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比べず、争わず向上していく体育 【比べない体育Vol.1】

はじめに

2021年1月より、船橋インターナショナルスクールで、『古武術で遊ぼう』のクラスを担当してくださっている玄武術【天根流】代表の方条遼雨さんと共に、比べず、体を育んでいくための場について学びを深めています。

通常の体育とはこういうものだという考えを一旦脇に置いて、一般的な「スポーツ」の常識とは異なる「比べず、争わず向上していく体育」を体感し、学び合います。

この学びに出会った人たちが「体を育む場を作る人」「体育教師」として概念を広めていってくださることを願い、内容をどなたでも参考にできるよう「オープンソース」として公開していこうと思います。

この記事は、2021年1月の講義ノートです。

【比べない体育とは】

◆体育

自然の中で子供が好き勝手に活動しているのであれば、それこそが本能のエクササイズなのでどんどんやればいいのです。けれど、現代はいろんな理由で子どもが自発的に動くような活動を止めてしまい、運動能力の低下が現代社会で著しくなっています。「比べない体育」では、何か体育について人に教えることを学ぶというよりは、もともとその人が持っている野生を引き出すことについて考えていきます。

"教えるとは、おこがましいことなんです。いわゆる教えるというスタンスでいると相手の理解に歪みが生じることがあります。"


◆野生

人間誰にでも狂気のエネルギーはあるのですが、大抵の人はそこに無自覚です。特に子どもはエネルギーの塊。大人になるにつてれ大人の仮面をかぶってそのエネルギーを隠していることも。

狂気のエネルギーは、うまく昇華させればアスリートやアーティストとような活動につながるエネルギーにもなるのです。だから、ぎゅうぎゅう押さえ付けるような指導をするのではなく、どう育んでいくのか、どう暴走させずに活かしていくのかサポートしていくのです。猛獣使いのようなものですね。

そのためには、ダメダメばかり言って止めてしまうのではなく、エネルギーを解放させてあげることも必要。場を作る人は、エネルギーを解放したとしても大きな事故にならないよう安全装置が働くように見守りつつ、命綱になってあげるくらいの立場でいればよいのです。

"狂気のエネルギーをうまく昇華させることができるよう、またこのエネルギーを自分で永遠に微調整しながら社会の中で活かしていけるようにサポートしていきます。"


【比べない体育の場とは】

◆重力

場には、人の影響力が働いています。重力(引力)のようなものです。方条さんの古武術のように、それぞれの人が持っている特技やあり方なども重力(引力)です。影響力の大小や種類は様々です。

自分には特技は何もないと思う人もいるかもしれませんが、寄り添うだけでも意味があり、場の中に影響しているものです。そこにいるだけであるもの、それがその人の重力(引力)です。自分の重力(引力)が小さいと思ったら、他の人の重力(引力)を借りればいいのです。

"その人の存在=影響力=場における重力"

◆重力バランスをならす


場では、ここにしかないものを体験し、ここでしかない場をつくりあげていきます。そのために大切なのが、重力バランスをならすということ。

例えば、講師の言うことを聞く子と暴れる子がいる場で、どうバランスをとるのか。コントロールしようとして、言うことを聞かせるのではなく、暴れる子に対しては、怪我をしなければいいと目を配っておきつつ、ぽつんと1人で動いていない子がいればそちらの方をケアします。ポツンとしている子に何をどうアプローチするか、どう声をかけるのかは、自分が経験してきたことが役に立ってきます。


【比べない体育の場を作る人の在り方

◆権力を行使する

場のカオスを崩壊させないギリギリのところでバランスを取ることが大切ですが、これが難しい。場において、大人の権力を行使することをいかにしないかが、場がうまく回っているかどうかの基準になります。子どもは権力を行使した大人のことを減点しているものです。権力を行使せず、カオスを保ちながら、個々のエネルギーをいかに引き出せるかそれが大切なのです。


◆潮目をよむ

漁師さんのように場の流れの中で、今自分はどこにいるのかを知るということが場を作るために必要です。ただそれだけでもダメで、周りの人はどうなのかも見ることも必要。潮目を読み違えたり、場の結果を確定させようとして動くと、不自然なエネルギーが働いていく。

”何が起こるかわからないから、リアルの場を見て、潮目を見て、状態を察知して、のっていく。"

自分が教えるという考えを初めからから手放して場に望むとよいのです。また、他の人の場が盛り上がっているのであれば、そこに乗っかるのもよいですね。


◆フラットでいること

場において、言うことを聞いてくれる人が70%いたら大成功です。全ての人が言うことを聞いてくれているなら何かがおかしいと思った方がいい。黙っていても、興味や疑問を持ってもらえる人になるといい。

"媚びるでもなく、教えるでもなく、フラットでいることが大切なのです。"

子どもが事実や体験を通して自分の生きる地図を作っている時に、ああしろ、こうしろ、それはだめだなどと余計なものを大人は付け足していないかを考えれてみるといい。

自分に関する固定観念を手放して、場に臨むのです。自分が持っている技術力などの得意なものさえも、傍においておく。場全体を見て、自分が引いた方がいい時には引いていくと重力がフラットになっていくものなので、ひけらかさなくてもいいのです。自分は上等だ、すごい、この力をひけらかしたい、そういう想いを持って場に臨むと断絶が生まれます。

最高の技術を自分が持っているとわかっても、子どもが「やりたくない」と言ったらやめておくのです。


◆現役である

”場を作る側であっても、常に自分が学んでいることを忘れないこと。未完成な人に完成した人が教えてあげる構図ではなく、重力と重力が出会っていく構図を作っていけばよい。そのためには、場を作る人が教えることを初めから手放すとよいのです。"

現役であるとは、常に試行錯誤しているということです。上等な人でなければ伝えられないのでしょうか?失敗を見せることやできない過程を見せることもまた学びとなります。あたかも完璧であるかのように見せないで、できない姿を見せれば良いのです。

大人は神のような、欠点のない、ご大層な存在として振る舞うのではなく、自分の不完全さをいかに見せるかが大切で、それが子供たちの学びになります。そのためには自己観察をして、自分の嘘に気づき、それを修正することが大切なのです。だから現役であることが大切なのです。それでも人は不完全なものなので、心穏やかに事実を受け止めて、修正と反省をすればよいのです。その上で、自分がいいと思うものを固執せずに伝えようとするくらいがいいのです。


【本日の実技】

☆動作の分解 
事例)サーブを打てるようになるためのアプローチ
・その人のサーブの一連の動きを観察する
・それを細分化する
・どこに滞っているところがあるのか見つける
・そこをスムーズにするためのトレーニングを考える
・あそびの要素とともに実践する

写真は、サーブのタイミングを合わせることが課題だった場合の解決例です。

ころころ転がってくるボールにタイミングを合わせて、手を当てる遊びをしているところ。

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【今日の問い】

"あなたにとって体育とは?"

講師 / 方条遼雨
文責・写真 / あおいえりか

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