仕事をしない僕、絶望のパラサイト
全然パラサかない。
というのも、奴らは普通にめちゃくちゃ仕事をしている。
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映画のwebマガジン「フラスコ飯店」店主の川合です。
前置きをしておくと、この映画では「丘の上の豪邸 vs 半地下の棲家」という上下の構図がそっくりそのまま「上流階級 vs 下層市民」とレイヤードされている――だとか、現代の韓国社会情勢を色濃く反映していて小ネタも抜群――だとか、スタッフの労働環境もまた固く守られているのでより一層ポン・ジュノ監督の主張に説得力が増す――だとか、コスプレが「インディアン」だったのにも意味が隠されていて、そもそもアメリカ先住民は――だとか、そういう話は一切しないことになります。
この種の論考めいた肉厚の記事を期待していた読者のみなさまはですね、どうか今回だけは見逃していただければ幸いです。
完全に乗り遅れてしまったのです。機会があればいつかまた書くことにします。すみません。今日はそういうお話です。
頼むから仕事をしないでくれ
話を戻します。
この『パラサイト』という映画、どうにもこうにも登場人物は全然パラサかないのです。
というのも、普通にめちゃくちゃ仕事をしている。
パラサイト。原題は「기생충」つまり「寄生獣」です。基本的に仕事をしたくない僕(*)は楽しみにしていました。さあさあ、どんなノンビリ仕事さぼりムービーが見れるのだと。どんなパラサきムーブを見せてくれるのか、と。
(*編集部注)誰だってそうですよ。それはそう。
実際は違いました。仕事してる。すごいみんな仕事してるではありませんか。見ていない人のためにも改めて簡単にあらすじを紹介すると、
①貧乏家族が
②お金持ちの家のお手伝いの仕事を
③上手に工作して奪い取る
という話です。正確には違うけれど、概ねこんな感じ。家庭教師、家政婦、お抱え運転手、という職業があるのですが、それぞれの職業をしっかりきっちりこなしているわけですよ。
なんなら、「奪う」ための秘密作戦――いうてみたら就活までしっかりこなしているわけ。
……有能じゃん。
全然パラサイトしてないじゃん。
頼むよ。
パラサけよ。
お願いだから。
なあ
なあって
斬新なアイディアを、的確なスケジューリングで、華麗にチームで連携を取りながら、完璧にこなすな。
そうなのです、この映画は「仮に過ぎれた能力があっても、世帯単位で転落してしまうとチート技でも使わない限り這い上がるのは難しい険しい傾斜角の韓国社会」が反映されていたのです。あるいは「ちょっと暢気すぎるように見える人であっても、上流にいる限りはその資本力を元手に再生産でるし、できちゃう社会」を対象化して作られたもの。よく考えたら一番仕事をしていなさそうに見える上流側の奥さんですらも、家事こそできないが家庭内の経理と人事をこなしている。あと遊び半分程度になら英語だって喋れる。多分その気になればそこそこ話せるはずです。
頼む!パラサけ!!頼む!!
悲嘆な心の叫びはついぞ届くことなく幕は下りた。
各々がこれまで生きてきた中で持ちうる技術や知恵を結集し、総動員して幕は下りたのだ。それだけ手を尽くしても報われないものは報われない、というお話だったのでした。
頼むから仕事ができる人間にしてくれ
幕が下りると、今度は僕の現実が再びはじまる。
さあ、僕はどうだろうか。フラスコ飯店というwebマガジンの編集長としての役割を果たしているだろうか。お給料分の仕事をしているだろうか。自分にしか出来ない役割を見出し、その役を果たすために戦略的な行動をとっているだろうか。いけてる?僕、これほんまにいけてる?1年前に書いた計画書を見返す。未達の目標のまあ多いこと多いこと。どうなるフラスコ、どうするよ。
いけてる?これほんまにいけてんのか?
書いている今もグルグルと思考が淀む。うっかり時間を過ごしてしまいパラサイトの考察系記事を書く機会をがっぽり損ってしまったけれど、やりようはいくらでもあったはずだ。それだけではない。平素より積み重なった慢心に、憂鬱の利子が付いて返ってきた。
もうそろそろ、パラサいてられない。仕事をしよう。
まあ、そうやね、このコーヒー飲み終わってから。
ここ最近のフラスコ飯店の記事
「大人になるスイッチ」なんてどこにもなく、なりたくたって急に大人になんてなれない。人生はカットではない、切り替わらない、ひと続きで、じわじわ滲んでゆくものなのだ。
というパンチラインに打たれて無事死亡。なるほどね。ありがたいお言葉です。
後悔するのはわかっていながら「あと5分……」なんて安易な欲望に身を任せ、二度寝という激安の幸せを掴んでしまう。
ぼくは結局このコラムを書き終えた頃、またタバコに火をつけるだろう。
人に嫌がられながら身体を脅かし、手軽な目先の快楽を求めてしまうに違いない。
「おれは一体何をやってんだろう……」
大人になれないまま大人になるとこうなってしまうんですよね。金城さんはなんでこんなしんどい感情を言語化してしまったのか。世が世ならガリレオみたいに異端扱いされているに違いない。
本日は以上になります。
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3月18日 追記:なんとか書けました!!!!!
こんな泣き言を書いている場合ではない!
と自分に鞭打って『パラサイト』で記事を書きました!
「あのラスト、もしかしてハッピーエンドでは?」という視点で記事を書いてみました。泣きながら書いただけあって3月の人気記事になりそうな予感です。よろしければこちらも是非ご贔屓によろしくお願いします。
〈この記事を読む〉
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