海砂糖 #シロクマ文芸部
海砂糖の味は幻になった。
取材で海辺の町を訪れた僕は、さびれた和菓子屋を見つけ、色褪せたのれんをくぐった。老婆が一人菓子ケースの後ろに座り、ぼんやり店番をしていた。
「この辺りに昼ごはん食べられるお店ってないでしょうか?」
「ないねぇ~」
老婆は嗄れ声で答えた。ケースの中に売れ残りなのか、薄桃色の饅頭が二つだけ並んでいた。しかたがない、これを昼食代わりにしよう。
「そうですか・・・それでは、このお饅頭二つください。ここで食べたいんですが」
「ああ、いいよ、そこの椅子使ってい