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家があなたの心の型をつくっている

アースバッグハウスって聞いたことありますか?

 アースバッグハウスはというと、地球上のどこにでもある「土」を使い、自由な曲線で表現出来、耐久性、自然災害に強い建造物として世界中で注目を集めている建造物。
 建造物としての魅力は確かに、健材、造形の自由度の高さ、耐久性だろう。

 私は、そんな魅力的な家を作る為に大事にしていることがある。

 アースバッグハウスを作る為にアースバッグハウスを創っているわけではなく、 創る人、住む人、活用する人が、今の暮らしを観察し、これからの暮らしを創造する時間を生み 出す事で、空間から場へ変化していく事を目指している。 空間から場に変化する時、必ずといっていいほどヒトやモノ、環境などへの愛着というものが重なっていく。

 例えば、今使っている机の高さや椅子の高さや大きさが、あなたのどんな日常や気分を作ってい るのかを考えてみる事も初体験の人は多いかもしれない。
今使っている机の高さを測る事から始まり、どのくらいの高さや広さ、素材や質感、季節、日当た り、温度、湿度といったどういった要素を自らが求めているのか。机1つとっても、今の自分のライ フスタイルや身の周りのヒト/モノ/コトを観察し創造することから始めない限り、ライフデザインなど 到底手の届かない夢物語で終わってしまうのではないか。

 机1つから派生する要素だけでも100年くらいは費やしてしまいそうな壮大なテーマになってしま う。いや、終わらないだろう。。
そうは言っても、DIYであろうがなんであろうが家を自ら建てる時に、机に100年もかけれないな ので、どこかで区切りをつけ、次の工程に進むのだが、、、

 何が言いたいかというと、まずは1番身近で小さなものを観察する事が全ての始まりといえるかもれしれない。

 そこでアースバッグの目的はというと アースバッグを創る事だけではなく、自らの心の型に気づき、洞察力を高め、創造するといった、文化の始まりのような時間こそが目的だとも思うのです。
 何気なく普段使っている椅子や机が、心の型や気分を作り、その型を誰かに共有していくとすれば、どれだけ漠然とした生活習慣や文化が無意識に次世代に引き継がれていくことになるんだろうか。

家は社会 外はひとり


 在日朝鮮人として生まれた僕は、日本国内において「在日」と呼ばれる少数民族として育った。人種 差別、民族教育・政治や国など、様々なアイデンティティクライシスに囲まれた特殊環境下で育った。

子供の頃に見ていた景色はどうだったんだろうと考えてみると、家族や親戚、血縁関係はないが家族み たいな人達ばかりに囲まれて育ってきた。 家にしか社会がなかったかのように、外に出ればなんとくポツンと浮かぶ孤島のような感覚で過ごしていた。 家にはコミュニティーがあり社会があり、そこに何らかの心の支えがあったように思える。

 コミュティーってなんなんだ、社会ってなんだんだみたいな事を子供ながらに考えながら、誰かの家にい くと、ここで話してるんだとか、こんなとこでご飯食べてるんだとか、これじゃみんなで食べれないんじゃな いかとか、兄弟シェア部屋かーとか、みんな家で何を感じてるんだろうかと思っていた。

そんな中、文化や環境が人にどんな影響を与えているのかに興味を持ち始め、多様なライフスタイルや 人々の気分を知りたくなり、日本を飛び出し、海外でも暮らし、自らの変化や人々の気分を味わいなが ら、自分はどんな環境でどんな暮らしをしたいのかと考えるようになった。 自らの暮らし方に、答えなんて見つからないと思いつつも、答えが出ないもやもやした日々を過ごしてい た。 そんな中、あらゆる人の暮らし方や、気分と出会っていく中で、強く感じた事がある。

それは、家の動線や環境が気分と文化にかなり影響しているかもしれないと思ったのが初めて家作りに 興味を持ったきっかけだった。

 家が1つの文化の始まりとするならば、どんどん量産されているマンションや家のように、みんな同じ動線の家で暮らすということはどうゆう事なのか。

 2021年の今は、外が社会で家でひとりのような感覚なのだろうか。

 子供ながらに、家の外に出ると漠然と社会や世界からぽつんと存在している感覚は何がどう作用してい たのかを考えていて、 在日コミュティーの育まれ方にどんな作用があったのか 国や社会といったものとの関係性にどんな作用があるのか そんな事を考えると同時に、生きることってなんなんだと漠然とした疑問が日に日に強くなり、家、コミュ ニティ、文化といういうものをもっと知りたいと思っていた時だった。

 当時オーストラリアを旅していた私は、たまたまearthbag house workshopと書いてある看板を見つけ、アースバッグハウス を習うため、1人右も左も分からず集合場所という事だけを頼りに、山の中の中までWSを受けに行った。

 現場には何とか辿り着いたが、何か始まっている様子もなく、私と同じように看板をみて集まってきてた のであろう数名がその周辺をうろついていた。 講師がきたら始まるのだろうと思っていたが、待っても待っても講師は来ず。。。
集合時間から数時間が過ぎ、とうとうみんな諦めか、、みたいな不思議なアインコンタクトを交わしなが ら、1人、1人と山を降っていった。 その日、結局講師は来ず、WSももちろん中止。
 そのおかげというのか、最後まで僅かな希望を諦めず現場に残った、アースバッグに興味はあるが、ws を受けれなかった人達と共に、1日の物語をつまみにパブにビールを飲みにいった事を今でも鮮明に覚 えている。 その日の出来事をおかずにお酒飲めるくらいなら上等だなと思いながら。 そうして、workshopこそなかったものの、オーストラリアでアースバッグハウスを初めて知ることになった。

オーストラリアではアースバッグハウスを習うことはできなかったが、ちょうどその時期、手仕事を学びに 日本に戻ってもいいなと思っていた頃だったので、アースバッグハウスを調べたりもしていたが、 日本にはアースバッグはなさそうだと思っていた矢先、小堺康司さんがサイハテエコビレッジでアースバッグをやっている事を知り、よし、日本に戻ったらひとまず行ってみようと思い、尋ねたのが2012年。

 その時、私が初めて実際のアースバッグを目で触れた瞬間だった。

 その後、小堺康司(ノンネム)さんに建築を学びながら、九州を拠点に、あらゆる場所でアースバッグハ ウスを作り、実験的なコミュニティーに住み、文化を創造するという日々を過ごした。

 そんな日々の中、アースバッグやコミュニティーにおいて感じていた事は、 内(家)は、健康的なコミュニティーと社会感覚を持つ家を創造する人間文化 外は、庭や公園のような、ひとりだけどひとつである共感覚を持てる文化というものが 次世代に繋ぐ、イノベーションのかけらになるのではないかという可能性であった。

アースバッグハウスに限らず、あらゆることを多角的に切り取り見つめてみると、想像もつかないほどの 文化の重なり合いで今が保たれているんだと感じている。 保つ事と手放す事そして、保ちもせず手放す事もないような事との組み合わせで文化は重なり合っていく。そういった重なりの1ページにアースバッグがあるとすれば、この先の暮らし方や生き方にどういった 変化があるのだろうかと思いながら。

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心の型は文化と繋がっている
あなたの心が全て表現される

もう1つアースバッグハウス(家)を考える時に大事にしている事。
それは、今の自分の理想の生活認識は常あり、そして常に変化していく中で、いかに可能性(余 白)を残したデザインや設計にできるのかということ。

 アースバッグビルダーの中には、アースバッグを社会貢献や社会活動として捉えている人もいる んじゃないかなと思います。 私もその1人です。

 自分にとっていいものでないと社会にとっていいものなんて作れないと思っているので、その為に は1番近くを双眼鏡で眺めてみるような事も大事にしながら、日々のライフスタイルや気分がどう コミュニティーに影響を与え、社会と繋がっているのかをできる限り広く深く認識するように努力を しています。 未来の変化をイメージして作るのか、今を作るのか。過去を作るのか。 それはどんなものが出来上がるかによってどう自分の支えになっていくのかをイメージする事だとも思うのです。

 いいって何なんだろうか。

環境問題について聞かれる事もよくあります。
 アースバッグにおいて、エコ建築や自然素材といった環境問題への配慮はどうなっているのかと。 何がゴミなのかはさておき、 あなたがほんといいと思うならゴミになってもいいんじゃないかと思っています。

持続性がすべてではない。
 自然素材と呼ばれているものだけを使わないといけないということでもない。

 なぜなら、人が自らの人生に本気で向き合った最大限の今の結果として、起こり得る人と人との 関係性がいい暮らしを作りだしていくのではないかと思っているからです。
起こり得る人と人との関係性が、ゴミを出してしまう罪悪感よりもはるかに環境への意識を自然に 健康的に持たせてくれると思っています(把握できない扱いきれないほどの大量生産もいいとい う話ではないが) そういった人現象が起こり重なっていく事で自然にゴミというものは減っていくはずなんです。

 環境問題において、ゴミを減らす事や新建材を使わない(←これももちろん大事な事)というアプ ローチよりも共に生きている感覚や意識を育む事が、取り返しのつかない未来の可能性に責任を持ち、無意識に自然と共存できる状態や状況をデザインするヒントになるのではないかと思っています。



活動を通して関わる素敵な方々も対話のゲストとしてお呼びしたり、オンラインでのインタビューや関係する様々な文化活動の紹介なども記事にしていく予定です。 取材や情報発信を続けていけるよう、よろしければサポートよろしくお願いいたします。