見出し画像

本日の本請け(2024.6月)

読書とお菓子と飲み物の記録。

『ある行旅死亡人の物語』武田惇志、伊藤亜衣(毎日新聞出版)

このところ、積読チャンネルというYoutubeの更新を楽しみにしています。
とはいえ紹介されていて気になった本があっても、ついつい手軽なKindleで購入してしまっていたんですが、ついに、ちゃんとVALUE BOOKSさんで購入したのがこの本。

ラスクいただくことがなぜか続きたくさんの種類が集まった

最初はこのサムネが怖すぎて「私の好きなタイプの本じゃない、きっと」と避けてたんですが、Youtubeを再生しっぱなしにしていたら勝手に再生され始め、話を聞くうちに「えー!気になる!絶対面白い!」と思って購入。でもこのサムネ、たぶんホラーとかエグい話が好きな人が見るだろうなとこれにした意図もちょっとわかる。

久しぶりに一気読みしちゃいました。

とはいえ本でなくても、記事になったものなので、検索すると出てきます。いろいろな媒体でとりあえず大枠は辿れるかと。

うーん、でも、本で読むとわかる、この著者お二人の心の機微がすごいよかった。
取材をしていく中でたまにある気遣いにほろりとしたところ、ことの真相を追いかける中で、亡くなってるはずの女性を、通行人の中に発見した気持ちになって声をかけてしまうところ。記者、仕事を超えたあたりの描写に、本筋ではないはずなのになんだかぐっと来てしまう。

読みながら、「本人はそっとしておいてほしかったんじゃないかな」なんてことも過ぎってしまって、「面白く」読んでしまっている自分にちょっぴり罪悪感を感じたりもしたんだけど……でも、そのことについても著者ふたりが少しあとがきで触れています。

その、あとがきのラストの一文がよくて。なんだか泣きそうになってしまった。

人って、死んでも誰かと出会うことも、関係が築かれることもあるんだなと思ってしまって感じたことのない感情が渦巻いた。

私は学生時代小説ばかりを読んで本というものを知った……もっと言うと「悟った」気持ちになっていたんだけど、本っていろいろなものがあるんだなと、積読チャンネルを見ていると思います。学校で勧められる本や学校の図書館にある本って、絵本、小説、物語、伝記、図鑑……みたいな感じで、それで本に興味なくなっちゃった人もいるんじゃないのかな。私が知らない面白い本、たくさんあるんだろうなと思うとちょっとわくわく。

積読チャンネルの出演者、飯田さんのnoteもいい。

『煙草の煙、旅の記憶』丸山ゴンザレス(産業編集センター)

こちらも積読チャンネルで知った本。

煙草は人生において吸ったことはないし、この先も吸うことはないんですが、それとは別として実は「煙草を吸うこと」についてはなんだか謎のエモさを感じております。
煙や香りについて、他者に影響を与えることは気になるのですが、実は自分ひとりなら気になりません。誰とも会う予定がないときに、あえて喫煙可の喫茶店に行って吸ってる人をちらりと観察したり。でも最近はずいぶんと減ってしまって残念だったりして。
一度、人生について心の底から「やってらんね〜!」ってなったときに「煙草吸いてえ〜!」ってなったことがあって。でも吸ったことはないので、その衝動が喫煙者が感じる煙草を吸いたいという気持ちと重なるものなのかは一生謎なのですが。

さくらんぼを食べました しかし本に似合わな過ぎた(笑)

そんなわけで、面白く読みました。
テレビ番組のクレイジージャーニーは一度か二度くらい見たことがあるくらいだったのですが、ヒリヒリした臨場感がありました。煙草が保たせる演出、間、そして文章がうまい。自分が夜の街をヒヤヒヤしながら歩いてるみたい。

家で読んでしまったんですが、これはまた喫煙可の喫茶店に行って読み返したい。

『三淵嘉子と家庭裁判所』清永聡(日本評論社)

朝ドラ「虎に翼」が面白くて、モデルの人のことが知りたいなと思って本を探しました。
いろいろ出ているけれど、ドラマの監修をしている人の本がよかろうと購入。

暑い日だったためレモンスカッシュにした

興味深かったです。
「家庭裁判所」ってそりゃあ知っていますが、社会の公民の教科書で出てきて、太字ってほどでもなくて、テストでもそんなに出ないという印象くらいしかありませんでした。
設立までにこんなにドラマがあり、その後も波乱があったとは!

読み進めていて「戦後に身寄りのない少年がたくさんいた」という記述を見てそりゃそうだよな……と思いましたが、そんなことに思い至ったことがなかったことに気づいてはっとしました。
「蛍の墓」の主人公きょうだいはそういった境遇でしたが、戦後まで生き残っていないですし、考えたことがなかったことに気がついたというか。

何度も同じエピソードが出てきて、案外記録に残ってることが少ないのかもなんて思いました。特に戦後は悠長に記録残してる場合ではなかっただろうし……そういう意味では最後にある家庭裁判所の設立当時を振り返った座談会などは貴重なのかもしれませんが、これは読んでいるのがちょっと辛かったです(笑)。

『三淵嘉子・中田正子・久米愛 日本初の女性法律家たち』佐賀千惠美(日本評論社)

朝ドラのモデルになった方の本をもう一冊。
初めて女性で司法試験に受かった三人の人柄や、人生が綴られています。著者の佐賀さんも弁護士で、司法試験を受ける人向けの原稿を依頼されたときに女性で初めての弁護士や裁判官について質問され答えられなかったため、あれ?と思って調べ始めたのがきっかけだそう。

ほうじ茶いちごラテ

三人のうちのひとりに、生前インタビューしたものや、周囲の人に話を聞いたもので構成されています。人となりや生きた時代の空気感がよくわかる。
朝ドラになることで、三淵さんが世間的にかなりフューチャーされているけれど、他のおふたりの話も興味深い。鳥取で過ごした中田さん、他にもさまざまな活動に関わっていた久米さん。

朝ドラはシナリオ集がAmazonで配信されていて、月曜日になったら先週の分が読めるので楽しみにしています。けっこうボリュームがあるのでカットされたところ、逆に残されたところを見ているとこれなくても伝わると判断されたのか、逆にここ付け足したのか、と面白いです。

『シャーロック・ホームズの凱旋』森見登美彦(中央公論新社)

本屋さんで見て、森未登美彦さんの新刊かつタイトルにシャーロック・ホームズと目にしてしまったので読みたいなと思っていたのですが、ある日えいっと購入した本。
積読にしていたのですが手を出しました。

ドーナツを買いに行った日でした

最初に「私はメアリ・モースタン嬢と結婚して念願の診療所を下鴨神社界隈に……」まで読んで「なんて?????」となってしまいました(笑)。
よく見るとその前にも「寺町通り」とか「祇園祭」とか「シャーロック・ホームズ」ではありえないような文言が出てきていました。いかにちゃんと読まずスルーしてるか思い知っていしまった。

そう、この物語の舞台は京都。
何が何やらと思いつつ「まあ……森見登美彦だもんな……そりゃ京都か……」と謎の納得を自分にさせて読み進めていきました。

舞台が京都というのも含めて「どういう話なんだ」という思いが拭えずのろのろと読んでいましたが、そんなとき見つけたのがこのインタビュー。

後半に行くにつれて『熱帯』のようになっていく、というふうに書かれていて『熱帯』が好きな私は大興奮!一気に読み終わってしまいました。

ミステリの最後には「これが真実です」とお出しされるけれど、よくミステリってどんでん返しが起こって「隠された真実」が暴露させることもあって。
真実の次に真・真実があるとするとどこで「本当の真の真の真実」が決まるのかっていうともしかしたらずっとわからなくて、それを「これこそが真実」とできるのが「名探偵」だなと思うんだけれども。
「名探偵」の役割って本当に孤独だなと。
でも、今、こんな五里霧中の世の中で、誰もが「これが真実だよ」と言ってくれる人を待っているような気がする。だからこの話にこんなにも惹かれるのかもな。

すごく好きでした。私が「物語」が好きな理由がこの一冊にすごく詰まっていました!

『言語哲学がはじまる』野矢茂樹(岩波新書)

ゆる言語学ラジオを見ていて興味を持ったので読んでみた本。
電子で購入したのですが、失敗した。全て画像なんです……。Kindleではいちいち拡大しなければならず、結局iPadで読みました。紙で買えばよかった。というか、購入前に見本を見て確認すればよかった。内容は面白かったのに集中できなかった。

猫の例えが何度も出てきたので

解説をしつつ、語り手本人が「今こう思ったでしょう?」と問いを提示しそれに答えて、解説をしてというかたちを繰り返します。

手法として読みやすいかたちを取っているし、序盤面白いぞ!と思って読んでいたのですが、途中でわかんないと思って前に戻ってを繰り返し……おそらく二回分くらい読んで一応読み通したんですが読んでいない誰かに内容を説明することはできないなと思いました(笑)。ここに書けることも少ない。また読む、または他の本を読みたいと思います……。

お菓子はいただいた宮城のお土産でした。

『政治家の酒癖 世界を動かしてきた酒飲みたち』栗下直也(平凡社新書)

これも、上の積読チャンネルで紹介されていた本です。
政治家と酒のエピソードを列挙しているのですが、それぞれのインパクトもさることながら面白いのは酒を飲まない人のエピソードも最後にあること。

お酒用意して読もう!と思って準備したのですが、結局この日は序文を読んだだけで終わりました(笑)。私には飲酒しながらの読書は向いてない。

撮り方を模索しているうちに泡がなくなってしまった

酔ったときが人の本性なのか、酔ってなくても本性なのか。
特にスターリンがすごかった……。
最後に紹介されているプーチンについて「人間は酒を飲まなくても合理的な判断をするとは限らない」とあるのが皮肉。

こんなにも長い間、お酒があるのが当たり前、飲める方がすごいという常識の中で人々は生きてきたんだな。
これを読んでいるときにちょうど「ソーバーキュリアス」という言葉を知りました。

自分も最近は特別なことがなければ飲まないようになったのですが、何か失敗したときに「酔ってたしな〜」と思って仕方ないなと思うようにしていたこともあった気がして。さて、それがなくなったときに素直に自分という人間はこういうものだと認められるのかなと思うと、薄寒い気持ちにも少し、なります。

『あとがきはまだ 俵万智選歌集』俵万智、渡辺祐真(短歌研究社)

本屋さんに行ったときに、この間読んだ『みんなで読む源氏物語』の渡辺さんの名前が目に入ってきてあっ!となりました。
俵さんの短歌集の中から選歌されたものと、解説が載っています。

ブルーベリーレアチーズのアイス

短歌集読んでいてもふわーっと読み終わることが多くて、それはそれで面白いのですが、こうやって解説がついているとそれを手がかりにいろいろ自分でもさらに考えることができるのでとっても良かったです。

私、俵さんのことはもちろんサラダ記念日の短歌で知っていましたし、ドキュメンタリーのCMで「俵万智が作ったサラダだぞって言ったらみんなありがたがるのに息子には全然刺さらない」みたいなことを言っていて笑っちゃったことがあったんですが、彼女の歩んできた道を全然知らなかったことに気がつきました。

年代によって詠まれる歌、変わる視点、私たちも感じた災害による不自由。

この歌が好きでした。

読みやすく覚えやすくて感じよく平凡すぎず非凡すぎぬ名

お子さんの名前を考えているんだろうけど、ゴロが良くて言いたくなっちゃう。

『成瀬は信じた道をいく』宮島未奈(新潮社)

前の巻を読んだところで、ちょうど新刊もオーディオブックにあることに気がつき聴きました。

この日はレモネードでした

語り手が変わっていき、たまに「こいつイヤなヤツだな」と思っちゃう人もいるのですが……前作だと東大を目指す子、今回だとクレーマーの女みたいな……そういう人たちでも受け入れてくれるような懐の深さが成瀬にはある気がします。

ところで、東大をめざしてた子の進路や成瀬に恋をした男の子とまだ連絡をとっているのかなど気になることはあるのですが、シリーズが続いて今後があるのか、それとも成瀬の人生に少しすれ違っただけで後は出てこないのか……。

最後のオチが予想がつかず、大団円という感じで楽しかったです。

『銀河英雄伝説6 飛翔篇』『銀河英雄伝説7 怒涛篇』田中芳樹(東京創元社)

ラインハルトが巻き込まれる暗殺未遂事件、退役したヤンの短い悠々自適生活……のはずが。
そして二度目のイゼルローン攻略、ビュコック提督とラインハルトの戦い。

「純白のキャンバスを与えられ、喜んで画筆をとるものの方がむしろ少ないのだ。誰かに命令されて誰かに従属して生きる方が楽なのだ。それこそが、専制政治を、全体主義を人々が受け入れる精神的な土壌なのだった」という7巻の地の文が身につまされた。

ビュコックの「わしは、あなたの才能と器量を高く評価しているつもりだ。孫を持つならあなたのような人物を持ちたいものだ。だが、あなたの臣下にはなれん」という言葉から生き様まで、かなり印象的でした。「パン屋の二代目」のチュン・ウー・チェンがけっこう好きだったのですが……。

対して、軍人としては優秀なフレデリカが料理が下手で、ヤンが文句を言わない、というところは「いやヤンも家事せんかい!!ヘタでもよ〜!」という気持ちが抑えられなかった(笑)。フレデリカが作ったおいしくない料理とヤンが淹れた何とも言えないお茶でふたりして苦笑しながら朝ごはん食べてる、とかだったらよかったなと思わずにいられなかった。

昔の作品なのでジェンダー観!というのは仕方ないのだけど、私は勝手に、この銀英伝、今の現実の歴史の流れから一度ジェンダー観はかなり進んだのだけれど、宇宙に出ていくことをきっかけにまた男女での規範的な役割というのが割り振られてしまったという世界線なんだ、と勝手に解釈して読むことにしています。

『家が好きな人』井田千秋(リュエルコミックス)

本屋さんで見かけて私が好きそうだな……と思って購入した漫画。

ラムレーズンタルト

「家での過ごし方」をオールカラーで描いているだけ、の漫画。劇的なストーリーが何か起こるわけではなく、淡々としているのだけど「こういう暮らし、いいな〜」と思わせるものがあります。
飲み物を用意して部屋暗くして映画を見たりだとか、そういうちょっとしたことなので自分でだってできそうっちゃできそうな描写なのだけど、絵に温もりがあってひとつひとつのおうちを構成する要素の描き込みが細かくて「理想」度合いがとても高まるのです。
日常の過ごし方に、ちょっとひと手間かけてもいいかな、と思わせてくれる漫画でした!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?