間の五感を使う部分はデータ化することは難しいというお話はその通りであると思う。しかし、そもそもの働き手が不足し、DXを事業に取り込むことが不可欠である近未来では、現行の手造りに頼った作り方では成立しないのではないかと考える。そこで、五感といった人間の強みが最大限発揮出来る場面では人間が計測を行い、濃度などの成分データ、つまり機械が計測しても問題ない部分はデータ化・機械化を行うことを提言する。これにより、他酒造メーカーの成功例のように、省エネや省人化の達成が見込め、サステナビリティに繋がるだろう。そして、仲野社長は酒造りの手法を他の酒造メーカーにも積極的に公開し、酒造業界全体でのイノベーションを目指していた。このDX化においても、酒造業界全体で情報共有を行い、酒造業界全体が生き残りを賭けて転換していく必要があるのではないか。

まず、出羽桜酒造の特徴として「手作りにこだわっている」ということがあげられる。そのため、一見DXにつながる取り組みがあまり想像できないように思われるが、数値化できるようなもの(例えば温度調整や生産量など)に関しては、DXの推進をすすめるべきではないか。また、出羽桜酒造の方針として特許をとることなく、全体最適を求める特徴がある。また近年の日本酒の国内出荷量は、他のアルコール飲料との競合などによって減少傾向にある。堅調に推移していた特定名称種(吟醸酒、純米酒など)も減少傾向にある。一方で輸出量は増加傾向にある。これらの出羽桜酒造の方針や近年の状況を踏まえ、出羽桜酒造はより製造、販売における抜本的な変革が求められるのではないか。生産工程における効率性の向上や海外輸出において求められる信用度の向上といったところでDX化が貢献できると考える。近年ではNTTドコモと共同で海外輸出向けの日本酒のサブスクリプションを開始した。このような「買いやすさ」に焦点を当てたときは、宣伝力も求められることからDXの要素が必須なのではないか。

出羽桜酒造について、デジタル人材の内製化が必要だと考えた。理由としては人手不足時代の到来に合わせ、それへの対応が遠くない未来に求められるからだ。2050年には生産年齢人口が約3500万人と現在(2023年時点)の7400万人から約47%まで減少する。一方で今回出羽桜酒造株式会社を訪問し、酒造りにおける手作りを大切にしてることを伺った。DXと手作りの両立は大変難しいと考えたが、それは目的が近い将来を見据えているから難しいのだと気付いた。現状人の手で賄うことができ、ここ数年レベルでは支障がないのは外部の私から見ても明白だ。しかし、20年ほどで労働者の数は半分になり、単純計算で全ての現場で人手は半分になるだろう。故に規模が小さく、伝統産業である酒造こそ先を見据えて現場のデータを再利用できる形で残すべきである。数値に表れない製造工程での味や匂いのデータも1年、2年だけでなく数十年という厚みを持たせれば精度も高まるはずである。且つ、その厚みを持たせたデータを扱える人材を社内に内製化するべきだ。なぜなら外部のIT業界企業の社員に頼っていては、その担当社員が変わる度に品質が変化する可能性がでてくるからである。伝統産業こそ先により精度の高いデータを残すべく、いち早くデータを内製化できる社員を保持していく必要がある。

親戚がホテルでレセプションをしています。彼女は最近、「ホテル業界でそのまま居ていいのか迷っている」とのことでした。理由の1つが、受付業務は機械に取って代わられていくということ。
酒造にもこの図式が一定、当てはまると感じています。つまり、受付による人間の温かみ、ホスピタリティの提供には‪バラつきがあります。丁寧な対応に感動することもあるし、気に食わない接客態度を目にすることもあるかもしれません。ところが機械はより均一化した接客を提供し、人件費の削減や組織の効率化という価値を提供します。
つまり酒造においても、DX推進は平均点をもれなく叩きだし、組織の効率化を同時に推進するということです。
一方でホテルには高い接客価値を提供するハイクラスのホテルがあります。銘酒と呼ばれるお酒があるように、日本酒をブランド化して手作りとしての価値を提供する高級路線が残る一方、DXとのコラボレーションによって継続的に一定クオリティのお酒を生み出す路線も出て来ると思います。2極化するということです。
DXを内部にとりこむためには時間が必要です。早期にDXを内部にとりこみ、既存の味わいとの親和性を高めることは今後消費者に継続的な価値を加えるために必要です。
様々な業界で起こっている「2極化」トレンドを踏まえ、長期的な視点を取り込むことが重要と感じました。‬‬‬

出羽桜酒造の訪問を通して、私は大きく2つのことを学んだ。1つ目は、「手作り」に拘っていること。2つ目は業界として「人手不足」であるということだ。この2つの事実を考慮すると、一律のDX化は望ましくないと考える。まず「手作り」に拘る理由として、製造工程の数値化による製造の効率化が難しいという点が挙げられる。日本酒は酒業界の中でも特に味や香りに拘りがあり、そこが商品差別化の肝となる。味や香りなど数値化できない部分を無理に数値化してしまうと、各日本酒の良さが損なわれてしまう。さらに、味や香りの数値化が可能となると、資本力のある大企業がレシピを入手し、大量生産を可能にしてしまうため、地域に根付く生産の衰退にも繋がる可能性がある。一方人手不足解消に向け、マーケティング分野でのDX化推進は効果的であると考える。日本酒消費量のデータなどを活用し、供給の最適化を図ると同時に自社の日本酒の知名度の効率的普及を図れる。このように生産は人の手で、マーケティングをAIにというように、一律のDX化ではなく人とAIの住み分けが日本酒業界には最適であると私は考える。

デジタル人材の内製化をするために、まずは外部からDX化経験者を採用することが必要であると考える。外部の経験者が持つ知識や経験を組織内に浸透させ、内部の人材が新たな技術や方法論を習得し、成長することを目標にするということだ。なぜなら、知識や経験のない地方の中小企業が一からDX化を目指すことは現実的にハードルが高いため、まずは経験者に頼る方がより現実的に実戦可能であると考えるからだ。また、酒造業はデータよりも人間の感覚を大事にする業界であり、そこがDX化の課題だった。ならば、絶対にDX化できない作業を先に決め、それ以外を全てDX化させることを目指すことが良いと思う。人材不足に備えるためには、地方の中小企業では特にデジタルに頼ることは必要不可欠である。そのため、人間にこだわる部分はこだわり、その点をアピールポイントとしても使い、それ以外の作業をデジタル面で補強することで今後も生き続ける企業を目指すことができると思う。

今回の私たちの発表では、これまで出羽桜酒造が人の感覚や伝統を大切にし、DXをあまり積極的に取り入れてこなかったという背景から、他の酒造のDX導入事例と比較しつつ、一律なDXを推進していくのではなく、個々の企業の事情を適切に分析し、それに応じたDX導入を進めるべきだと提言した。改めてこれについて考えてみると、やはり時代の潮流としてDX化が強く推進され、それに適応できない・しない企業は、適応している企業に対して遅れを取ってしまうという事実は認めざるを得ないと考えるので、出羽桜酒造もこれまでよりDX化に対するアンテナは高く張るべきである。しかし、酒造という業界の特性上、これまでの伝統やその中で受け継いできた人による精度の高い技術が重宝されるということも十分に理解に及ぶ。とりわけ出羽桜酒造の現地見学においては、社長が自ら「人の感覚を重要視する企業でありたい」と仰っていたことから、その傾向は強いのだと感じた。このことより、時代や世論の動きに敏感であり、他企業との比較も怠らない上で、大切にしてきた人の感覚を最大限発揮できる、「適切で適度なDX化」を推進すべきである。

組織の最適化、省人化、後継者育成を目的としたDX施策を進め、デジタル人材の内製化を進めるべきである。企業のサステナブルな経済活動を達成する上で着目するべき論点は3つある。一つ目は資源の効率的な利用。二つ目は人材の適切な配置。三つ目は後継者の育成である。一つ目の資源の効率的な利用を達成するため、企業はITシステムを導入し資源の利用用途、量を可視化し、無駄のない製造工程を研鑽していくことが可能である。資源の無駄遣いを減らすことはサステナブルな世界の実現はもちろん、企業の利益向上にもダイレクトにつながる。二つ目の人材の適切な配置を達成するため、企業はITシステムを導入するべきである。企業の経営資源には人材ももちろん含まれるため、適切な人材配置がガバナンスの向上と、賃金抑制を引き起こし、利益向上につながる。三つ目の後継者育成も同様である。企業が経営を永続的に行うためには、作業ノウハウの引き継ぎ、人材の若返りが欠かせない。ただ社会問題として少子化の影響で若い世代は減少し日本酒のような若者離れが進む業界は新人を獲得することは困難である。デジタルの力を活用しながら限りある人材に技術を効果的に後継していくことが現状の日本酒業界に求められている。


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