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ノースライト ~家族の物語~

写真は、浅間山と鬼押し出し。天明3年の浅間山大噴火により
死者総計1,600名以上、流出家屋1,000戸以上の大災害が発生。
鬼押し出しはその際の大溶岩流が固まった跡である。
https://www.princehotels.co.jp/amuse/onioshidashi/

本日のお題は浅間山の麓、信濃追分に主人公の設計士が建てた邸宅
が舞台の話題作、「ノースライト」。

まずは、「建築」が大きなテーマであること。
小説としては珍しい、建築・設計が大きなテーマ。日本文化に大きな
足跡を残したブルーノ・タウトも重要なモチーフの一つとして描かれ
ている。主人公も実在する、ブルーノ・タウトゆかりの高崎の少林山
達磨寺・洗心亭や熱海の旧日向別邸を訪れ、謎解きのヒントを得る。
物語のクライマックスも主人公が務める設計事務所のコンペが舞台
となる。

次にミステリーの王道の殺人事件ではなく一家失踪が発端であること。
あまり細かく触れるとネタバレになり書けないが、主人公が渾身
を込め、起死回生のように設計した住居における一家失踪が謎の発端。
これを掘る間に過去のできごとや主人公の心の動きが展開していく。

さらに、冒頭の建築が縦糸なら、家族の繋がりが横糸。主人公だけ
ではなく、周りの登場人物も家族を中心とした人間関係の過去の傷を
負っている。特に親子の関係は世代に跨って最初の謎に絡んでくる。
また、家族の生活の場である、「家」も縦糸の建築として絶妙に
ストーリーを織り成している。

著者の横山秀夫は、主に警察を舞台にした迫真のフィクションに
定評があり、特に前作、「64」の迫力は圧巻。本書はそれに比較すると
緊迫感に欠ける面もあるが、個人のみならずミステリー界に新ジャンル
を切り開いた感があり、読後も比較的爽快感があってお勧めである。

お茶うがいの輪を広げてコロナを収束させたい!
https://note.com/from_free/n/n406bc5302094
https://note.com/from_free/n/n98097eb72720


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