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舞台袖は娼館がわりだった!?【ロマンティックバレエ】

こんにちは。
ただのバレエ好きのあゆみです。

今日も割と涼しめで過ごしやすい感じする!
この気温と湿度が続けば気持ちよく過ごせるんだけどなぁ…

かく言う私は秋→冬の
寒くなり始めてコートとマフラーが必要になってくる時期が大好きなので、
早くその季節になることを望んでます。笑


さて、皆さんは、
バレエ
と聞くとどんなイメージを持つでしょうか??

現代を生きる皆さんが持つイメージ

ロマンティックバレエ時代を生きた方が持っていたイメージ
とでは全く違うものがありました。

今日は、当時の劇場の実情も含めてそんなところを話していきたいと思います。


それでは、スタート!!



今と昔、バレエのイメージの比較



現代の方々


現代を生きる方々が「バレエ」と聞くと
多くの方は、

白鳥の湖(しかもチュチュに白鳥の頭がついたもの)
を想像するでしょう。

そして、

  • 格式/敷居が高い

  • お嬢様がやるもの

  • 細くて綺麗なダンサー

  • お金がかかりそう

と言うようなイメージを抱く方も多いと思います。

(最近は、バレエ男子や大人リーナの方々も増えてきて、バレエを楽しむ人が増えて気がしますが、
それでもまだまだ市民との距離は遠い気がします。)


ロマンティックバレエの時代の方々

一方、
19世紀前半の、ロマンティックバレエの時代はというと、

バレエは、
貧しい家庭の娘がやるもの
と言うイメージが一般的でした。

今のイメージと180°違くありませんか??


もちろん、
バレエダンサーになることを望みバレエを習い始めたのですが、

本当の目的は、
パトロン候補のお金持ちのおじ様にお金をもらうこと
でした。

当時のダンサーは、
劇場の正式なダンサーになったとて、しっかりお金がもらえるわけではなかった。
そのため、パトロンからの援助が目的
おじさまから人気が出れば、ダンサーとして一気に人気が出る例も珍しくありませんでした。


↑こちらのnoteで紹介した
ロマンティックバレエの先駆けとなった、
フィリッポ・タリオーニ、マリー・タリオーニ親子
のようなバレエ一家は極めて稀だったのです。


当時のダンサーが、
パトロンとなるおじさまたちと出会える場だったのが
劇場


バレエを見るための施設が、
どうしてそのような場に変わってしまったのか??

ここからは少し歴史的な背景を見ていきます!


劇場はずっと赤字だった


劇場が民営化

1789年のフランス革命が起こった後、
フランスの政治体制は
共和制→帝政→王政復古 etc…
のように目まぐるしく変化を続けていました。

そんな状況では、
人々の人生に彩りを加える趣味嗜好的要素はどんどん後回しにされていきました。
(しかも今のように、携帯一つでなんでも情報が手に入る時代ではないことを考えると尚更…)

そのため、劇場に足を運び続ける人はあまりおらず、
パリ・オペラ座の収支決算は赤字が続いていました。


ルイ14世の時代に作られてからずっと国営だったのですが、
とうとう手が回らなくなり手放すことを決意。

1831年 パリ・オペラ座が民営化 しました。

パリ・オペラ座は一般人によって運営されていきます。
良くも悪くも、ここからダンサーと劇場との関係値が少しづつ変わっていきました。


劇場の運営をしたのは、薬学博士


パリ・オペラ座を国から買取り、運営に名乗りを挙げた(=最高責任者になった)のが
ルイ=デジレ・ヴェロン
と言う人。
ヴェロン博士とも呼ばれる薬学博士でした。

ルイ=デジレ・ヴェロン〈https://en.wikipedia.org/wiki/Louis-Désiré_Véron より引用〉

ヴェロン博士は、胸に塗ってスーッとする薬を開発し富を得ていたお金持ちで、
同時に、著書が人気になったため有名人でした。


そんな彼が劇場を買い取ってからやっと劇場の収支が黒字になったのですが、
頭のいい彼が取った施策とはどんなものだったのでしょう??



ヴェロン博士の功績


1.  マスコミ、広告を利用


先述した通り、
ヴェロン博士は自ら開発した薬の販売権を得ていて、
それの一般市民への周知のために、マスコミ・広告を利用しました。

すでに一度富を得ているから、
マスコミ・広告の使い方はすでに習得済みだったのです。

同時に、パリ・オペラ座の作品のレパートリーを増やしたのです。

  • 悪魔のロベール

  • ラ・シルフィード

などの上演をはじめ、
同時に、

マリー・タリオーニ

のようなスーパースターが現れたので、
それらをマスコミを使って周囲に周知させて行ったのです。

そして、それら全てが社会現象と言われるほど人気に火をつけたのです。
パリ・オペラ座も、作品たちも、マリー・タリオーニも。

もしヴェロン博士がオペラ座の運営権を買い取っていなかったら、
私たちが生きる現代まで、
マリー・タリオーニ
と言う名前は知らされなかったかもしれません。


2.  アボネに特権を与えた

アボネ
 II
チケットを1シーズン分まとめて予約するほどのお得意様。
つまりお金持ち。

当時の観客はほとんどが男性で、
そのうちの4割がアボネと呼ばれる人たちでした。

個人的な想像より遥かに多い…。

当時の劇場の記録には、
アボネと呼ばれる観客のことばかりが書かれ、
劇場も彼ら頼りだったために、どんどんアボネの権威が増していきました。

現在で言うと、
株主みたいなイメージを持っていただけるとわかりやすいかなとおもいます。
たくさん持っている人の意見が通りやすいみたいな。


では、なぜ当時の観客のほとんどが男性で、
そのうちの4割もの人が定期的に劇場を訪れていたのでしょうか??

彼らは、踊りそのものや音楽を楽しむためではなく、
ダンサーそのもの
を楽しむために劇場に足繁く通いました。


そこで、頭のいいヴェロン博士は、アボネに目をつけて特権を与えることにしました。


アボネの特権

・ アボネ向けの特別公演を実施


アボネの人たちだけが見られる、
ガラ公演と呼ばれる、作品の美味しいところの詰め合わせのような公演や、
新作品の初日前にアボネ限定公開などをしたみたいです。

これでも今のバレエ好きの私からすると羨ましい限りですが、
これ以上に歴史に残ってるのが次に紹介するものです。


・ ホワイエ・ド・ラ・ダンスを解放


ホワイエ・ド・ラ・ダンスとは、
舞台袖にあるリハーサル室のようなもので、
客席からは見えない位置にありました。

ダンサーはそこで出番前にウォーミングアップやストレッチなどをしていまいた。

そこをアボネ向けに解放した理由は、
幕間や終演後にダンサーと直接会い、お気に入りのダンサーを決めてもらうため
だったと言われています。

舞台上で、ダンサーとして振る舞っているのではなく、
舞台袖でオフモードの彼女らとアボネを引き合わせるためとは、
よく考えられたものです。

アボネたちは、
どの子を自分の愛人にしようかな
と探し、
ダンサーたちは、
私のパトロンになってくれないかなぁ
とおじさまたちに色目を使いました。

ここに入れるアボネは、
アボネの中でも上級会員と呼ばれる本当のお金持ちばかりでした。

人間の本能をうまく利用した施策でした。


すごいアイディアですが、
リアルにそう言うことが袖で繰り広げられてたと思うと
少し複雑な気持ちにもなります。


舞台袖を描いた画家


この時代の劇場の舞台袖やダンサーの様子を絵にした画家がいます。

それが
エドガー・ドガ

https://en.wikipedia.org/wiki/Louis-Désiré_Véron より引用〉

絵画好きの方の中でも彼の絵が好きな人は多いと思いますが、

彼は、ロマン派ではなく印象派の画家として活動していましたが、
バレエの時代ではロマンティックバレエの時代と同じ時期に活躍していた人です。


彼の絵はバレエに関する作品も多いので、
ぜひ見てみてください。
当時の劇場や稽古の様子などもみていただけると思います。

ドガ作『踊り子』〈http://blog.meiga.shop-pro.jp/?eid=13 より引用〉


性が抑圧されていた時代


実は19世紀は
時が進むほど性に対する抑圧が厳しくなっていった時代でした。

性的なことを口にするのはもちろん、
女性はそのうちくるぶしから上を見せられなくなり、
はたまた、ピアノの足は女性の脚を連想させるという理由で隠されたりもしました。

一方で、劇場という本来であれば芸術を鑑賞しに行くべき場所に、
女性ダンサーの体や、脚を見物しにいき、
はたまたホワイエ・ド・ラ・ダンスなどでお気に入りの娘を物色する
ということが行われていました。

これがこの時代の劇場のヒミツです。


まとめ

こうして劇場は女性ダンサーがメインになっていくのです。
そういえば、ロマンティックバレエの時代って男性ダンサーの名前あんまり聞かないよなぁと思ったら、こういうことが理由だったのです。

アボネの権威がまし、男性ダンサーの肩身が狭くなっていくことで、
ロマンティックバレエ→クラシックバレエ
の時代へと移り変わっていきますが、
この話はまた近いうちにでも。

次のnoteでは、
マリー・タリオーニのライバル
について触れてみようかなと思います!!


今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
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ぜひそちらも覗いてみてください☺️


それではまた〜


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