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子連れ移住したライターが語る、「失敗しない」地方移住先の見つけかた

こんにちは。「フリパラ」ライターのトヨタです。2018年、私たち一家は東京から福岡県の糸島市という海のキレイな街に移住しました。移住時に一瞬(ほぼ)無職になりましたが、今はフリーランスで編集やライターのお仕事をしながら、3人の子どもの育児に奮闘する生活を送ってています。

さて、コロナで既存の価値観がガラガラと崩れた2020年は、地方移住や二拠点居住がぐっと身近になった年でもありました。リモートワークが一気に普及し、通勤せずに家で仕事ができる…

それなら、高い家賃を払って東京都心に住み続ける必要なくない?
広々した家で仕事部屋を確保しつつ、密とは無縁な自然の中で、子どもを走らせてたほうがいいよね?

…と考えた人も多いのではないかと思います。

でも実際に移住するとなるとどうしたらいいのか、何から始めたらいいのか迷うのもまた事実です。そこで今回は、わが家の移住体験をベースに、移住までのプロセスをご紹介しようと思います


移住までのプロセスは7段階

移住のプロセスは下記の7ステップ。

1・したい暮らしを考える
2・ざっくり候補地を出す
3・情報収集
4・仕事の目処をつける
5・都道府県を決める(下見)
6・市町村を決める(下見)
7・家・その他を決める(下見)

この記事では、上記の1~3までについて書きたいと思います。

1・したい暮らしを考える

地方移住というと、「どこに移住する??」という点に目が行きがちです。けれどもそれよりずっと大事なのが、「自分がどういう暮らしをしたいか」を考えること

そもそも移住は、それ自体が目的なのではなく、より良く生きるための「手段」でしかありません。理想の暮らしがきちんと思い描けていないと、移住してから「なんか違った…」となりかねません。家族がいるならなおのこと。

「地方移住いいよね」と一見意見が一致している夫婦でも、「車がなくても暮らせるくらいのちょっぴり田舎で、都心に通勤しながら週末は自然に触れ合う」と、「いわゆる限界集落で自給自足の生活を送る」と、それぞれ思い描く「地方移住」がまったく違っている、なんてこともあります。

私たち夫婦も、最初から「地方移住」を志したわけではありませんでした。移住のきっかけは夫婦で「これからの人生においてやりたいこと」のブレストをしたことだったのです。

義両親が子どもたちを旅行に連れ出してくれたおかげでできた、数年ぶりの夫婦2人だけの時間。この時間を使って、これからの人生においてやりたいことをブレストしてみました。「仕事が」「家賃が」といった、普段の会話で絶対出てくるような条件は加味せず、「死ぬまでにやらないと後悔する」ことを、ふたりで付箋に書き出していきました。

中には、「宇宙旅行に行く」など壮大なものもありましたが、付箋の多くは、「暮らしやすい場所で暮らしたい」「車を所有したい」「広い家に住みたい」「子どもとアウトドアを楽しみたい」等、一見すぐ叶いそうな、平凡な暮らし系のワード。それから、「もっと子どもの成長を支援したい」「大学に通って学び直しをしたい」など、プライベートの時間に関するものでした。ちなみに、「出世したい」等、仕事に関するものは出てきませんでした…。

当時、私たち夫婦はどちらも会社員で、夫は早朝出社の深夜帰りで、私は典型的なワンオペワーママ。通勤を重視した都心の家は、家賃が高いわりに家族4人で暮らすには手狭で、目の前の道路は交通量が多く、子どもたちが道路に飛び出したり、歩道を走る自転車にぶつかったりしないか、いつも神経をとがらせていました。

しかし、広い家に引っ越すと、通勤時間が増える、イコール家族の時間が減る、と言ったデメリットもありました。そう考えるとなかなか踏み切れず、やむなく高い家賃を払いつつ、生活を続けるために夫婦2人でフルタイム勤務。仕事はやりがいがあり、友人もいて、都心ならではの楽しみももちろんあったけれど、基本的にいつもせわしなく、クタクタでした。さらにその年の秋には3人目の出産を控えており、ますます大変になるのは目に見えていました。

人生を長いスパンで考えたとき、夫婦ともに暮らしやプライベートを充実させたいと願っているのに、実際は日々の大半の時間を仕事と通勤に突っ込み、「通勤しやすい」という理由で都心に家を借り、また家賃を払うために働く。このまま働いていても、急に給与が上がるわけでもないし、叶えたい暮らしは叶わない。それならばいっそ、都心暮らしをやめて生活コストを下げ、仕事時間も減らすことができれば、したい暮らしに近づけるのではと考えたのです。

ホワイトボード

(写真注)ホワイトボードでブレスト。その場で移住先の条件についてもざっと洗い出した

こうしてブレストをする中で、「脱東京、する?」と私たちは思いつきました。その場で「暮らしやすい場所」をもっと掘り下げていき、新しい暮らしの場所の条件を以下のように絞り込んでいきました。

・今よりも生活コストがかからないこと
・治安が良く、災害リスクが少ないこと
・便利であること(医療機関や教育機関へのアクセス、買い物環境など)
・自然へのアクセスが良いこと
・仕事へのアクセスが良いこと
・活気がある場所であること

今振り返っても、ここでしっかり夫婦で話ができたことはかなりプラスに働いたと思っています。

移住の準備を進めていると、たくさんの情報が入ってきて、当初の目的を忘れてしまいがち。うちの場合も、「もっと田舎の方にいって自給自足の生活したら楽しいんじゃないかなぁ」と夫がほぼ思いつきで言い出したこともありました。ですが、最初に決めた条件に立ち返ることで、軌道修正ができました。

2・ざっくり候補地を出す

どんな暮らしがしたいかイメージができたら、その条件に合いそうな場所の候補を挙げていくといいでしょう。情報収集は後で行うので、この段階では思い込みレベルでOK。寒いのは苦手だから温かい地方で、とか、東京圏に通勤できるよう関東近郊、でも自然の多いところ、とか。

私たちの場合は、「便利であること」と「活気がある場所であること」を条件に入れていたので、「札幌」「仙台」「福岡」をとりあえずの候補地にしました。札幌と仙台は、親が転勤族だった子供時代に住んだことがあり、どちらも都会でありながら自然がとても身近な環境であることを知っていました。一方、福岡はまったく未知の土地。けれども、「福岡出身の友だちたちは、みな福岡が大好き」だったり、「福岡に転勤していった友人が絶賛」していたりと、いいイメージがあり、候補地に加えました。

「移住はしたいけれど、東京での仕事は手放したくない!」ということであれば、移住場所は関東近郊が現実的ですし、「子どもの教育を最重視したい!」のであれば、今は魅力的な教育を実践する学校が地方にもできているので、そこへの移住を目指せばいい。どう生きていきたいかが決まっていれば、移住の方針も決まってくるはずです

3・情報収集

次は情報収集です。なんとなく住みたい場所はイメージできても、この時点ではわからないことがたくさん。「実際に生活費はどれくらいかかるの?」
「教育環境ってどうなってるの?」「そもそも福岡と聞いても、屋台のイメージしか浮かんでこないけど!」等々。

移住を検討し始めたときは頭の中はごちゃごちゃです。そうした時期の情報収集先としてオススメなのが、有楽町にある「ふるさと回帰支援センター」。ここは、東京・大阪以外の45道府県と連携している移住相談センターで、全国の自治体の移住に関する資料が手に入るほか、各地域ごとに相談員がいて、地域のこと暮らしのこと、ありとあらゆる疑問に答えてくれるのです。

私たちはブレストをしたその日のうちに移住センターに電話予約して、福岡県のブースに向かいました。相談員の方は、「どうして移住したいのか」「なぜ福岡なのか」を丁寧にヒアリングしてくれたうえで、県内の各エリアの特性や人口規模、家賃相場、一ヵ月の生活費の相場、県内の企業に転職した場合、どのくらい年収が下がるのかなどを教えてくれました。

特に有益だったのが、県内のエリアの情報でした。

福岡市を拠点にして都会の便利さも享受するには、「福岡市内」に住むしかないのかなと思いこんでいたのですが、実は太宰府市、春日市、筑紫野市、糸島市など隣接する市も、都心まで電車で20~40分圏内と、十分居住地候補になることを教えてくれました。しかも、福岡市内よりも住宅費がぐっと安く、自然も豊かになるとのこと。こういう情報は、その県内に住んでいる人は誰もが知っていても、県外にいると得にくいものなのですよね。

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*「ふるさと回帰センター」では先輩移住者や各自治体担当者によるセミナーも行っており、参加するたびに資料をどっさりもらってきた

また、移住のための有力な情報源となったのは、東京から移住先へと引っ越していった「先輩」たちのリアルな声です。

転勤や配偶者のUターンなどで東京から福岡に引っ越した友人3名に話を聞いたのですが、特に聞くことができてよかったのはデメリット面でした。友人なので、「イマイチな点」も遠慮なく教えてくれて、とても参考になりました。元は東京に住んでた友人のため共通言語も多く、「そのエリアは東京でいえばニコタマ(二子玉川)っぽいかな」「東京と比べると◯◯はいいけど△△はイマイチ」といった表現は、とてもわかりやすかったのを覚えています。

移住者の知り合いがいない場合は、「ふるさと回帰支援センター」や移住候補地の自治体に相談すれば、先輩移住者を紹介してくれることがよくあります。私たちも何度か自治体から依頼され、移住希望者の相談に乗ったことがあります。

移住の先輩たちへの質問のコツは、どんなことでも具体的に聞くことです。
基本的に移住者は「ハッピーな移住者が増えてほしい」と思っているので、質問されれば悪い面もガンガン答えて、アンマッチが起こらないようにします。ただ、「移住のデメリットってありますか?」などぼんやりした質問をしてしまうと、「そうだねぇ、仕事の幅は少ないといえば少ないよねぇ」などと、やはりぼんやりした回答しか返ってきません。
ですから、「中学受験させたいんですけど、この地域の受験事情は?」とか「地域の行事や仕事はどれくらいの頻度でありますか」とか、質問は具体的であるほど有効な回答が返ってきます。

一方、意外にあまり役に立たなかったのが、インターネットでの情報収集でした。

インターネットでよく見る移住記事には、大きく分けて2種類あります。一つは、「限界集落で村八分に」のような「田舎怖い」系の記事で、もう一つは、メリットを書くばかりの「地方最高」系の記事です。最近はもう少しバリエーションも増えたようですが、私たちが移住を検討していた頃は、本当にこの2種類ばかりでした。それぞれ参考になる部分がないわけではないけれど、ネットに記事を書くことが多い自分としては、バランスの取れた記事が少ないなと思っています。

「田舎怖い」も「地方最高」も、どちらも読み物として面白くなるよう特徴的な一部分にフォーカスして書いているため、偏った情報になりがちです。なので、本気で地方移住を考えている方は、インターネットでの情報収集はそこそこにしつつ、実際に対面、もしくは信頼おける人から情報収集に動いた方がいいです。今はオンラインで移住相談ができたり、オンラインイベントもたくさんあるので、どんどん利用するといいと思います。

さて、ここからいよいよ、下見に行ったり移住先を決めたりと本格的に動き出していきますが、その話はまた次回書いていきます。この先、都道府県を決め市町村を決め居住地を決め…と選択ラッシュとなりますが、そんな中で道標となってくれたのは、最初に決めた「自分たちの理想の暮らしを叶える条件」でした。「したい暮らしを考える」ブレスト、地方移住を考えてなくても一度やってみることをオススメします。思わぬ発見があって面白いですよ!

【執筆】豊田里美
早稲田大学第一文学部卒。ITベンチャー、住宅系の雑誌・Web編集などを経て、2018年家族5人で福岡県糸島市へIターン移住。現在はフリーランスのエディター・ライターとして、暮らし・働き方・移住等をテーマに活動中。Twitter @plumo_s

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