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「あえて『会社員に戻っては』と提案することも」キャリアの悩みはプロの視点で解決を

〜フリーランス&パラレルキャリア支援アドバイザー座談会〜

プロフェッショナルとして活動している「フリーランス」。組織に属さず、自由な働き方ができる代わりに、大きな責任が伴い、収入や将来に対する不安など悩みが尽きません。また問題が複雑に絡み合っていて、一人では簡単に解決できなかったりします。
 
そんなときに頼りたいのがキャリアコンサルタントです。彼らは国家資格を持つキャリアのプロフェッショナルで、悩みを解きほぐし、進む道が見つかるよう相談者に伴走してくれます。
 
具体的にどういうことが相談できるのか。今回は、キャリアコンサルタントであり、フリーランス&パラレルキャリア支援アドバイザーとしても活躍する4名に、相談内容の傾向や、フリーランスに意識してほしいことなどを語り合ってもらいました。

座談会参加者

中野敦志

キャリアコンサルタント歴6年。個人や法人向けにセミナー研修やキャリアコンサルティングなどを行っている。その他には、プロボノ活動や記事のライティングなども手がけ、フリーランスのパラレルキャリアとして活躍。

増田晴子

キャリアコンサルタント歴10年。企業での人事経験を活かし、「複業・起業を含めた働き方の相談」「小規模事業者や個人事業主のバックオフィスに関する相談」「就・転職時のキャリア支援」などを行っている。 

三塚由紀子

キャリアコンサルタント歴5年。メーカーでマーケターとして活動しながら、週2日はキャリアコンサルタントとして職務経歴書へのアドバイスや面接対策など社会人の転職支援に従事するパラレルワーカー。

西谷忠和

キャリアコンサルタント歴5年。約15年のフリーランス経験をもとに、誇れる「強み」がなくても、継続的な仕事を増やせる考え方やノウハウをアドバイス。普段はライターとして活動。

収入や将来のこと、自身のスキルなど、さまざまな悩み・不安を一人で抱えている

ーみなさんにはフリーランス協会が2022年1月に実施した「キャリア相談モニター」にて、フリーランス&パラレルキャリア支援アドバイザー(以下、支援アドバイザー)として参加してもらいました。実際、フリーランスのキャリア支援を行ってみて、いかがでしたか?
 
中野 1つのことを極めてきた人が多かったですね。そのためか、なかなか横にキャリアを広げられず、「これ1つに頼っていていいのか」という不安を感じ、相談されるケースが見受けられました。
 
西谷 やはり「収入」や「将来」についての相談でしょうか。
 
中野 そうですね。その2つが多いですね。
 
増田 私が担当した相談者は、「キャリアについて振り返る暇もなかったので、これまでのことを整理したい」というフリーランス歴3~10年の方が多かったですね。いま行き詰っている点を掘り下げて聞いていくと、「自信がない」「自分の強みが分からない」というワードが多く出てきました。
 
三塚 私の相談者は、みなさん女性の方でした。20代の学生から、30代のワーキングマザーまで立場はさまざまでしたが、共通していたのはライフイベントによって生じうる不安や悩みを抱えていた点です。これから迎える出産・育児に対してどう備えればよいのか、育児中の今どのように両立してキャリアを築けていけばよいかといった相談が多かったですね。
 
中野 フリーランスは、会社員のように産休・育休の制度があるわけでもなく、またこれからお金が必要になるときに、育児との両立で仕事をセーブすることも多く、その分収入も下がってしまいます。こうした悩みや不安をフリーランスは一人で抱え込んでいます。
 
三塚 それに私が担当した相談者の方は、フリーランスになろうと思って会社を辞めたわけではなく、パートナーの転勤やご自身の出産などを契機に意図せずになった人たちが大半でした。
 
西谷 僕が担当した相談者も三塚さんと同じですね。志してフリーランスを選んだというよりも、しかたなくなったという方がほとんどでした。
 
中野 言われれば、その傾向はあるかもしれないね。
 
西谷 そうなんです。そのため、フリーランスになる前の会社員時代の意識をうまく切り替えられなかったり、取引先をゼロから開拓したりすることも多く、稼げていない人も少なくありませんでした。一方、稼いでいる人は、中野さんが言うように3年先、5年先の将来への不安を抱えていました。

「稼ぐ方法」を模索する前に、まずは足元の必要な収入を把握すること 

ー相談内容として多かった「収入や将来のこと」について、支援アドバイザーとして気になったことはありましたか?
 
増田 「収入の悩み」で気になったのは、どうすれば「売上を増やせるのか」「単価を上げられるのか」といった、今のやり方で稼ぐことばかりに目がいきがちで、「最低限いくら必要なのか」を把握されていない相談者が多かったことです。
 
三塚 お金がいくら必要なのかが分かっていないと、いつまで経っても不安なままですからね。
 
増田 そうなんです。まずは、足元で必要な収入を把握することも大切だと思います。その上で、例えば、相談者が、「やりたいことはあっても手元の資金がない」というのがその方の悩みだと気がつけば、中小企業・小規模事業者・個人事業主が使える、融資・公的支援策・補助金・給付金・助成金等について調べることもできます。相談者の利用タイミングや条件にあうものから具体的に検討するだけでも、いまのやり方だけではない、新しいアイデアをたくさん思いつくかもしれません。
 
中野 そのアドバイスを聞いて、相談者の反応はどうでした?
 
増田 「こういう相談をできる人が身近にいないんです」という反応がほとんどでしたね。また「必要な収入もざっくりとしか把握できていなかった」「自分に当てはまる制度があるのかを調べたことがなく知らなかった」という声もありました。

西谷 僕も以前はそうでしたが、サラリーマン時代の感覚でいると、最低限必要な収入がいくらなのかを意識しないかもしれませんね。
 
増田 一方で「一つの本業で稼いだお金だけでやりくりしなければならない」「借金はしたくない」という価値観に気づくこともあると思います。それなら「収入」を把握するなかで「支出」も見直せるかもしれません。そのうえで、これからどんな新しいチャレンジならできそうか、を一緒に考えた相談者もいらっしゃいました。 

一人で何でも抱え込まずに、疲弊する前に苦手な業務は外注しよう

ー大手企業を中心に、パラレルワークが推奨されている今、中野さんが話された「1つの仕事にこだわっていていいのか」というジレンマも、フリーランスなら抱きそうな悩みですね。
 
中野 1つの仕事を続けるか、他の仕事も始めるかで悩む理由は3つあると思います。1つ目は、それだけしかやってこなかったので広げ方が分からない点。2つ目は、本業が実はやりたい仕事でなかったり、苦手な業務もやらなければならなかったりしてしまう点。3つ目は、仕事を広げた時に収入が下がってしまうことへのリスクです。
 
西谷 2つ目は意外ですね。「得意だけれどやりたい仕事ではない」ということですよね。
 
中野 社会的に認められている仕事なだけに一生懸命取り組むものの、実はあまり好きではないという人が結構な数いらっしゃいました。中には、本業自体は好きだけれど、一人でやっているため、好きではないことも頑張ってしまう人もいましたね。例えば、SNSでの広報やPR。非常に苦手なんだけど、周りを見渡すと、みんなやっているので自分もやらなければならないと思い込み、それで疲弊してしまうようです。「そこはプロに任せて、あなたは本業に専念したほうがいい。頑張るのはそこじゃない」というアドバイスをすると、 腑に落ちたみたいでした。
 
増田 組織の中で働く時間が長かった方だと、組織の価値観で物事を考えるクセが身に付いてしまうためか、「自分のやりたいこと」を持てなかったり、見失ってしまったりする人が多いですよね。
 
中野 多いと思う。好き嫌い関係なく、長らく得意なことだけをやってきたばかりに、ある時「オレって、これが本当にやりたい仕事だったのだろうか」と気づいて、自分を見つめ直すんだと思います。 

フリーランスに固執せず、働き方を柔軟に考えてみる

ーライフステージの変化における悩みも、フリーランスには多いと思います。特に育児と仕事の両立を考えると、「働く時間」や「収入」の問題は必ずついて回りますよね。
 
西谷 僕も子育て中のママからの相談が数多くありました。フリーランスは会社員と違って、他の人と仕事の分担もできないですし、休めばその分収入が減ってしまいます。そんな中、どうするべきか非常に頭を悩ませていらっしゃいます。
 
増田 私の場合は、子育て中のママから、「今までの繋がりからの受注単価が下がってきて焦りと不安を感じている」という相談がありました。そこで「ご自身がフリーランスになる以前の『正社員や派遣社員という働き方』にも選択肢を広げて今の仕事をすることで、収入先と人脈をさらに増やすのはどうですか?」という提案をしました。 
お子さんの成長にあわせて、収入が読める働き方で、『単価(収入)が下がる』不安を減らし、一方で、育児に負担にならない範囲で副業を行うこともできるかもしれません。
 
相談者の方は「え、戻ってもいいんですか?」と、非常に驚いていらっしゃいましたね。 

三塚 増田さんが言われたように、今フリーランスとして活躍しているからといって、必ずしもそこに固執しなくてもいいと思います。出産、子育て、介護などライフイベントによって価値観や環境の変化があったなら、その都度、自分にあった働き方を見直してもいいのではないでしょうか。 

増田 他にも、働く時間についてお悩みの相談者もいらっしゃいました。フリーランスになる以前に正社員で在籍していた会社から声がかかっている。仕事の獲得という意味では大変有難いが、すでに手がけている仕事もあると。そこで、その方には正社員でフルタイムの労働時間の確保がいまは難しければ、パートタイムや業務委託などの働き方でも可能か、会社の方に相談してみてはどうですかと、お話しました。

一人だと「自分に対する評価が分からない」

ー会社員と比べて、フリーランスだからこそ意識すべきことはありますか?
 
中野 悩みとして特徴的なのは「自分の評価が分からない」点です。会社にいれば隣で同じことをしている人がいて比較できますが、一人で仕事をしているフリーランスはなかなか比べられません。そういうときは横の繋がりを持ったり、同業の仲間を持ったりすることをアドバイスしています。
 
西谷 僕は、フリーランスには主体的にキャリアをつくっていく「キャリア自律」の意識が欠かせないと思いますね。それは会社員以上に求められること。例えば、多くの場合、組織(会社)に入ればポジションや仕事を与えられますが、フリーランスになれば、スキルを高めていかないと明日から仕事がなくなってしまうことにもなりかねません。主体的に学び続けて、自分に必要なスキルや能力を獲得していくことが必要です。
 
三塚 西谷さんと似ていますが、フリーランスは自分でその働き方を「選択した」という意識を持てるかどうかで大きく変わるかなとと思います。「仕事を断れない」「休めない」「この仕事を続けられるかどうか分からない」といった不安や辛さは多いかもしれませんが、一方で、興味・関心のある仕事に集中できたりとフリーランスだからこそ楽しめることも少なくありません。ですから、どういう経緯でフリーランスになったとしても、「自分で選んだ」という覚悟を持てれば、仕事への向き合い方が変わり、より成果を生み出しやすいと思います。
 
増田 私も、相談者の方へのフィードバックシートに「キャリアは自分自身のものなんですよ」と書きました。働き方も含め、自分で選んで決めることができれば、自分の課題に対してもより主体的に取り組めるのではないでしょうか。 

他者の視点を借りて、自身の本質的な悩みを知ろう

ー最後に、この記事をご覧の皆さんにアドバイスをいただけますか?
 
増田 中野さんがおっしゃっていた「仕事仲間や相談仲間をもつこと」ですね。ある相談者の方に、フリーランス協会のオンライン相談サービス 福利厚生パッケージで税務法務等専門家の 『士業オンライン』なども利用して『伴走者』を見つけてはどうですか」という話をしました。自分のことや自分の悩みは本人が一番気づいていなかったりします。それこそ、税理士さんなら決算とか記帳や相談のタイミングでもいいでしょうし、私たちのような支援アドバイザーやキャリアコンサルタントとの面談でもいいので、『定期的に』他者の視点を借りるのがいいと思います。フリーランス協会の公式noteの記事でも「仲間を持つ大切さ」について触れている記事があるので、興味のある方はぜひご覧ください。
 
中野 一人だと自分自身の評価軸がなかなか持てないので、できているかどうかの客観的な判断ができません。相談できる人が横にいてもいいし、斜め上にいてもいいので、自分の軸を正してくれる鏡みたいな存在が、フリーランスには必要だと思いますね。
 
増田 そうですね。どんなことでも壁打ちさせてくれる存在は欠かせません。
 
中野 フリーランスになったのに、サラリーマン時代と変わらず、嫌な仕事を続けていては時間がもったいない。定期収入を得るために、まず収入を確保できる仕事を優先するのも大事ですが、それを続けていると、そこから抜け出せなくなってしまいます。
 
私自身の話をすると、フリーランスになる前に、前職を希望退職して 1 年間は自分を見つめ直す期間に充てました。そこで、自分の生活環境を定めて「いくらあればやっていけるのか」、まず最低限の収入目標を決めました。
 
せっかくフリーランスという自由な働き方を選んでいるので、「なぜその仕事を選んだのか」「何がやりたかったのか」を思い出していただいて、「お金」に囚われない働き方をしてほしいと思います。
 
西谷 僕のアドバイスは「1つの仕事に固執しすぎないこと」です。「これしかできない」「他はやらない」とはなから決めていらっしゃる方が多かったように思います。変化の激しいこの時代では、柔軟に対応できることが長く活躍するための必須条件になってきます。増田さんも言っていたように「経験がない」「自信がない」ことが背景にあるんだと思いますが、それなら自信が持てるように経験を積み重ねていけばいいと思うんです。
 
最初は、ボランティアでやってみるのも1つの方法です。私自身、キャリアコンサルタントになるまでは広告ディレクターやライターの経験しかありませんでした。そこでNPOに入って、無償で社会人のキャリア支援の経験を積み、今があります。パラレルキャリアのように複数の領域でキャリアを築けるようになれば、将来に対しての不安も軽減できるでしょう。ぜひ、興味のある領域に積極的にチャレンジしてほしいと思います。
 
三塚 私は、どんな雇用形態の方でも「自分を知ること」が大切だと思います。例えば、新しいことにチャレンジするにも、必要なスキル・経験がかけ離れていたり、目的がないと、なかなか難しいかもしれません。自分の能力や強みを理解したり、あるいは、現在の立ち位置を知り、自分の目的を叶えるために今何が必要なのかを考え、戦略を立てるのもいいでしょう。それに自分で主体的に「選択できる」ようになるためにも、自己理解は欠かせません。
 
西谷 「自分を知ること」は、一人では難しいですよね。
 
三塚 自分を客観的・俯瞰的に見るためにも、家族や友人ではない第三者の存在があってもいいのではと思います。
 
増田 周りの目を気にせずに、安心して、自由に自分のことを話せる相手を見つけることですね。
 
中野 やはり、メンターやキャリアコンサルタント、支援アドバイザーが適任だと思います。そして、自分を知り、やりたいことを見つけて、私のように毎日を楽しく過ごし、キラキラ輝いてほしいですね(笑)。
 
ー今日は、どうもありがとうございました。

フリーランス協会では、フリーランスがいつでも気軽にフリーランス&パラレルキャリア支援アドバイザー(国家資格キャリアコンサルタント有資格者)にアクセスでき、自らのキャリアを見つめて一歩踏み出せるように「フリーランスキャリアドック」を提供しています。 

今回座談会に登場した4名のフリーランス&パラレルキャリア支援アドバイザー以外にも、それぞれ得意領域を持った支援アドバイザーが多数在籍しています。

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執筆者:西谷忠和
ライター兼キャリアコンサルタント
Webメディアなどでキャリア、人事採用、働き方、労務、先端研究などをテーマに記事を執筆中。またキャリアコンサルタントとしてビジネスパーソンの就労・キャリア形成支援、メンタリングを行っている。
■HP


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