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昼に勤める法要なのになぜ逮夜という?

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御門徒の方が亡くなられて、初七日以降の中陰の日程を相談すると、年配の方から「お逮夜勤めでしょうか、正当の日でお勤めでしょうか?」と質問がありました。
「当寺では正当の日付でお勤めしています」とお答えしましたが、周りの方はキョトンとされていました。
これは今では使わない時間の表記を用いた表現だからです。

「逮夜」とは、もともと葬儀に関する言葉で「明日に逮(およ)ぶ夜」、つまり火葬の前夜をいう言葉でした。
ある意味ではイヴとも言えるでしょう。
転じて、年忌法要などの忌日の前夜を指す言葉となりました。

元々は火葬前夜に法要をして、当日、つまり正当の日付にも法要をしていたそうですが、今はどちらかだけをお勤めする形が一般的になっています。

初七日という時の七日は亡くなった日、命日を一日目として数えます。
そのため命日が日曜日なら初七日や二七日といった中陰は土曜日が正当の日付になります。
これを逮夜勤めするお寺もあり、その場合は金曜日が法要の日になります。

現代では一日を二十四時間に分けて表記しますが、一日を昼夜六時と六つに分けて表記する方法があります。
六時とは「晨朝(じんじょう)」「日中(にっちゅう)」「日没(にちもつ)」「初夜(しょや)」「中夜(ちゅうや)」「後夜(ごや)」とです。
具体的には、「晨朝(6〜10時)」「日中(10〜14時)」「日没(14〜18時)」「初夜(18〜22時)」「中夜(22〜2時)」「後夜(2〜6時)」となっています。

この表現に合わせて、法要の名称が「日中法要」や「初夜勤行」という言い方をします。
さらに「逮夜法要」という表現もあり、概ね午後の間に行われています。

秋になると御本山でも私たち末寺でも浄土真宗のメインイベント、報恩講がたくさん勤められます。
私の住む地域では特に、14時頃から勤められる法要を「お逮夜」と呼んでいます。

そのため先日、あるご門徒の方から「逮夜法要は夜の字がついているのに、なぜ昼にお勤めするのか?」と尋ねられましたが、先に書いた理由の通りです。

本来、法要は時間の表記が6つあるのですから、一日に6回勤行を行うものですが、今では本山でも回数を省略して行っています。
ただ御本山では親鸞聖人の毎月の命日や、歴代宗主の祥月命日の勤行は、命日の前日午後に勤まる逮夜法要と、ご命日の午前中に勤まる日中法要でひと組になっています。

数日間勤まる報恩講ですと、午後の法要を逮夜法要と言い、最後に勤まる満日中前日の午後の法要を大逮夜といっています。

ちなみに真宗大谷派の本山、東本願寺では報恩講の最終日の日中法要、特に結願日中と呼んでいる法要の中で「板東曲(ばんどうぶし)」と呼ばれる勤行が行われます。
大勢の僧侶が前後左右に身体を揺らしながらお念仏を称えます。
この板東曲を見たい、といって全国から御門徒が集まられるほどなので、機会があったらぜひご覧いただきたいと思います。

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