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一夢庵風流記 ~前田慶次郎参上!~

写真は、金沢・兼六園の日本武尊像。正式名は、明治紀念之標で、
日本最初の西洋式銅像である。
http://www.pref.ishikawa.jp/siro-niwa/kenrokuen/

本日は加賀百万石の礎を築いた前田利家の義理の甥、前田慶次郎が
主人公の「一夢庵風流記」。漫画、「花の慶次 -雲のかなたに-」
の原作である。

まずはその男振り。
「傾奇者」、「ばさら」と称される、権力に媚びず、己の生き様を
貫く痛快な人物として描かれている。秀吉の前で猿踊りを演じたのは
事実、らしい。小説では、さらに動機も含め、いきさつに深みを持たせて
いる。秀吉から、「向後何方にて成とも、心儘に衝き候へ」、つまり
どこででも(傾奇の)意地を立て通してよい、と認められた、とのこと。

次に事実を巧みに織り込んだストーリー展開。
優れた時代小説に共通する点だと思うが、本作も史実とフィクション
と想像とを入り交ぜ、読者を引っ張る。朝鮮出兵に先乗りして、美姫
を連れ帰った、などはフィクションだろうが、気に入らない叔父の利家
に氷風呂をだまして振る舞ったなどは事実かも知れない。虚実の境目を
意識させない著述は作者の力量だろう。

さらに、男女問わず人たらしの主人公。
冒頭の傾奇ぶりと超人的な強さも魅力なのであるが、教養を併せ持つ
ことと、裏表のない豪快な性格が敵であるはずの忍者も従者にしてしまい、
手に負えない暴れ馬を愛馬にかえてしまう魅力なのであろう。隆慶一郎の
小説は、「吉原御免状」、「影武者徳川家康」、「捨て童子・松平忠輝」
等々、魅力的な主人公が多く、面白さの面からして「はずれがない」。

そんな隆慶一郎が時代小説を書きだしたのが1984年、還暦を過ぎてからで
ある。もっと早くから書き出していたらより多くの傑作が世に生み出されて
いたであろう。本人談によると、師匠である小林秀雄に小説を読まれる
のが怖かったから、だそうである。
https://kangaeruhito.jp/article/1305

ほとんどの著作が読後感爽快なのでお勧め・・・
お茶うがいの輪を広げてコロナを収束させたい!
https://note.com/from_free/n/n406bc5302094
https://note.com/from_free/n/n98097eb72720

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