「スタートアップには入れば、スタートアップ的な人になれる」というわけではないことを、スタートアップを退職するにあたり考える。
「スタートアップに入社する」、というのをよく目にする。
「スタートアップはこういうものだろうから、今の長いものに巻かれる的な大手から転職したらこういうことを得られるだろう、だからスタートアップにいきます!」など。
でも、入ってみないとわからんもんだが、スタートアップって掲げる会社がみんなイメージしているようなキラキラした"スタートアップ的"なわけでもないし、働く人が全員スタートアップぽい人でもない。スタートアップは会社の形態のことを指すのであって、その企業のすごさとか、そこで働く人の姿を指している言葉じゃない。
スタートアップは「忙しくてスピーディーで能力が高いヒトがたくさんいて常に刺激的」、みたいな印象が出回っているが、それを体感して充実感へと昇華しているのは、ある一部の人たちだけで、大抵の人は普通の会社員と同じであるようにみえる。
どういう人がほんとにスタートアップ的かって、
「会社のキーマンになれるくらいの能力がある人」
「他の人に流されず、自分の評価に固執せず、事業のために走れる人」
「そのモチベを保ち続けられる鉄のメンタルの人」
「誰に何を言われようと何も感じない鉄のメンタルの人」
あたりだ。
普通に仕事ができるとかやる気がある、とかはあたりまえ、普通の会社員である。
スタートアップは上場や社会変革などの、ある一定の目的のために全力で走る必要があるので、自然と忙しくなり業務スピードも上がらざるを得ず、有能でないと事業を加速できないから、とにかく優秀な人がほしい、って集めるようになっている。そういう状況が結果として、「スタートアップってなんかすごい」ような印象を生んでいるだけである。
じゃあ実態はどうなんよ、って、スタートアップと定義される全部の会社が印象通りとも限らないし、働く人がみんな有能とも限らない。
在籍していたスタートアップの周りを見渡しても、本当にスタートアップぽい人って、10%いない。「普通の会社でもそれ、同じことやってるよね、きっと。なんでわざわざ転職してきたの、ここにいるの」、という働きぶりの人のが多いのである。(もちろんそれで良い職種もあるので、それで足りる採用もあるけど)
それでもそういう人も「自分はスタートアップで働いてる」と人に言うだろう。いやいや働いてるだけで、スタートアップ適任であるかはまた別の話である。
もしスタートアップ的人材になりたいのなら、今までのことは忘れたほうがいい。経験は活かすものじゃなくこれから積むもの。プライドは邪魔である。自分よりすごい人は山ほどいる(意外といなくて自分の凄さに気づく場合もあるかもしれないけど)。自分の仕事はこれって、勝手に決める枠も邪魔で、なんでもできる・やる意欲のある人のが伸びる。臆するなかれ、悩むなかれ。個人の成績や評価ばかりを気にする人や待遇が重要な人もスタートアップ向きじゃない。目的は個人の成長じゃない、事業の成長と上場なのだ。それが理解できてないと、あとで不満だらけになる。なんで自分は評価されないんだろうとか、あの人はずるい、とか。そのこぼした不満がまた本人の評価を下げて負のスパイラルにはまっていく。好きなことをやれるというイメージがあるけど、それはあくまでそういう立ち位置だったり自分から提案して推進する力がある場合。やりたいことは、自分で動かさないといけない。やってくれる誰かがいるわけじゃない。怖くても自信がなくてもとにかく発言して前に前に進まなくてはいけない。
「スタートアップで働くこと」イコール「スタートアップな人になれる」わけではない。
環境が人をつくるけど、結局は本人がそこで何を一番大事に思って何を吸収するか、その人次第。
とりあえず入れば周りが助けてくれてそれっぽいふうになれる、ということでもない。
もしスタートアップでの成長を感じられなかったら、「スタートアップにいた」という職務経歴がむしろ期待値を上げて、次の会社への転職のときに大変になるのを覚悟した方がいい(なんかすごそう、の期待値を世の中が持っているから)。
スタートアップで何を得て出ていくのか、まで想像しておいた方がいい。スタートアップに定年までいる人も少ないだろう。
会社によるけど、自分のいたところは、こんな感じだったし、いろんな会社があるんだなあと眺めながら、こんなことを思った。
期待に胸を膨らませる以上の刺激(大変さとか)を、もとが普通の人であればあるほど感じて苦しくなるかもしれない。
いいことばかりじゃないことを理解しておけば、苦しさは半減できそうだ。
自分もだいぶ、強くなったなあ。
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