見出し画像

2023年8月に読んだ、おすすめの本 その2

8月は盆休みもあり、いつもより多く33冊読みました。その中で気に入った本とその紹介をしてく第2回です。

🌟発売済み「絵本/児童文学/JA文学 等」

「波うちぎわのシアン」 斉藤倫 著

子供はみな産まれる前の、母のお腹の中での事を覚えてる。そう、普段は忘れてるけど…… 開かない左の拳の音を聞かせることで、それを思い出させてくれるシアンの物語。子供達も、大人も、みんなキラキラ輝いていた。自分を産んだ母の、それを支える父の想いを知って。
そして、シアンを見守る猫のカモメ。彼女はこれからも、みんなを見守っていくのだろう。
斉藤倫先生の本はいつも不思議で素敵。そして、まめふく先生の絵が優しいなぁ。

「てのひらに未来」 工藤純子 著

父の町工場で住み込身で働く天馬。「あたしは、いいよ」の一言で彼の運命を決めてしまった事を気にする琴葉。ふたりの関係の変化を中心に、 金属加工に夢を見出す来し方や、経営難でも工場継続を貫く父の意思などが綴られていく。これは、細やかなやり取りの様を通して、淡い思いや強い願いをしっかりと伝えてくれる物語。
時たま入るJアラートの放送や、長野県にある戦没画学生慰霊美術館「無言館」のこと、更に戦争にまつわる工場の由来とそれを知る父の信念などが出てくるこの本を、琴葉と同じ世代に(特にこの時期に)読んでもらいたくなって、終戦記念日に久しぶりに再読した。

「イイズナくんは今日も」 櫻いいよ 著

人とうまく交われない中学生の飯綱。彼は、じつは妖怪イイズナの子孫。そんな飯綱が、彼の力を知った春日と供に、持っているわずかなその力をそっと使いながら、様々な人間関係を円滑にする手伝いをしていく。また、春日との関わりの中で飯綱自身も変わっていく。それを中々認めたくない飯綱だが、それでも徐々に。また、飯綱への印象が最初は「可愛い」だった春日も、だんだんと人と人の「縁」とは何かを考えていく。それぞれの様子が微笑ましく、また頼もしくなっていく。
そして、読み手にも大切な事を問いかけてくる。

「人魚の夏」 嘉成晴香 著
5年生に突然転校してきた夏の正体は、じつは陸に一時上がっている人魚の子だと知るのは、同級生の知里だけ。合唱コンクールを目指す学級で、夏の秘密を隠そうと頑張る知里。最初はぎくしゃくしていた学級も、だんだんその優しい繋がり広がっていく。すると、それぞれの良い所が見えてくる。そして、決して歌うことをしなかった夏は、コンクール本番で……
これから訪れる思春期で自ら性別を決める人魚の子供を巡る、小学生達の物語。性の多様性を扱う、こんな素敵な物語があるとは。
さらにこの〝前世代編〟、知里の母が小学生の時に書いた物語、夏の親である春との出会いについての「人魚の春」。それを読んでみたいな。

「風の丘のルルー⑤ 魔女のルルーと赤い星の杖」 村山早紀 著
120歳でも見た目は12歳のルルー。最初の頃は、正確は見た目の12歳に近かったが、様々な人とのふれあいの中で変わってきた。更に、「病を癒やす湯良き魔女」としても知られるようになった。
でもたまには、だれも知らないところで過ごしてみたくなるもの。だからルルーは、水晶の街に赴いて一人の少女としてくらしてみる。でも、古の魔女や魔法使いの人々を思う真摯な生き様に触れることで、ルルーもまた死力を尽くしていく。彼女はまた一歩一歩進んでいく。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?