人としての育成をすることで身につく22の要素が違いを作る。



前回のDinamo Zagrebアカデミーでの記事を読んでくださった方々ありがとうございます。




普段はイングランドで活動しているので毎回ああ言った記事は出せないのですが、それでも自分で何かためになったと思ったことや面白い経験などができた時に整理をするためにも、時間がある時に書いていけたらと思います。




今回はDinamo Zagrebアカデミーコーチと話していて個人的に気なったことを少し掘り下げようかなと思います。



アカデミーのコーチたちが仕切りに強調していた「選手を人として育成する」と言う部分なのですが、育成の名門と言われているアカデミーだからこそ少し驚きがありました。



効果的な育成とは何か」に関しては昔からたくさんの議論や説がありますが、それを考える際には環境要求人格などたくさんの複雑な要素を絡めてのものになっていました。



その中で心理面での選手の育成というのものが議論の中心になっていったのはSports Psychologyと言う学問があることで十分に理解できます。




ですが現状はいまだにサッカーにおいては技術やフィジカル面の方に焦点が当たる方が多く、心理面は「この選手はメンタルが〜」などのフィードバックのみ具体的なコーチングなどはなく、選手個人に成長を丸投げしているケースを散見します。




この上の現状は論文の結果でも明らかになっていることなのですが、自分の経験上でもどこの国のコーチと話をしても割と熱い話題になっている気がします。



なので、今回はタレント育成の時に関わってくる心理的要素について書いていこうと思います。




目次
・鍵は心理面なのか?
・22の心理的要素
・実際にどうやるの?
・まとめ



鍵は心理面なのか?



現在はイングランドでもそうなのですがたくさんの若手が早くからプロ契約を結んだり、海外に武者修行にいく流れができています。


日本でも高校卒業して日本のクラブチームを挟まずに海外挑戦をする選手などが増えてきているイメージがあります。




選手たちにとって一番難しいフェイズの1つがアカデミーからプロに切り替わった時期だと言うように言われています。



反対にコーチ達が選手達をアカデミーからプロにあげる時に考える要素として一番大きいと言われるものは「その選手がコンスタントに高い水準のパフォーマンスを発揮することができているか」だそうです。



たとえば自分自身の最高のパフォーマンスが100だとして、100発揮できる日もあるが20や50の時もある波がある選手と、常に80の力を発揮できる選手であれば基本的には後者をとると思います。




ではなぜ前者のような選手はコンスタントに自分の力を発揮できないのか



100を発揮できる日もあるので単純な技術だったり身体能力はその選手に備わっているはずなのに、プレーの波があるのは何故なのか?


ここで様々な心理的要素が大きな役割を果たします。



具体的な心理的な要素



Gledhill, HarwoodmとForsdyke (2017)のReview論文では22個の内的心理要素がタレント育成に関わってくると発表しています。



・自己統制能力 (self-discipline)
・セルフコントロール (self-control)
・自己制御能力 (self-regulation)
・自己認識能力 (self-awareness)
・適応的完璧主義 (adaptive perfectionism)
・自己受容 (self-acceptance)
・習熟志向性 (task/mastery orientation)
・貢献性・責任感 (commitment)
・意志の強さ (determination)
・内的モチベーション (intrinsic motivation)
・立ち直る力 (resilience)
・やり抜く力 (grit)
・非言語的知性 (non-verbal intelligence)
・失敗への恐怖感 (fear of failure)
・精神的健康 (psychological wellbeing)
・省察能力 (reflective skills)
・楽しむこと (enjoyment)
・認知能力 (perceived competence)
・予測能力 (anticipatory skills)
・判断力 (decision making skills)
・満足遅延耐性 (delaying gratification)
・ストレスへの対処法 (coping strategies)


です。



多い。多すぎる。




と思うのですが、これを1つずつよく見ていくと人として備わっているべきものがほとんどで、サッカーだけに関わっているという心理的要素はあまりありません。(というかサッカーだけのものはありません)



それにも関わらず、この22個の心理的要素がのちにサッカー選手達の違いになって出てきます。



これを考えるとDinamo Zagrebアカデミーで強調していた「選手を人として育てる」という育成理論は必然であった気がします。




そして大事なのは人として育てた選手は他の分野でも必ず活躍できるということです。




もし選手がサッカーで活躍できなくても、その選手はもしかしたらデザイナーの資質があるかもしれない。その時にこの22個の心理的要素は確実にその選手にとって役に立ちます。





どうやって成長を助けるのか。



と言っても、プロサッカー選手になりたいのにひたすら「人としてなんたらかんたら〜」と説教みたいなことをしても、選手達がそれの重要性を理解するのはもっと先になると思います。ウザがられて選手達の中であだ名が金八先生になるかもしれません。



そしてもちろんプロサッカー選手になるためにはサッカーを練習しないと始まりません。



今回は1つだけですがサッカーをしながらこの22個の成長を助ける方法を書いていこうと思います。




論文で発表されてるのは、幼少期に試合形式でのサッカー試合を切り取った練習をしていた時間が長い選手の方がプロになっているという結界が出ています。そして6歳から12歳の間でその時間が長いほどその後に強い影響をもたらすとしています。



この考えは最近日本でもよく見るようになりました。



当たり前ですがこのような練習は認知力判断能力予測能力などが養われます。


そして何より選手たちはサッカーの試合をするのが一番楽しいと思います。楽しみながら、適切なレベルのゴールを与えてあげることでできないことができるようになる喜びや悔しさなどを経験し内的モチベーションが高まっていきます。



ここで大切なことは勝ち負けという目に見えるゴールだけを設定するのではなく、ボールを奪われたら必ず取り返しに行くなどの小さいゴールを設定し習熟志向性を高めることです。




まとめ



他にも色々方法はあるのですが、一番大切なのは選手との関わり方だと思っています。



この前の記事でも言ったのですが選手たちはコーチを見ています



コーチ自身が選手たちに言ったことをできていないと選手たちとの信頼関係は無くなります。



コーチがしっかりと選手のロールモデルになることが大切になってくるのかと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?