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完熟赤山椒のリニューアルに寄せて

フレンドフーズのオリジナル商品「完熟赤山椒」。ピリッとした奥行きのある辛みと芳醇な香りで、おかげさまで発売から15年以上愛されている商品です。

その完熟赤山椒が、この度リニューアルすることとなりました。背景は、原材料の赤山椒が採れなくなったこと。数年前にこの問題が浮上して以降、当店ではこの商品について、何らかの方法で継続するのか、それとも製造を中止するか、悩み続けてきました。

この記事では代表の藤田から、リニューアルの経緯と、新しい商品を通じて考えたことをお伝えいたします。

完熟赤山椒の実はこれまで、和歌山の生産者にぶどう山椒を育ててもらい、その大半をフレンドフーズで買い取っていました。

しかしここ数年、世の中に流通する山椒自体の生産量が全国的に激減し、価格も高騰。

山椒の木はただでさえデリケートで、熟練の農家さんでも突然枯らせてしまうことや、根腐れさせてしまうことも発生しやすく、手入れには時間と労力がかかります。

さらに赤山椒となると、樹上で赤くなるまで熟成させるため、生産者に求められる育成の難易度は通常の山椒に比べ跳ね上がる。また、育てるのに時間がかかるぶん、同じ畑で別の果樹の栽培に移れないなどのデメリットも存在するため、生産者も少なくなります。

このような背景を持つ上に、追い打ちをかけるように和歌山の生産者が高齢で、山に入れなくなる、つまり生産が終了するということが重なりました。

フレンドフーズで代わりに山の管理をすることも考えましたが、畑は和歌山、当社は京都。物理的に現実的ではありません。

そこで渋々ながら、変わりの山椒を探すことにしたのです。

かれこれ3~4年は探し続けていたでしょうか。ようやく、納得いく岐阜県の朝倉山椒に出会いました。

朝倉山椒は一般的なぶどう山椒に比べて、辛みがやわらかく、柑橘系の香りが強いのが特長です。

「これを使えば、ぶどう山椒で作っていた頃より、角のとれた丸みのある刺激となり、これまでよりも柑橘系の香りをたたせることで、鼻を抜ける芳香を一層豊かなものにすることができる」。

やっとたどり着けたことに嬉しさがこみあげてきたのは、言うまでもありません。

赤山椒をフレンドフーズが販売し始めて、15年以上が経ちました。
これまではずっと、同じ生産地、同じ生産者による素材を、同じ手作業による処理と石臼を使って挽く製法で作り続けてきましたが、今回初めてのリニューアルで、素材が変更となります。

同じ味を安定的に維持していくことは、世の中から求められることかもしれません。しかし山椒に限らず、自然物を素材に手作りされる商品は、しばしばそれが叶わないこともあります。

海産物や野菜に旬があるように、それらを用いた加工品や、牛乳、海苔、醤油、酒、はちみつなどにおいても、自然物であるがゆえに、素材の味は変わります。季節のうつろいや、その時の豊作不作、動物たちの体調、自然環境の変化などによって変わることは、本来当然ではないかとも思うのです。

工業製品として一定の味やクオリティを保ちつつ、費用を抑えて大量生産することは、現代の技術では当たり前に可能なこととなりました。

それはそれで、否定はしたくないのです。戦後、復興に向かう際などの大量生産ニーズに応えるために、日本人の国民性と併せて産み出した素晴らしい技術だと思います。

ただ、そのニーズを満たすことは大手に任せたい。私たちには、違うやるべきことがあります。

私たちが商品を仕入れているメーカーや生産者の方々は実直であり、非効率ながらもごまかしの効かないほんまもんを作り続けてくださる方々が、たくさんいらっしゃいます。

そんなほんまもんを、ほんまもんを作って下さっている生産者を、守りたいという意思のある会社でありたい。

そんな理念に立ち返った時、私たちの赤山椒を考えると、納得できない素材に切り替えてでも延命措置を行う選択をとることは、当社を信じてくれているお客様や生産者さんを裏切る、愚弄することになりかねないと思いました。赤山椒を終売させることも考えていたほどです。

当店に限らず、これまで多くのメーカーさんや生産者さんたちも、同様の判断を迫られたことはあるのでしょう。

私たちはそんなふうに悩んでいた時、性格は大きく異なるものの、フレンドフーズとして納得できる素材に巡り会えました。

「素材が変わる。それはいいのだろうか?」

悩みながらも思い出したのは、井上佃煮店をフレンドフーズで継続してもらう際に私が発していた、「変えていいものと変えてはいけないものがあるはず。カタチを変えてでも大切なものは守ろう」という言葉。私たちは、結論、「同じものを作ることはできない」と割り切ることにしました。

同じ味を安定して作り続けることよりも、完熟赤山椒を継続してご利用いただいているお客様に、フレンドフーズの考える「美味しい」「ほんまもん」を届けるということを優先する。

こうして、12月25日から、当店一番の看板商品である完熟赤山椒をリニューアルし「新・完熟赤山椒」として再スタートをきることとなりました。

これまでの赤山椒とは味や風味は異なりますが、これからの赤山椒はこれでいく。

誤解していただきたくないのは、「美味しい」でお客様を裏切るつもりは微塵もないということです。同じように「商品作りの考え方」で、メーカーや生産者の方々を裏切るつもりも微塵もありません。

誰かに伝えたい美味しいものを、作り続けるべきものを、ほんまもんを、きちんと未来へ繋いでいく。これからもフレンドフーズは、ほんまもんの架け橋を、架け続けます。

新たに生まれ変わる「新・完熟赤山椒」に乞うご期待。

文:藤田俊(フレンドフーズ代表)


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