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制約を取り払いフリーランスになった先にあったのは、学びのチャンスにあふれている毎日だった。営業×Webデザイナー熊谷 忍さん

こんにちは。フリパラ編集部のライター佐藤 梢です。フリーランス・パラレルキャリアの多様な暮らし・働き方を、取材を通してご紹介する「働き方の挑戦者たち」です。

ひと昔前の日本に比べ働き方に多様性が生まれている今、読者の中にも「もし独立したらどうなるんだろう?」と考えたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、独立となると“不安”がよぎることもたしかです。

今回お話を伺ったのは、“営業”と“Webデザイナー”として活躍する熊谷さん。熊谷さんが独立しようと決意されたのは40代半ばの頃。会社員としての実績を21年ほど積んだ頃でした。
独立を決めたポイントは「このまま会社員でいることが怖かったから」。
独立を決めてから今に至るまで、どんな道をたどって来られたのか?“会社員で居続けるほうが怖い”と思ったその理由とは?
最後に、これからフリーランスになろうとしている方々に向けてメッセージもいただいていますので、ぜひお楽しみに!

<プロフィール>
会社員→フリーランスwebデザイナー→フリーの営業パーソン。
同志社大学卒業後、人材採用支援企業、エレクトロニクス商社を経て、ドリーム・アーツ(ITベンチャー)で17年勤めたのち、Webデザイナーとして独立。1年ほどWeb制作のみに従事する期間を経て、「Webデザイナーの技術力×これまで培ってきた営業力」を武器に新たな活動を開始。現在は、株式会社アナムネ、アプセル株式会社で営業支援を行ないながら、自身の会社であるセット合同会社も運営している。

Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100028969173289
株式会社ドリーム・アーツ:https://www.facebook.com/dreamarts.jp/
株式会社アナムネ:https://www.facebook.com/anamne.inc/
アプセル株式会社:https://www.facebook.com/appsule/

行き詰まりを感じていた40代半ば。「期待感」が薄れ「現状維持」思考になっている自分に危機感を覚え、独立を決意。

――熊谷さんは現在「営業×Webデザイナー」のプロとして、主に2社でご活躍されています。フリーランスとしてどのように働かれているのかお聞かせください。

 1社は「アナムネ」という会社での営業支援です。オンライン医療相談などを行っている会社で、製薬会社さんに向けてリード開拓、案件の種や課題に感じていることを見つけ収穫します。案件化したら、社長や企画担当の方とともに受注へともっていくための動きも一緒に行っています。
ベンチャー企業なので、事業開発や営業をどう作っていくかというところも支援させていただいています。

もう1社は「アプセル」という、モバイルアプリなどの開発を行っている会社です。スマホを使ったマーケティング事業ですね。アプリのSEOやSNSを使った集客なんかもあって、Webデザインの知識を役立てながら支援しています。

あと仕事時間全体の10分の1くらいを、Webデザイナーとして受注したサイトの保守管理や更新に当てています。

――“営業を外注する”という発想がなかったので、個人的に、フリーランスで営業を支援することが新鮮でした。そもそも、どのような経緯で「営業×Webデザイナー」になったのでしょうか。

 96年に大学を卒業後、人材採用支援を行う会社に、営業職で入社しました。その後、エレクトロニクス商社を経て、ITベンチャーのドリーム・アーツへ転職しました。
ちょうどその頃“ITバブル”の全盛期で、「ITベンチャーでひと山あてよう」という期待からドリーム・アーツに転職したのですが、結局ここで17年勤めたので、社会人の基礎からここで育ててもらったと思っています。

――長く勤めた会社から独立しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

 今、私は49歳なのですが、独立しようと決めたのは40代半ばの頃でした。
あの頃、行き詰っていたんです。
20年以上働いてきて、自分が40代半ばになり、なんとなく「このままかな」という将来がうっすら見えてきたと感じるようになりました。
大手でもベンチャーでも、会社に勤めていると専門職としての道や、経営に携わっていく道というものがありますが、私が自分の将来を考えた時、いつの間にか期待感よりも「現状維持」を望むようになっていました。

 それに、学んだことも時間の流れとともに価値が下がります。新卒の頃に学んだことが15年後も使えるとは限らない。
私はそうした環境に危機感と行き詰まりを感じていました。前向きな状態ではなかった。それで、「このままではよくないな」と思って、フリーランスになることを考え始めたんです。

――フリーランスになることを考えていても、会社員でなくなることの恐怖心を抱えている人も多いと思うのですが、熊谷さんの場合はこのまま会社員でい続けて、スキルも環境も現状維持で行くことの方に恐怖を覚えたんですね。

 はい、すごく危ないと思っていました。「状況を変えないといけない」と。もしあのまま会社員でいたらと思うと…ぞっとします(笑)

――もともと営業職をずっとやって来られたそうですが、フリーランスとして選んだ職業はWebデザイナーだったのですね。それはなぜだったのでしょうか?

 営業に加えて、できることの幅を他にも広げたくてWebデザイナーを選びました。ホームページを作ったり、ブログを更新したり、Web関係は必ず必要になってくるので、自分の武器としてWebデザインもできるようになりたいと思い勉強することにしたんです。
前職では、周りにWebデザイナーがいたので身近だったこともありますね。

――たしかに今やWebやSNSはビジネスには当たり前の存在ですよね。Webデザインについてはどうやって学ばれたんですか?

 もともとワードプレスなどは少し勉強していたんですが、どこかで一度まとめて学ばないと何もスタートしないなと思っていたところ、職業訓練校(※編集部注:ハローワークで行っている、就職に必要なスキルや知識を習得するための無料で職業訓練が受けられる学校)を見つけ、そこで3か月間集中して学びました。

リソースなら他にもいる。“お互いの価値観”を一致させ、経営者の気持ちに寄り添うのが私のスタイル。

――職業訓練校で学ばれたのち、いよいよフリーランスのWebデザイナーとしての活動がスタートするわけですが、最初はどのように活動されていたのでしょうか?

 まずホームページを作ることができるようになろうと思い、最初は、クラウドソーシングで制作案件を受注・制作したり、知り合いのWebサイトを作りました。
その後、求人サイトで歯科医院のホームページの制作やメンテナンスを行っている会社を見つけて、そこでWebサイトの運営作りをしていました。

――独立当初、ご苦労された点などはありましたか?

 お客様の期待に応えられる品質、納期をクリアすることと、一定レベルまでのスキルと経験を積むことに苦労しました。
 たとえば、Webサイト作りに関しては、経験も浅かったので1サイト作るのにとても時間がかかりました。5万円分の仕事をするのに100時間かかってしまうような状態でしたね。それでもだんだんと制作時間が短縮されていき、また受注確率も向上していったので、次のステップとして同時に2~3件並行して受注するようになりました。そうすると、今度はキャパオーバー気味になってしまい…。土日もずっと制作しなければ追いつきませんでした。

 このままでは良くないと思い、収益を上げるためにはどうするべきかを考えたんです。そして「短時間で相応の品質レベルでホームページを仕上げていく必要がある」という結論に至り、経験を積みながらWebや書籍で勉強。そして自分の得意パターンを確立し、品質と効率のバランスを取ることができるようになっていきました。その後、お客様の満足度や評価を見ながら得意パターンをさらに精査し、徐々に落ち着いていったという感じです。

 一方で、お客様開拓に関しては、もともとずっと営業職だったことから苦労は特に感じませんでしたね。むしろアドバンテージを感じていました。

――フリーランスになって希望通りWebデザイナーを仕事にできたものの、やはり独立当初はたくさんのご苦労があったのですね。その後の受注状況はいかがでしたか?

 Webデザイナーを始めてから1年間で、21件のホームページを受注・制作しました。個人事業主の方や、スタートアップ企業、新規開業のバレエ教室や英会話教室というような習い事のページなどを作りました。現在は、35サイトほど制作実績があります。今は新規ではあまりお受けしておらず、過去作成したサイトでの追加制作、保守管理を継続して行っています。

――ちなみに、成果物の価格はどのように設定しましたか?

 制作会社さんが受注している金額を参考にしました。
最初はとにかく実績を作りたかったので、たくさん受注することを最優先に考えて価格設定しましたね。
 実績を積むとともに、徐々に金額を値上げしていったのですが、お客様をスタートアップ企業や個人事業主の方だけに絞ったり、作るものもパターン化させるなど工夫しました。その形で運用し、ある程度の金額に到達したところで値上げは一旦ストップしました。

――自分で価格や受注をコントロ―ルするというのも、独立したからこそ得られる学びですね。そして、Webデザイナーとしてのご活動後、フリーランスとして営業の仕事を再開されています。

 そもそもWebデザイナーは制作の技術を身に着けたくて始めたことだったので、Webデザインだけを行う期間は1年ほどで区切りをつけました。
現在はもともと得意分野だった営業のスキルにWebの知識を掛け合わせて、フリーランスとして活動しています。

――お仕事をされる際に配慮していることや心掛けていることがあれば教えてください。

 経営者の考えや思いを聞かせていただいて、“お互いの価値観”を一致させて働くようにしています。
 “営業の手法”がほしいのであれば、手法はさまざまですし私でなくても他に人材はいると思います。「リソースとして使ってください」という部分もありますが、今参画させていただいている2社では、ベースとしてお互いにお客さんに対してどうありたいかという姿勢を共感しあったり…お互いが透明な形で自分のことなどを話して、信頼関係を作りながら働いています。
 成果を出すことはもちろん大切ですが、それぞれの会社さんのスタンスや、提供したい価値を理解すること。経営者、経営陣の気持ちを大切にするようにしています。

制約を取り払いたくて選んだフリーランスという働き方。学びのチャンスがあふれる充実した毎日。

――熊谷さんが、フリーランスになってよかった!と感じられているのはどんなところですか?

 一番は“制約”がなくなったことですね。Webデザイナーを選んだ理由にも、「制約を取り払いたかった」というのがありました。
時間、場所、お金。あとは健康や家庭など、人によって色々な制約があると思いますが、その制約を取り払ってみたら、付き合いや環境、見えるものや視点に変化が起きるんじゃないかと思ったんです。
だから、一度その制約を取り払ってみたい。制約をとり払うことに重心を置いて、フリーランスになることを選びました。この仕事ならどこでも仕事ができますし、時間も関係ありませんからね。

――では、逆に会社員のほうがよかったなと思われるところもありますか?

 チームで仕事ができるのが会社の良さだと思います。会社の規模にもよりますが、予算が大きな仕事ができるのは会社員ならではの醍醐味だと思います。

――なるほど。では、熊谷さんが思う“フリーランスに向いている人”というのはどんなタイプの人でしょうか?

 まず、何かのスキルを持っていることですね。その上で「成果を出すぞ」という想いを、強くはっきりと持っている人。あとは、課題発見力、成長意欲、誠実さですね。

――もし、お知り合いで会社員として働いている方に独立しようか迷っていると相談されたら、熊谷さんならどんな言葉をかけますか?

 「早いほうがいい」と言いますね。とにかく早く。先によく考えてから…という気持ちもわかりますが、その環境に置かれたらおのずと考えざるを得ません。それであれば、考えざるを得ない環境が手に入るフリーランスという働き方を早くやってしまったほうが、自分のスキルアップにもつながるのではないでしょうか。
 もちろん無計画過ぎる独立では成功は難しいと思いますが、「フリーランスとしてやっていけるかもしれない」という核となるスキルを身に着けられたと思ったら、あとは早いほうがいいと思います。

――「早いほうがいい」、ぐっと刺さる人も多そうなお言葉です。では最後に、今後はどのように活動していかれるご予定か、展望をお聞かせください。

 Webマーケティングの勉強がしたいですね。ITやWebってどんどん新しいものが出てくるので、より深く広く学び直しをしたいんです。
 私は25歳で働き始めて75歳まで働く予定なのですが、ちょうど今が折り返し地点。最初の10年に学んだことはもう価値が下がっていると思っています。
フリーランスである今、日常的に学び直すべきテーマは見つかるし、学び直しの機会にもあふれています。会社員時代に比べると恵まれた環境と言えますね。

――フリーランスは学ばなければ感覚が鈍化し自分が困ってしまいますし、そういう意味で、“強制的学びなおしの環境”とも言えそうですね。

 その通りですね。あとは、5年後くらいにヨーロッパやイギリスなどへ留学し、海外暮らしというものを経験してみたいと思っています。

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 「制約を取り払いたかった」と語る熊谷さん。熊谷さんにとって怖いのは、このままなんとなく現状を維持したまま、時間だけが過ぎていくことでした。
制約を取り払うためにフリーランスになる、その手段を手に入れるためにWebデザインの技術を身に着けた熊谷さんは、「営業×Webデザイナー」というオリジナルの武器を手に入れました。
 そして今、制約を取り払った環境から見える景色を眺め、クライアントと気持ちを通わせながら日々活躍されています。
 「フリーランスであることは、学びの機会を手に入れられるチャンスがたくさんあるんです」とにこやかな表情で謙虚に語る熊谷さん。
 勉強しなければならないのではなく、「スキルアップの機会に恵まれている」ととらえることができるこの感覚こそが、フリーランスで活躍できる秘訣かもしれません。

ライター:kozue sato
正社員で会社勤めをしながら、フリーライターとしても活動しているパラレルワーカー。年間パスポート所持歴もあるほど、某テーマパークを愛している。生粋の日本人ながら日本語好きが高じて日本語教師の学校に通うなど、好きなことはトコトン突き詰めたくなる性格。趣味は海外旅行。お気に入りはカナダ、イタリア。
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