1on1で考える『単純接触効果』と『自己開示の返報性』
皆さんの会社では1on1は実施されていますか?
Yahoo!が1on1を導入したことで、1on1はさまざまな企業に導入されていきました。書店には、1on1のHow to本が何冊も置いてあります。
『1on1って意味あるの?』と社会人1年目~2年目までは思っていました。
社会人3年目の時、『『単純接触効果』という意味では効果が大きいのでは?』と思い始めました。そして、社会人4年目の時、『『自己開示の返報性』まで考えないと相手の本音を引き出すことはできないため、1on1をより効果的なものにするには『自己開示の返報性』を意識することが重要。』と考えるようになります。
このNOTEは、1on1のやり方や期待できる効果を網羅的に説明するものではありません。1on1される立場だった私が感じた『単純接触効果』と、1on1の効果を高めるための『自己開示の返報性』について説明します。『1on1をとりあえず実施しているけど、実際みんなどう思っているの?』と1on1に懐疑的な方への一助となれば嬉しいです。
✅1on1へ懐疑的だった当時の意見
新卒入社した会社には1on1の文化がありました。毎週1回上司と30分間1対1で面談を行います。たいていの場合、『最近どう?』の上司からの一言で始まりました。
『どうもなにも、毎日仕事の様子をあなたは見ているでしょうが。』と思っていました。1on1では仕事以外のことを話すというルールがあるようですが、上司に対してわざわざプライベートのことを話す気もさらさらありませんでした。
新卒入社した会社は、人がどんどん抜けていくタイミングで管理職にそのしわ寄せがきていたため上司は常に忙しそうな様子でした。『1on1別日にずらしてもいい?』と言われたことは何度もありました。
チームの規模が10人程度になると、30min × 10 = 5hも時間がかかります。
上司は1on1だけで半日潰れます。
『1on1を実施している割には、人がどんどん抜けていっているし、あまり意味がないのでは。』と当時の私は相当懐疑的だったと思います。
『懐疑的なだけではいけない。』と思い『ヤフーの1on1』という本を購入したことを覚えています。『そもそも1on1というものがどんなものなのか』を学ぼうとしていました。そのやり方や期待している効果などが書かれており、『傾聴』、『気づき』などいくつかのキーワードを覚えました。実感としては、その本に書かれていた効用は私の会社の1on1にはなかったと思います。
✅『単純接触効果』は確かにあった
『ほぼ効果はなかった』と思っていますが、1つだけ自信をもって『効果があった。』と言えることがあります。それが、『単純接触効果』です。『単純接触効果』とは、ある刺激に触れれば触れるほどそれを好きになっていく現象のことです。
今まで5人と私が部下という立場で1on1をしました。
1on1をするまで、5人のうち4人に対してプラスもマイナスの感情もありませんでした。残りの1人は大嫌いでした。
大嫌いな1人とは、猛烈にマイナスな感情から1on1がスタートしました。原因としては仕事のできなさでした。決めるべきところが決まっていないし、お客様の期待値コントロールができていない。そんな案件が私に引き継がれたので、その方への印象は最悪でした。
不思議なもので、当初プラスもマイナスの感情もなかった4人に対してはプラスの感情があります。プラスマイナスゼロの状態からプラスに転じました。当初大嫌いだった1人に対してもプラスの感情を持っています。
1on1のみでその効果が出たとは思いませんが、一因であることは確かです。深く話し込んだりすることもなかったと思いますので、『相互理解が深まったから』というよりも『単純接触効果』による結果だと考えています。
1on1をやったことがある方にお聞きします。
1on1の結果、相手へプラスの感情は生まれましたか?
✅離職のなどを早期に検知するには『自己開示の返報性』を使わないとダメ
1on1を実施する側の立場からすると、1on1される側のニーズや思っていることを引き出し、適切に対処することで離職などのリスクを軽減することも期待効果の1つです。
この効果を期待するのであれば『自己開示の返報性』を意識してください。
例を出します。あなたは1on1される側です。
自分自身が転職を考えていると仮定します。
1on1相手の上司に対して、『転職を考えている』と話すことはできますか?
もうすでに転職することが確定している状況であれば、思い切って『実は、』と切り出すことができるでしょう。おそらく、多くの方はフワッと転職を考えている状態で上司に対し『転職も視野に入れているんですよね。』ということは話づらいと思います。
1on1を実施する側の立場からすると、『実は、』と切り出されてからでは対応が遅いのは間違いありません。
では、どのようにすれば、『転職も視野に入れているんですよね。』を引き出せるでしょうか。そこで使えるのが『自己開示の返報性』です。
『自己開示の返報性』とは、相手が自己開示をしてくれたときに、自分も相応の秘密を開示しなければいけない気持ちになる心理現象のことです。
相手に転職の意向があるかどうかを聞き出したい場合は、まず自分自身に転職の意向があるかどうかを話すことで、相手からも同程度の情報を引き出すことができます。
1on1を実施する側に転職の意向がなくてもかまいません。
例えば、『マネージャーをやっていると、どのタイミングで転職するかということは常に考えているんだよね。メンバーだった時代に考えている転職とマネージャーになった後に考える転職ではやはり要素が異なってくるんだよね。例えば・・・』のように上司から言われたとき、『この人は自分の転職軸について説明してくれている。自分の転職軸についても話そう。』と転職への情報を開示することへのハードルが低くなりませんか?
『自己開示の返報性』は恋愛という文脈でよく出てくる心理学の用語です。
相手の好みや恋愛遍歴について情報を得たいときに、まずこちらからその情報を開示することによって相手から情報を引き出すことで使われたりします。
『自己開示の返報性』は1on1においても有用なものです。
ぜひ使ってみてください。
✅まとめ
1on1を続けることによって『単純接触効果』が期待できます。
『単純接触効果』でプラスの感情が生まれれば仕事関係においても良好な関係が築ける可能性が高いでしょう。
1on1で相手から深い部分の情報を引き出したいときは、『自己開示の返報性』を意識して、まずこちらから同程度の情報を話してみてください。
目的を意識して1on1を実施するのであれば、費用対効果は見合っていると思います。
しかし、『組織としてやらないといけないから。』というやらされ感覚の場合は、効果が期待できず、(成果を評価しないため効果が分からないというのが正確かも。)時間の無駄です。1on1を廃止するという選択でも良いと思います。
いかがでしたでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。