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プライドの壁【電子書籍「反対側へのダイアリー」制作日誌】

ふれるま たみ子初めてのエッセイ「反対側へのダイアリー:わたしが見つけた、もうひとつの世界」についての制作背景や想いなどを書き綴っています。

第2章 心に抱えていたもの(2017年10月 前半)
■ 9 育休復帰と皮算用 / 10月12日(木)

 先日ショートしたのは、我が家の預金口座だ。あっちの通帳も、こっちの通帳も、すっからかんになってしまった。やったのは私だ。とどめを刺した時、意外にも心は静かだった。

 夫と結婚して6年。結婚3年目の妊娠と同時に家を買った。この時夫は転職前の会社にいて、当時の年収と出産後の私の仮想年収を合わせ、支払い計画を立てていた。 
 夫の転職と私の出産、蓋を開けてみると毎月10万の赤字生活になっていた。(育休中は正規のお給料じゃないし復帰したら巻き返せるはずだよね。今だけ…)と思い、私は足りない分を貯金から少しずつ切り崩して生活していた。それでも毎月10万の赤字は痛い。一枚目の通帳がすぐに底をついた。会社に復帰しても結局、時短勤務と子供の熱や私の体調不良で欠勤が続き、手取りのお給料も減って、赤字の波を巻き返すことができずにいた。(ヤバイ。なんとかしなきゃ…)
 焦りが募る。

 ついに二枚目の通帳も空っぽになった時、起業という方法を知った。
(どうやらこれしかないかもしれない。でも、闇雲に始めたところで軌道に乗るまでに時間がかかるかもしれない)
 そう思い、一番手をつけたくなかった息子名義の通帳から数十万するコンサル代を引き出して知り合いの起業コンサルに入門した。

 これがちょうど一年前のことである。(本文より)

制作背景:プライドの壁

この頃どうして夫に「家計がピンチだよ」と言えなかったのか。どうして自分1人でなんとかしようとしていたのかと、振り返ってみて思います。特に無駄遣いをしていたわけではなかったので、毎月の支出自体に罪悪感があったわけではなかったんですよね。強いて言えば、2人で家を買うと決めた時に、私がなんの根拠もなく「大丈夫じゃない?私も働くつもりだから、やっていけるよきっと」と後押しした事に、とてつもない責任を感じていたのかもしれません。思えば、その後押しの言葉さえ「大丈夫だよ、私がなんとかする」というニュアンスで言っていたつもりだったのだろうと思います。なんとかなるという気持ちは直感的なものではあったけれど、それだけ自分のことを過大評価していたのかもしれないですね。その根拠のない自信が、育児という人生初めての壁に見事ぶつかり、「こんな予定ではなかった」と1人焦っていたのだと思います。夫に対しても弱さを見せられなかった。そういった意味では自分のプライドにしがみつく、やはり男のような女でした。


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