「積み立て投資」の底力 その1 (日経平均の場合)
「資産形成の王道」とよく言われるのが「積み立て投資」。
投資のタイミングを分散してコツコツ小口で積み立て、長く続けることで、資産形成をしていく方法です。iDeCoや「つみたてNISA」も「積み立て投資」を後押しする制度です。
投資の対象として選ばれることが多いのが株価指数。
国内株式であれば、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)、米国株式であればNYダウ平均株価や、S&P500。ほかにも世界の先進国の株式を対象とする指数(MSCIワールド・インデックス)など。
積み立て投資を続けていくと、どんな効果があって、過去実績ではどのくらいの資産になるのか。
過去の株価指数の推移をもとに、簡単なシミュレーションをしてみました。
◇ ◇ ◇
今回選んだ指数は日経平均株価。
米国をはじめとする世界の先進国株式に比べ、伸び率が見劣りする日本の株価ですが、それでも、小口の積み立て投資の効果がよく分かります。
次のグラフは、1989年から直近2021年までの日経平均株価(各年の12月末終値)の推移です。
日経平均株価は1989年の12月末に史上最高値38,915円を付けました。
その後、いわゆるバブルの崩壊で長い下落トレンド。
途中、何度か反転を試みますが叶わず、2011年の8,455円(年末終値)を底に、アベノミクス相場でようやく反転。
2021年末では最高値から概ね7割の水準まで戻したところです。
この期間の1年間毎の日経平均株価の上昇率・下落率の推移は以下のとおりです。
かなりのばらつき。振れ幅は大きいときで、上昇、下落ともに40%を超える年がいくつかあります。
この期間の1年間の平均収益率は、わずかに1%弱。
デフレの影響も根強く「失われた30年」とも言われる由縁です。
このような市場を前提として、1990年の年初から積み立て投資を開始し、2021年の12月末まで32年間続けたと仮定して、資産額がどのようになるか試算してみました。
(※)月1万円の積立をイメージして、年間12万円を2021年までの32年間、日経平均株価へ継続投資したとするシミュレーション。
(※)計算の便宜上、年初に12万円を投資し、1年間の変動率で運用、コストなしとして算出。
開始のタイミングとしては、株価の最も高いところからのスタートです。
結果はこちら。
積み立てた金額の合計384万円(元本合計)に対して、運用した結果の資産額は738万円。なんと元本の2倍近くになっていました。
先のグラフにあったように、積み立て開始後、株価は長い期間下がり続けますが、その間に、安いところをしっかり仕込み、アベノミクス相場以降の反転で功を奏した形です。
株価の底を当てに行くのは至難の業。
タイミングを計り、見送ったところが結局底だった、ということがよくあります。
アベノミクス相場以降の株価の反転が大きかったということがありますが、買いのタイミングを気にすることなく、淡々と、しかも小口で買い続けることの効果も大きかったと言えます。
このあたりが積み立て投資の一番の強みと言えるでしょう。
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1989年頃にはiDeCoの制度も「つみたてNISA」の制度もありませんでした。
今ではこれらの制度を活用することで税制面での優遇も受けられます。
さらに、最近出された政府の「骨太の方針」の中ではiDeCoや「つみたてNISA」のさらなる制度改革・拡充を図ることが謳われています。
今後の制度の行方に注目していくとともに、積み立て投資の活用の機会も探っていくとよいのではないかと考えます。
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