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自立した集団となる【比べない体育Vol.2】

船橋インターナショナルスクールで、『古武術で遊ぼう』のクラスを担当してくださっている玄武術【天根流】代表の方条遼雨さんと共に、比べず、体を育んでいくための場について学びを深めるため、『比べない体育』という講座を開いています。詳しくは、こちらのnote記事へ。

この記事は、2021年2月開催分の講義ノートです。
◆は方条さんのお話、◇は参加者の方のお話です。

◆集団の理想的自立

"個の意思を担保し、連結し、大きな流れを描く"

集団内でトップが方針を示して、それに従っていればうまくいくし、結果も出しやすい。しかし、集団の中にいる人たちは指示されてわかりやすいことに慣れてしまい、考えられない人に育ってしまう。

トップの指示に従うことでうまく機能していたとしても、トップが辞めてしまえば、それが成立しなくなってしまいます。

小成は大成を妨げてしまうのです。

集団が目先の成功しか見えず、その先が見えなくなるとその成長は止まります。

"個々が全体を感じる感性を持って、個人は全体の中で意思をもって動く”

そうすることで個人と集団の境がだんだんとなくなり、自立した集団となっていきます。

【実践】なんとなく覚えていることを出してみよう

前回も参加してくださった方々に、前回の内容について「なんとなく覚えていること」をみんなの前で話す時間を持ちました。

前回の内容はこちら。

◇"場"について話してみよう

<参加者の皆さんより>
・場では、微妙な重力でお互いを惹きつけている
・重力バランスの中で個々が成立していて、集団を作っている
・静かな子にアプローチしていくと均質に働いている関係がうねりに変わることがある
・話しかけてくるおしゃべりな子よりも、思慮深い静かな子の方が面白かったりする
・場ではみな何かしら影響を感じている
・身体で感じないと頭だけでは潮目を読めない

"自分の言いたいことをうまく伝えるためには、潮目をよんで、その場に必要なものが何かを見極めていくことが大切"


◆一人一流儀

私 (方条さん) になろうと思わないで、『一人一流儀』でやっていきましょう。拠り所として、いつでも立ち返ることができるものがあることは、役に立ちますので、この場は立ち返る場としてくださいね。

私がお伝えすることを自分の流儀を展開していくために使って、応用して展開してください。

有機的のれん分けを目指していますので。

◆失敗

大人の言うことを聞かせようとすると馬鹿な子が育ちます。自分で見つけたことをやってみて、失敗している姿さえも場の引力になっていくものです。

甲野先生は、技をとめられる姿も、そこで試行錯誤する様子もそのまま見せてくれます。

”失敗する→その場で考える→工夫している姿を見せる”

大人は完璧な存在なのでしょうか?

子どもと一緒にやって、大人も失敗してみればいいのです。失敗してみて、その場で工夫して、変化していく、そのプロセスを見せることは、活きたお手本になります。大人は、積み重ねてきたアドバンテージがあるので、工夫を伝えられるのです。

◆カオス

カオスは人の中にもあり、せめぎ合っています。どんな人でも、その人の内にあるエネルギーは狂気であり、カオスです。そしてそのエネルギーは、あらゆる可能性を持っていますが、暴走して大怪我したり、悪さをすることもあり得る。そんなエネルギーが溢れているのを押さえつけていくのが、今の教育。そうではなく、人のエネルギーを正しい方向にいかに持っていくかを考えることが必要で、それは永遠の課題なのです。

場において、誰かが誰かを不快にさせるようにはしない、ということは工夫のしどころです。指導者として、「言うことを聞け」と言うのは簡単だけど、権力を使わずに誘導する方法はあるはずなんです。けれど自分の力が及ばない時は使えばいい。使った後にマイナスポイントとなったことを自覚し、次は使わなくていいように考えるんです。

権力を使うことで子どもが言うことを聞いてくれていたら、その指導者の評価はマイナスなんです。

◆人を育てる

1:できることをやる。
2:足りないことがあるなら力を借りる。
3:実践して体験して、勘所がわかるようになってくる。
4:独り立ちする。

これで、人を育てられたことになる。

"立場が人を作る"

例えば、やることが恥ずかしい年長さんに、「年少さんを教えて」と役割を与えると、しっかりやってみたりするのです。そうやって、できることからやっていって育っていくのです。

◆説明する

説明すると自分の中の整理になります。人前で言葉にしてみることで、教えられるようになってくる。それは、考えが整理され、理解が整ってくるからです。

”『教える人』と『教わる人』にはそれぞれの視点がある”

教わる人だけでなく、教える人になってみることで、師匠に対してどうふるまうといいかも分かってきます。学んでいることが完成してから教えるのではなく、出来ることをどんどんやっていけばいいのです。

任されてやってみた人がグダグダだったとしてもいいのです。周りにいる人の重力が働いて、どうやってその人を助けていけばいいのか考え始めます。すると、場が動きはじめる。そうすることで、個々が成熟している集団となっていくのです。

おせっかいは、重力バランスが強く、やってあげようという気持ちが強すぎる。そういう時は、距離をとることが必要です。自分の重力が強いと思う時は、引っ込んで遠くからのサポートに回ることも大切です。


◆互いの視点を知る

会社であれば、会社の中で小さな経営ごっこや、文化祭をやってみるのがいいと思います。キャリアの浅い人をリーダにして、上司を使わせる。「立場が人を作る」ということを使って経営ごっこをしてみれば、会社経営の縮図や場を均すことの縮図が見えてくるでしょう。

個人事業主は、自分で色々アレンジをします。自分の小さな世界を回して、成果を出していきますよね。そのプロセスが、世の中を見せてくれます。

それを体験するために、何かを任せた小さなチームを作り、そのリーダーをメンバーで順に回してやってみるといいでしょう。ちょっとした責任者を体験して、お互いに教え合うことができます。

メンバーがそれぞれメニューを考え、それを提案し合うようになると、個々が考え始めるようになり、新参者でもやってもいいよという場が生まれてくるのです。


◆環境

"失敗は笑い飛ばして、笑いものにはしない"

子どもたちに自分で木に登ってもらう時も、大人はセイフティネットになってあげるくらいの存在でいればいい。そこそこ死ぬくらいのことをさせてもいいのかもしれない。自分でやってみて、皮膚感覚や身体感覚を身に着けていくことも大切なのです。

自分でやってみて、失敗したとしても「失敗は笑い飛ばして、笑いものにはしない」。これは、人が成長する上で大事にしたい、場で共有しておきたい価値観です。笑いものにするとその人は委縮してしまい、次のチャレンジをしなくなってしまう。また、可能性にアプローチすることもしなくなってしまいます。

"大人にも子どもにも、安心して失敗できる環境が必要"

◆緩やかに成長する集団

同じ場で学んで、外に出て実践し、そこでの学びを持ち帰り、学びをシェアして、また外に出て実践する...という循環の中で、一つずつポイントを押さえて成長していく。そんな呼吸をしているような場であれば、全体的に育つことができるのです。

誰でも得意不得意があります。それぞれの持っているピースを出しあったり、分け合っていくことで、だんだんと集団での学びが形になっていくのです。


【実践】動きの要素を育む

動きを単純な構成要素に分解し、一つづつを丁寧に育みます。

◇具体的なトレーニングプランを考える時に意識しておきたいこと。
・ちょっと面白い
・優劣を付けなくていい

違ったレベルで課題を持った人たちが、1つの同じトレーニングを共有することで、どんどん豊かな場になっていきます。

◇質を高めるために優先するべきこと
・単純であること
・使う道具が少ない事

トレーニングする際に手続きが多いほどロスが多くなり、参加するのが難しくなります。やっていて面白い、面白いからやりたいの循環が生まれるものがいいのです。

"根本的な能力は、単純なことに表れてくる。テクニックに表れるのではないのです。"

高めたいのは『運動能力』であって、テクニックを高めたいわけではないのです。

例えば、サッカーをする。サッカーをして何かを育みたいからやるはずなのです。体の機能を高めるとか、生活の充実のためとか。でも、今の多くのスポーツの場で、目的と手段の逆転が起きています。

サッカーを通じて、社会で役立つ何かを育む。それがやるべきことのはず。
根本的能力が高まれば、サッカーに限らず何でも応用できます。

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①1つのボールを足で蹴って、ワンバウンドさせて他の人に渡す
②ボールの数を増やして、同じことをする
③手も使ってOKにする

その場にいる人たちが自分で気づくように誘導していくことが大切。


◆Q&A

Q:力を見せつけたい人が一人いると、他の人が辞めてしまう。そして、力を見せつけたい人が一人が悪者扱いされてしまう。そんなときどうすればいい?

A:100点の正解のない解を探し続けるしかないです。永遠の思考錯誤です。場を均すようにして、押さえつけておとなしくさせるのではなく納得できるように持っていてあげたいですね。

「こういう理由で孤立しちゃうよ」とロジカルにわかりやすく、マンツーマンで力を見せつけたい人に伝えれば聞いてくれるかも。大人は言ってもわからないだろうと子どもを信頼せず、こういうやり方でサポートすることをさぼっていたりします。

身も蓋もないことをきちんと言うことは大事です。中途半端な伝え方だとそこに依存してしまう関係を作ってしまうこともあるので。そして同時に、世の中は君が思うほど君を見ていないことを伝えてあげることも時に大事です。


講師 / 方条遼雨
文責・写真 / あおいえりか

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