新アルバム”Brought Back Without Souvenirs “を発表する→(yajirushi)にインタビュー:その2)
―アルバムに込められたメッセージは?
「それはとてもいい質問だね。答えは、メッセージなどない。ただ、曲が見せるものを見てもらいたい。
俺たちが常に考えているのは、聴く人のタイム感をぐにゃぐにゃにしたい、ってことなんだ。宇宙空間の『ワームホール』みたいなものだね。予期せぬところでテンポが変わって、「あれっ?」ってなってくれたら成功なんだ。俺たちは普段、「こうすればこうなる」という世界に住んでいるし、実際2,3日後のことは大体予測できるし、実際そうなるように予定を組んでいる。それはとても普通のことで、日常なんだけど、それを俺たちがありのままに表現したら、アートの意味がない、とは思っているんだ。違った世界にリスナーをいざなうこと。これが、俺たちがある曲を世に出すか否かの基準なんだ。」
「だからといって、それがあまりにも実際の世の中とかけ離れていると、リスナーは怖がってしまうし、作る俺たちもわけがわからなくなる。現実とのつながりは、重要だよ。だけど、ゲートをくぐったら、そこは異世界であり、リスナーはそれに驚く。そんなアルバムにしたかったんだ。」
―現在の世界の危機的状況と、このアルバムの間に何らかの接点はあるのか?
「そうだね。一見してないと思えるかもしれない。だけど、さっき言った「驚く」というところで、実はこのアルバムは、世界の現状に重要な提言をしているともいえる。」
「俺たちのアルバムは、(特に日本の)リスナーにとっては、異文化、異世界に映るだろう。なにせ、ミッシェルやブランキーみたいなフォーマットではないからね。ましてAC/DCからは程遠い。でも、「ん?へんだな」って思って、そのあと聴く者が俺たちを遠ざけたら、それは分断の始まりなんだ。驚いて、なぜ?と思って、DIGする。これが多様性を認めるということだし、異文化圏のコミュニケーションということだと思うんだ。そういう意味では、このアルバムがある種の踏み絵になっていると思う。つまり、俺たちのメッセージは、このアルバムの存在そのものなんだ。異文化の受容。大げさに言えば、こうだね。」
「現在のロックをめぐる状況は、明らかに不健全だと思う。というか、聴覚芸術状況全体が不健全だ。それは、ビジネスの世界というよりは、作り手の心象が不健全だと思う。メロディがいい、歌声がいい、魂がいい、みたいな音楽の愛で方、考え方は、もう何の意味もないと思う。だけど作り手の大半は、そのことで満足しているよね。それじゃあダメなんだ。そういった「良いメロディ・良い歌詞」的なものはとっくに定型化されていて、微々たるバリエーションしかない。それは、音楽の硬直化、保守化だと思うし、そのフォーマットから外れる音楽を、劣ったものとして排除したがる。みんな、自分の音楽的ヴィジョンが正しいなんて、思わないほうがいいよ。自分の知らない世界があって、その世界に比べたら、自分の理想なんてちっぽけなものだ、って思うことから、ミュージシャンは出発すべきだと思う。そういった煮凝った考えが拡大したのが、今の戦争状況の原因になってもいる、と俺は思う。ロックの果たすべき役割は、ロックの定型から率先して逸脱することなんだよ。」
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