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薔薇と棘と

だいぶ前のこと、
「オールドローズ」という、その響きに憧れ、
通販で買って、植えてみた苗。
その翌年、濃いピンク色の花を咲かせました。

(小さい写真だけど、花は大輪でした)


それから、毎年のように、次々と開いては、
楽しませてくれたのだけど、ある年の春から
ふっつり、花芽がつかなくなりました。
肥料をやっても、何をしても。

今も健在で、枝は伸びていますが、常時、葉っぱのみ・・・(TT)
初夏の風にゆれる、あたらしい葉たちも
それはそれで、爽やかではありますが。。

バラにはありがちなこと? ―― けど、
いつか、思い出したように、咲いてくれるのではないか。
いまだ捨てきれぬ、淡い期待。


そんな、先ごろ、

敷地の隅っこに、バラのような花が咲きました。
種を蒔いた覚えもないし、勝手に生えたようです。


調べたところ、「野いばら」。

「野いばら」は、日本の山野に自生するバラ科の花。
 鋭いトゲがあるため、「野茨(いばら)」と名付けられたそう。
「野ばら」とも呼ばれます。

人工的な交配によって、昨今、増え続けるバラの品種――。
バラ園に足を運べば、気が遠くなる程の
種類と華やかさ(香りも)で、あふれかえっています。

そんなご時世に、この子は、天然の魅力。
何だか、ゆかしく、ノスタルジック。
自然な愛らしさに、しばし、その場に釘付けとなりました。


野ばらといえば、シューベルトの「野ばら」。
音楽の教科書にあったような気もするけれど、
ドイツの文豪・ゲーテの詩だったんですねー。


「野ばら」
   

童はみたり 野なかの薔薇
清らに咲ける その色めでつ

飽かずながむ
くれないにおう 野なかの薔薇

手折りてゆかん 野なかの薔薇
手折らば手折れ 思い出ぐさに

君を刺さん
くれないにおう 野なかの薔薇

童は折りぬ 野なかの薔薇
折られてあわれ 清らの色香

永遠にあせぬ
くれないにおう 野なかの薔薇


(作詞:ゲーテ  作曲:シューベルト 訳詞:近藤朔風)

改めて鑑賞すれば
なんて、懐古的で、ロマンあふるる訳詞なんでしょう。

動画サイトで、久々に聴いてもみたけれど
抒情歌って、やっぱり、なんかホッとします。
乳白色のような、あたたかな色が混ざり、
古き良き時代みたいな、日なたの匂いが漂ってくるよう。
たまにはいいもんですね~。


ところで・・・

バラのトゲって、何のためにあるのでしょうか?

「外敵から身を守るため」と、私は勝手に思っていました。
でも、虫にとっては、トゲはあまりに大きく
ほとんど影響ないのだそう。

草食動物は、トゲがあろうがなかろうが
実(ローズヒップ)などをたやすく食べちゃうそうです。

答えは・・・

壁などにひっかけて、這い上がるため。
そうやって、光の方向にどんどん伸びていくためでした。

もう一つ、茎を補助する(強くする)働きもあるんだとか。
だから、若いバラほど、しっかりとした痛いトゲがあるらしいです。
(知らないのは、もしや私だけ?)


遠い昔、実家に咲くバラのトゲを取り、
裏にツバをつけ、鼻のてっぺんにトゲをくっつけて、
遊んだことを思い出します。
今の子供はそんな他愛もない遊び、しないのかな?

酸味のあるような、青々とした飛沫。
それが、すぅっと鼻孔に流れ込んできて、
あんな小さいトゲであっても、堂々とした、
えらく力強い生命力の香りがした。そんな記憶があります。


つまるところ、バラのトゲというのは、
自己防衛とか、回りを寄せつけないためにあるのではなく
懸命に光に向かって進もうとする性質 (意識) の現れ――。

そんな純然たる理由を知って、その健気さや、
内奥にあるワンネス的な知性をおもうとき、
バラや、植物全体への親しみも、いっそ
増すような気がするのでありました。


お読み下さり、ありがとうございます!



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