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カガクの扉を開く読本その3 ノーベル賞を取りたい編

はじめに


 日本政府は、科学立国を目指して、政策を行っていると言っていますが、実は世界からどんどん取り残されることばかり行っていますね。本当に。
 一番いけないのは、国立大学の独立法人化ですよね、これは単に国が金の負担をしなくてよいようにしてるだけで、研究環境の悪化を進めているだけです。目先の結果だけが求められ、日々の光熱費などを気にしながら研究をする、決められた期間に研究の成果が出なければ切り捨てられる、契約期限を気にしながら成果を求め研究をする。そんな環境で落ち着いて研究ができるのでしょうか。
 端から見ると、なんだか分からない研究をやっている人がいっぱいいて、その中で時代にあった研究が取り上げられていく、そんな感じでいいと思うのです。だから、色々な人が色々な研究に自由に取り組めるような環境を作り出すことが必要なのだと思います。
 マスコミは、ノーベル賞の時期になると、誰がノーベル賞を取れるかと言うことばかり大きく取り上げて、日本の研究環境や教育環境の悪化について、ノーベル賞を受賞した研究者も言っているにもかかわらず、そういう実態については大きく取り上げようとはしません。
 そんな中で、ノーベル賞を受賞した人の話を読むことによって、ノーベル賞はどうすれば取れるのかを、みなさんで探って欲しいなと思います。

1.日本のノーベル賞受賞者の話


◎『理科室から生まれたノーベル賞 ~田中耕一ものがたり~』
 国松俊秀:著 藤本四郎:絵 岩崎書店 イワサキ・ライブラリー13
(2002年にノーベル化学賞を受賞した、田中耕一さんの児童向けの本です。田中さんは島津製作所という一企業の研究員でした。化学賞を取るきっかけの研究は、薬品の入れ間違いでした。しかし、間違えた薬品も実験で試したことが、大きな発見につながっています。失敗してもとりあえずやってみよう精神が大きな発見につながったという話です。)

◎『大村智ものがたり ~苦しい道こそ楽しい人生~』
 馬場錬成:著 毎日新聞出版
(この本も児童書ですが、2015年にノーベル生理・医学賞を受賞した大村智さんの話です。熱帯地方の感染症の治療薬である、イベルメクチンを発見した人です。この人の研究は、世界中の土の中から放線菌という微生物を取りだして、その微生物が生産する物質から薬となる成分を見つけ出すという、ものすごく根気のいる研究です。こういう研究は、数年で成果が出る物では無く、何十年という地道な研究が必要になります。)

◎『吉野彰特別授業 ロウソクの科学』
(別冊NHK100分de名著 読書の学校)
 吉野 彰:著 NHK出版
(2019年にリチウムイオン電池の研究で、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんが、ファラデーの『ロウソクの科学』について、東京工業大学付属科学技術高校での特別授業を活字化した本です。後半に自分の研究の話と未来への展望が述べられています。)

◎『精神と物質』
 利根川進・立花隆:著 文藝春秋 文春文庫
(1987年に免疫の抗体遺伝子の組換えの研究で、ノーベル生理・医学賞を受賞した利根川進さんの本です。免疫に関する研究過程が述べられています。大きな研究をするのならば、海外に出よう! と言っています。)

◎『私の脳科学講義』
 利根川進:著 岩波書店 岩波新書 新赤版755
(免疫の研究でノーベル賞を受賞した利根川進さん、その後、日本に帰ってきて、今は理化学研究所で脳の研究をしています。なぜ、脳の研究を始めたのかという話です。)

◎『科学に魅せられて』
 白川英樹:著 岩波書店 岩波新書 新赤版709
(2000年に、電導性高分子物資のポリアセチレンの研究で、ノーベル化学賞を受賞した白川英樹さんの本です。ポリアセチレンの研究では、ある研究生が実験に使う触媒の量を間違えて、1000倍も入れてしまったのが成功のきっかけだったというお話です。)

◎『生命の未来を変えた男 ~山中伸弥iPS細胞革命~』
 NHKスペシャル取材班:編著 文藝春秋 文春文庫
(2012年にノーベル生理・医学賞を受賞した山中伸弥さんの本です。NHKの番組を活字化した本なので、iPS細胞だけで無く関連する研究の話も分かりやすくまとめられています。巻頭には、松本零士さんによる漫画。巻末には、山中伸弥+立花隆+国谷裕子三者による対談も入っています。)
 

2.海外の研究現場は過激です


◎『二重らせん』
 ワトソン:著 講談社 講談社ブルーバックス
(科学入門編で紹介した本です。実はこのノーベル賞を受賞した論文、英文でわずか2ページなのです。たった、2ページでノーベル賞です。日本語の訳を載せた本もあるので、余裕のある人は読んでみてください。)
◎『原典による生命科学入門』
 木村陽二郞:著 講談社 講談社学術文庫 p.215~p.22
(日本語訳は、この本に載っています。)

◎『ノーベル賞ゲーム ~科学的発見の神話と実話~』
 丸山工作:編 岩波書店 同時代ライブラリー343
(ノーベル賞を受賞した科学者の、先陣争いに関する話をまとめた本です。テーマとしては、「インスリン」「ビタミンC」「二重らせん構造」「プリオン」「エイズ」についてです。大きな発見の影には、沢山のすごい人がいるという話です。)

◎『ノーベル賞の決闘』
 ニコラス・ウエイド:著 丸山工作・林泉:訳 岩波書店 
           同時代ライブラリー124
(脳の視床下部から分泌される、ホルモン放出因子の発見に関して、二人の研究者がまるで取っ組み合いでもするかのような競争をしていたというお話です。実は、この発見には数人の日本の研究者の研究が大きな鍵を握っていたのですが、その人たちにはノーベル賞は与えられていません。) 

◎『遺伝子発見伝』
 R・J・デュボス:著 田沼靖一:訳・解説 小学館
             地球人ライブラリー40
(遺伝子の本体はDNAであることを発見したエイブリーの研究姿勢を示した本です。実は、エイブリーはノーベル賞を受賞していません。その当時は、タンパク質が遺伝子の本体であろうという研究者が99%以上で、DNAが遺伝子であるとは誰も信じていなかったからです。ですから、周りからの批判もすごくて、実験が間違っているのではとか、終いには頭がおかしいのではぐらいの言われようで、結局ノーベル賞の受賞も横やりが入ってかないませんでした。かわいそうなエイブリーさんです。)

◎『生命科学者たちのむこうみずな日常と華麗なる研究』
 仲野徹:著 河出書房新社 河出文庫
(この前、見つけた本です。著者は、科学者の伝記を読むのが大好きで、それぞれの科学者の伝記を読んで、その内容を解説している本です。さすが、現役の生命科学の研究者ですね。内容の読みが深いです。私のような、表面的な薄っぺらい読み方はしていません。研究内容のポイントを鋭く突いて解説しています。ちょっと、専門用語がさらっと出てくるので、ある程度生命科学についての知識が無いと少々戸惑うこともあるかと思いますが。なかなか面白い本でした。買って良かったです。)

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