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美術館へ行こう!〜 『ブルーピリオド』とブリューゲル展

Kacotam(カコタム)の学習支援で関わった子どもたちと一緒に、美術館へ行ったことがあります。
それが今回お話する「美術館へ行こう!」企画です。
そもそものきっかけは本屋である一冊の漫画に出会ったことでした。

『ブルーピリオド』との出会い

本屋の棚から棚へと歩いているとき、ふと見えた青と赤に立ち止まりました。
新刊コーナーでもなく、背表紙ばかりが並ぶ中にひとつ、表紙がわかるように置いてあったのがその本。
『ブルーピリオド』1巻でした。

自分は、あまり新しい漫画家さんに手を出すことがありません。
これも、帯を見て「優等生が美術に目覚めて美大を目指す話なんだな」とはわかったものの、「面白いか確信が持てないし、気になるけど買うのはやめておこう」と棚に戻しました。

けれど、家に帰った後もなんだかうずうずします。
あの表紙が。青と赤が。脳裏にチラついて離れないのです。

結局次の日、同じ本屋に行ってえいやっと購入していました。
読み終わった後はもう、「ああ、よく見つけた!よく買った自分!」と自分自身に拍手をしてしまいました。ジャケット買いの醍醐味ですね(笑)。
でも、おそらくは表紙の持っている力がずば抜けてすごかったのだと思います(あと表が見えるように置いてくれた店員さんに感謝)。

ストーリーも抜群に面白く、見開きのページ使い方が印象的です。キャラクターたちも人間味溢れています。
加えて美術のことがよくわかる!

自分が「そうだったのか!」と思ったのは、2巻の構図のお話。
「名画は5つの幾何学形態で分割できる」というもの。
○、△、X、S、□の構図5つが紹介されていました。

カコタムの学習支援で子どもと関わっているときにも、絵が好きだという子に構図の話をして、「君の名は。」のポスターの画像を見ながら、「ふたりが□と□になってる」「彗星はXだ!」「△があるとも言えるかも」と盛り上がったり。

そうしているうちに、子どもたちと実際に美術館に行けたら楽しいだろうな、と思うように。
折しも、ちょうど宣伝していた美術展がありました。札幌芸術の森で行われる、ブリューゲル展です。

下見としおり作り

元々美術館へ行くのは趣味なのですが、まずは自分でブリューゲル展へ見に行ってみようと、下見へ赴きました。子どもたちを連れていくので、ルートや時間を確認。
美術館内では絵画を見ながら、ブリューゲルの絵は色鮮やかなので色相環の話ができそう!などと考えます。
また、構図の話ができそう!と気づきました。
例えば撮影OKだったこの絵。

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人々の流れの中になんとなく……S字が見えませんか?
当日の動き、美術館でのマナーや、ブリューゲルについて、そして構図についての解説を付け加え、イラストを描いて……当日のしおりを作成しました。

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しおりの作成にあたっては以下の本を参考にしました!
絵画を見るとき「自分へ10個の質問をしてみよう」というのがあってとてもいいなあと思い、引用しました。
「何が見える?」「この作品を見てどう感じる?」などの最後に「自分の部屋にこの作品をかざりたい?」という質問があったのです。

『ブルーピリオド』の3巻で、主人公は描くのは好きだけど見るのは苦手だと考えながら美術館を回ります。そのときに「買いつけごっこをしながら見るのはどうか」と提案されます。
部屋にかざるつもり、買うつもり、自分のものにするつもりで絵を見ると見方が変わってくる。
遠い時代の遠い国で描かれた絵でも、その質問を考えるときには自分ごととして考えられて身近に感じられる!と思ったのです。

いよいよブリューゲル展へ!

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当日、子どもたちも時間通り集まり、ブリューゲル展へと向かいました。
最初にしおりを渡し、簡単に説明。
ひとりの女の子は一生懸命、私の説明にメモも取ってくれていました。

いよいよ中に入り、絵を見ていきます。
早速赤い山と青い山が描かれた絵に、「あ!本当に近くの方が赤で遠くの方が青で塗ってある!」としおりで紹介した色彩遠近法を発見してくれました。
「△があるよ!」
「こっちは○だ!」
とひとつひとつの絵をじっくり見て、構図を探します。
ぱぱっと見れば30分もかかりませんが、1時間ほどかけて美術展を回りました。
みんながとても丁寧に見てくれたことが本当に嬉しかったです。

帰り道にて

終わって、バス停への道を歩いていたときのことでした。
子どもが橋の上で立ち止まりました。
「あ、s字があるよ」

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このとき、傲慢かもしれないけれど、違う世界の見え方を教えることができたのかもしれない、と思えました。

この企画は「体験カコタム」のひとつとして行ったものです。

「子どものやりたいをカタチにする」カタチ化とは違って、子どもから出てきたわけではない、メンバーからの発案で行うものになっています。
それゆえ、ひとりよがりではないだろうか?ということがとても心配でした。
けれど、美術館は、子どものうちは連れて行ってもらわないと行く機会のない場所ではないかと思うのです。
子どもから出てきたわけではないことでも、体験すれば子どもたちはたくさんのことを感じてくれるという確信を持てた企画でした。

私に機会を与えてくれた、『ブルーピリオド』は現在7巻まで出ています。ぜひぜひ読んでみてください。
名言がたくさんあるのですが、私が一番刺さったのは1巻の先生の言葉です。

「頑張れない子は、好きなことがない子でしたよ」

好きなことがある子は頑張れる、を逆に言っただけでこうも残酷に響くとは。
この言葉がとてもショックで……。

「じゃあ、自分の中をいくら探しても好きなものがなかったらどうしたらいいの?」


そう思ったのです。
だからこそ、おせっかいでもあるこの体験カコタムのような企画も必要なんだと思っています。

最後に、しおりの最終ページに載せたメッセージを掲載します。

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読んでいただき、ありがとうございました!

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