『Next De Zerbi』 - Francesco Farioliの分析
「Francesco Farioliをご存知でしょうか?」
- 「いいえ」という方が多いと思います。でも大丈夫です。
あなたがDe Zerbiのサッカーに魅了されているならば、Fransescoの辿ってきた経歴を聞いて、また、彼の指揮するチームのサッカーを知ってFransescoに関心が湧くのは間違いないでしょう。
簡単にFranchesco Farioliを紹介すると、33歳のイタリア人で、現在、トルコ1部リーグSüper LigのAlanyasporを指揮しています。彼の書いたDe Zerbiの戦術分析の記事がDe Zerbiの目に止まり、スタッフに招かれ、De Zerbiのもとでコーチをしていた人物です。
ね、もう気になっちゃいますよね。
今回の記事は、著者の方に連絡を取り翻訳させていただいたものになります。というのも、Süper Ligは日本では試合の放送がなく、Youtubeで3試合フルで視聴できるものの、分析するには不十分です。また、なにより、著者のKelvin Nilssonさんの記事の質が非常に高いので、自分で分析して新たに記事を書いても、どの側面でもこの記事以上よりいい記事を今の自分では書けないと感じたからです。
著者のKelvin Nilsson(Twitter:@mrKevinNilsson)さんは スウェーデン2部のHalmstad BKでYouth coachをされている方です。あらためて翻訳させていただきありがとうございます。
【元記事】
記事は非常にボリュームがあり、論理的で重厚です。そのため、予め心の準備をして読み始めるのをお勧めします。
<以下、本文の翻訳> ※()内は読者の理解を助けるための翻訳時の補足
Francesco Farioliは現在最も若く興味深いコーチの1人だ。彼のコーチとしてのキャリアは、2017年にRoberto De Zerbiが指揮するFoggiaの戦術分析を書いたものが、今のBrightonの監督(De Zerbi)の目に留まったことで、非常に興味深い転換を迎えた。
その後、FrancescoはDe Zerbiに付いてBeneventoとSassuoloを経て、トルコへと別れを告げた。彼はAlanyasporでアシスタントコーチになり、その後、Faith Karagümrük(こちらもSüper Ligのチーム)の監督に就任した。短い期間ではあるものの、成功を収めた後、彼はAlanyasporに戻り、監督として仕事を始めた。
(経歴についてより知りたい方は以下のskyの記事がおすすめです。)
哲学
Farioliは、サッカー指導者は常に外部からの影響に屈しないよう努め、自分自身を表現するサッカーを指導すべきという考えを持っている。
「それが、私がチームに与えられる唯一のサッカーだ。なぜなら、そのサッカーは自分の内の部分から生まれるものであり、他にはないからだ。」
この言葉を私は非常に興味深いと感じた。彼が指摘する外部からの影響とは何であり、どのようなものを考慮する必要があり、逆に、どのようなものは無視した方が良いのか? そもそも、すべての監督は、自分たちがどうプレーしたいか、何が重要で、サッカーというゲームをどう見ているかといった哲学を持っていると思う。そして、そこには他人の口出しを許さないような原則があるはずだ。
多くの人々は、選手のタイプ、国、リーグのスタイル、クラブの歴史などに応じて、いわゆるゲームモデルを変更する必要があると主張する。それだけではなく、政治、経済、文化、特定のスタイルでプレーすることを望む会長やオーナーからの外部的影響を受けることもあるだろう。そして、これらの要素の全部、あるいはいくつかでも考慮すると、自分が本来表現したいサッカーから大幅に乖離したスタイルになってしまうことは容易に想像が可能だ。また、もしそのスタイルが自分自身の中から生まれてこないのであれば、あなたはそのスタイルを指導するのに最適な人ではないのかもしれない。私はコーチが、選手から「承認」を得ることがいかに重要であるかについて話すのをよく耳にする。しかし、自分が100%の自信で信じていないものを、果たして選手たちを納得させられるだろうか。
私が想像するに、彼の言う大きな外部的影響とは、イタリアという国が長い間持ち続けているサッカーに対する考え方のことだろう。De Zerbiは、イタリアで監督をしていた間に、その哲学は多くの批判を受けたし、Francescoも同様に、過去何十年にもわたってイタリアで見てきたものとは異なるサッカー観を提供している。また、ManciniがEURO 2020で優勝したときのスタイルをイタリアでプレイして勝つことはないだろうと多くの人は言う。
間違いなく、Francescoは試合によって、自チームの選手や相手の出方に応じてゲームプランを調整しているだろう。しかし、彼が自身の哲学や考え方を変えることは決してないだろう。Farioliは、すべての選手が学べると信じており、指導を重視している。
「プレーの仕方、トレーニングの仕方、人の管理の仕方は、全て、私がどのような人間であるかを表している」
特定の哲学を持つことの重要性を理解しているクラブは、その哲学に合った監督を選んでいるのがわかるだろう。PotterがChelseaに移籍した後、後任として、BrightonがDe Zerbiを選んだのはまさにこの例だ。前任者と後任の監督が同様の哲学を多く持っている場合、適応期間は短くなるようだ。
De Zerbiのスタッフの一員として、Farioliはゴールキーパーコーチを務めていたが、同時に、トレーニングではビルドアップやハイプレスを担当していた。試合でのビルドアップのフェーズは、Farioliにとって大好きなものであり、このフェーズは彼のゲームに対する考えの主要なポイントだ。Farioliはトレーニングでは、この局面の練習に多くの時間をかける。これはビルドアップでの成功が、ピッチのより高いエリアや試合全体に優位性を与えるという考えによるものだ。
FarioliはDe Zerbiに類似している、また、彼らはPep Guardiolaに似ているなどと多くの人は思っている。確かに、彼らは同様の主要な原則を持ちうるが、違いを生むのは、選手たちに伝えるメッセージだとFarioliは考えている例えば、Guardiolaと全く同じトレーニングであっても、Farioliはあることに重点を置き、他のあることにはあまり焦点を合わせない。これが長期的に違いを生み、試合に常に違いを与えるでしょう。
時間
世界は益々速く流れ、忍耐力は益々短くなっている。誰もが、影響や違いをすぐに確認したいと考えるようになった。つまり何が言いたいかと言えば、監督は自分のゲームプランを素早く実行に移す必要がある。監督が自分のゲームプランと哲学をチームに浸透させるのに、どれくらいの時間が必要な時間はどのくらいであるかというのは、非常に興味深い問題だ。この問題に答えるためには別の記事が必要だと思うが、それはそれぞれの監督によって異なるでしょう。
ひとつ興味深いのは、Francescoは非常に短い期間で、自分のスタイルや哲学をチームに浸透させられるようにみえることだ。彼のチームが最初から彼の思い描くままのプレーができるわけではないものの、彼にとって何が重要であるかはすぐにわかる。ビルドアップの重視、ポゼッションなどの重視。これが彼のキャリアを通じて続くかどうかはわからないが、彼はトルコでの最初の2つのクラブで哲学を実装するための良案を見つけたようだ。
構造
フォーメーションについての一般的な質問に答える前に、フォーメーションについて少し話をしよう。フォーメーションはチームがどのようにプレーするかや監督の哲学を示すものではない。これに答えるには、フォーメーション、マインドセット、原則、タイプ、バランス、リスク、パターン、調整、プレーヤータイプ、役割を見る必要がある。これについては、別の記事でより詳しく説明するつもりだが、私がフォーメーションをどう見ているかということだけを説明しよう。
フォーメーションは、試合の特定の局面におけるチームのスターティングポジションを示すものだ。フォーメーションは、チームが試合のどのフェーズにあるか、また、ピッチ上のどのエリアに位置するかにより変化する。フォーメーションは相対的であり、つまり、試合に依存する。何に依存するのかを分解するならば、試合によって、どのフェーズ、フィールドのどのエリアで、そして、おそらく最も重要なのは、相手がどのようにチームを構成するのかを選択するかだろう。フォーメーションが違えば、ピッチ上で与えられるスペースも変わってくるからだ。つまり、フォーメーションについて話すときは、このことを考慮するべきだと考える。
もし、あなたが1つ、または最も一般的なものを選ぶ必要があるとしたら、私は4-3-3からすべてが始まると言うだろう。しかし、Farioliのフォーメーションは試合に依存しており、前述のように変化する。
攻撃の原則
ビルドアップ:ハイリスク・ハイリターン?
前に述べたように、Farioliはビルドアップに重点を置く。彼は、ビルドアップで成功すれば、スペースができ、フィールドの高い位置で数的有利を作れると信じている。これに対して、後方からのビルドアップの価値を信じる人もいれば、リスクが大きすぎると考える人もいる。リスクは主観的なものなのであるため意見が分かれるのだろう。後方からのビルドアップに反対する人の意見は、自チームのペナルティエリアでボールを失った場合に、一つのミスが失点という消极的な結果につながりやすいという考えによるところが大きいのではないだろうか。一方で、常にロングパスを選択することで、フィールドの高い位置でボールを失い、ゴールを許す。つまり、空中でのボールの競り合いに負け、ボールの所有権を失い、ゴールを許すという展開は前者に比べてずっと起こり得にくそうに思える。いずれにせよ、それを守備が悪いと非難することもできるだろう。このことは、GKがミスをすればすぐに結果がわかる一方で、中盤の選手がパスミスをした場合には、時間はかかるが、失点という結果は同じ、ということと似ている。
Fairoliのチームはゴールキックにおいて、平気で自陣のペナルティーエリアに大勢の選手を配置する。CBはゴールエリアの端に立ち、GKがその間にいる。WBの位置は、対戦相手がプレスにかける選手の人数により異なる。彼らは、ハーフスペースに位置を取ったり、ワイドのチャネル、対称的なことも非対称的なこともある。すべて、相手がどのように選択するかにより決まる。ビルドアップから取り出せる1つの原則は『+1』だ。Fairoliは、ビルドアップでの+1の数的優位性を維持するために、プレイヤーを追加する。彼らはビルドアップでバック4をよく使用する。そして、前述のように、中央のMFを1人、時にはダブルピボットをこれに加える。続けて、数的優位性を維持するために、プレイヤーをさらに加える。下の画像のように、ある試合で、相手が人数をかけ、ハイプレスをかけてきたときには、Fairoliは、フロント3を前線の高い位置に残し、7人でビルドアップをした。
いくつかの試合では、3バックでプレーする。その場合には、ビルドアップフェーズでは、中央のCBが、1段上がり、ダブルピボットを作る。そして、ボールが進行すると、再びバック3を形成する。
多くの場合、CBがゴールキーパーに最初のパスを出し、GKがボールに足をおく。相手を挑発し、相手はどうするかの選択を迫られる。そして、GKにプレッシャーをかけようとすると、相手の守備構造が崩れ、スペースが生まれ、侵入することができるようになる。
ビルドアップでは、ローテーションを頻繁に使用する。ポジションプレーのように、選手が特定のエリアに限定されてプレイすることはない。その代わりに、流動的で、意図を持った動きで、スペースを作り、支配することに重点を置いている。選手たちは、相手の選手の1人が守備構造から飛び出してプレスをかけたときに生じる数的優位を利用する。相手が1人飛び出すことで、そこにフリースペースが出現するので、Fairoliの選手はそこを埋めるような動きをする必要がある。
Francescoは3枚のアタッカーを用い、相手のディフェンスラインを押し上げ、ピン留めしようとする。2人のワイドフォワードが幅を取り、さらに相手のCBの間に位置取るストライカーも加わり、ラインを押し上げようとする。これは相手のディフェンスラインとハイプレスに加わる選手たちの間にスペースを作ることを目的としている。そして、このスペースに1人か2人のCM位置取り、CFが下がってくることもある。ピッチの中央部分でオーバーロードし、ビルドアップで中央から前進しようとするが、スペースができればどこにでも進む。
浸透(Penetration)フェーズ・確立(Establishing)フェーズ
ミドルサードでのポゼッションについて、私はこれを「浸透フェーズ」または「確立フェーズ」と呼ぶことにする。(ニュアンスが違うかもしれません。長いので便宜的に浸透と確立という単語を使う。)これら2つの違いは、前進が継続すれば浸透フェーズとみなし、そうでなければ確立フェーズになることだ。これは、ゲームプランとその哲学により決まる。例えば、Red Bull Leipzigの場合、ラインブレイクすると、中央の3つのレーンを使って縦に早く攻めようとする。ここで重要なのは、もしこのフェーズですぐに前進することができず、チームが確立フェーズに入った場合だ。そうすると、新しいビルドアップの段階が始まるが、それはピッチのより高い位置で行うことになる。
そして、Fairoliのチームを説明するためには、この局面を前述の2つのカテゴリーに分解する必要がある。
相手のプレスラインをうまく破り、ラインの間にフリーの選手を見つけると、Francescoのチームは縦に、そしてダイレクトに攻める。
相手のプレスラインを破ることに成功し、ライン間にフリーの選手を見つけると、Francescoのチームは縦にダイレクトに攻める。彼らは、ウイングが相手のDFライン裏のハーフスペースに走り込む間に、中央へボールを移したいと考えている。カットバックを多用し、ボックス内には最低4人の選手を配置する。彼のチームは試合のテンポをコントロールすることに長けており、ビルドアップの段階では冷静かつ慎重に相手のラインを突破する機会をうかがう。そして、ライン間でフリーの選手を見つけるとペースを変える。こうしてゲームの中間フェーズを奪い去る。
しかし、相手チームがハイプレスを選択せず、ミドルブロックからローブロックの選択をするのを幾度も見かける。私はこれを再度ビルドアップの段階と呼ぶ。それは、ただピッチのより上方のエリアにいるだけだ。なぜなら、相手はこのようなディフェンスを選択し、相手の1stラインのプレッシャーを破る前にビルドアップの段階が終わっていないからだ。
彼らは、ここで、2-3-5や3-2-5の形を用いる。前線の5人が5レーン全てを埋める配置だ。彼らはできるだけ中央の3つのチャンネルを用いて、中央でボールを進めようとする。その狙いは、ライン間にフリーの選手を見つけ、徐々にボールを進めていくことだ。ライン間やポケットにいる選手を見つけると、相手は反応して選択を迫られる。ディフェンスラインを崩してボールを受けようとする選手にプレッシャーをかけるか、あるいは後ろに下がってポケット(≠ニアゾーン)にいる選手を前に進ませるかのどちらかだ。この段階で、彼らは非常に辛抱強く、水平方向のパスを多用するが、それだけではない。彼らは縦に前進する方法を見つけるために水平方向にパスを出す。De Zerbiのチームと同様に、CBは非常に我慢強く、足裏でボールを止めることもある。しかし、それは相手を挑発し、守備の構造を崩させることが目的だ。また、プレッシャーを引き付け、適切なタイミングでパスを出すことも目的としている。以下の2つのビデオはまさにその完璧な例だ。
彼らが使用する別の原理はfollowing pressure(プレッシャーに従う)だ。簡単に説明すると、相手がディフェンスラインから飛び出してプレッシャーをかけると、それまでディフェンダーがいた場所にスペースができる。ディフェンダーが離れた直後に、攻撃側の選手がそのスペースに侵入することで、そのスペースを利用できる。現代の守備は、スペース消すのが非常に上手く、ミドルサードでの前進は難しい。そのため、与えられたスペースをいかにうまく使うか、あるいは自分でスペースを作り出すか、ということになる。しかし、スペースを作るのは非常に難しいため、following pressureは前進のための良い方法かもしれない。下のビデオで理解しやすいように例を挙げた。
もう1つ、Farioliが選手たちに指導するのが上手いのは、意図を持って動くことだ。ただ動くだけではスペースは生まれないし、少なくとも自分が望むスペースは生まれない。そこで問題になるのは、相手があるスペースを閉じようとしている時に、どうやって自分の望むその閉じられようとしているスペースを開くか、ということだ。下のビデオで私が「意図を持って動く」と表現している私のお気に入りの良いプレイを見てほしい。
攻撃側の選手がボールを受けるために特定のスペースに入ると、相手はそのエリアを見事に潰して、攻撃側の選手がボールを戻さざるを得なくなる。そして、その選手が相手を引きつけるように別のスペースに移動すると、ディフェンスは少しの間だけリラックスしてしまう。ディフェンスは最初の状況への対応に安心感を覚え、ストライカーがCBによりプレッシャーをかけるようになる。次に別の選手がこの同じスペースに侵入するものの、今度はディフェンダーが離れすぎていて、スペースを再度閉じれず、攻撃側が前進する。つまり、同じエリアにボールを入れる場合でも、意図的な動きを用いれば状況は変えられるのだ。
ミドルサードでのビルドアップフェーズで見られる1つの一般的なパターンは、ファーサイドのCBからダイアゴナルにロングパスを出して、相手の最終ラインの背後を狙うというものがある。背後を狙うのは、大外のレーンからハーフスペースのレーンに入ってくるウインガーだ。通常、2つの攻撃的MFはCBとWBの間のポケット(チャネル・チャンネル)に位置取る。守備側のWBに対し、2対1を作り出し、パスがファーサイドのCBから出されるため、攻撃側のWBはブラインドサイドで走り出すことができる。またWBを高い位置に取らせ、ウイングが中に入ってハーフスペースを占有するパターンもあり。この例を、以下のビデオで見てほしい。
ファイナルサードでハーフスペースを用いる
ファイナルサードでもコンビネーションプレーを多用するが、より縦へ意識が強い。以前に述べたように、彼らは常にボックス内に3-4人の選手を配置し、クロスよりもカットバックを狙う。彼らは、ハーフスペースのチャンネルからディフェンスラインの背後を狙おうとしている。これは、幅を取るウイングか、そのポジションを占めたWBがウイングを中に押し込むかのどちらかだ。
ファイナルサードでのポゼッションが確立している時には、ボールがワイドのレーンからハーフスペースに移動するたびに、相手のWBとCBの間(チャネル)に走り込むことも、彼らがよく使うパターンだ。
守備の原則
守備では、彼らはできるだけ高い位置から相手にプレスをかける積極的な守備をできるだけしようとするが、相手をコントロールし、特定の方法やフィールド上の特定のエリアで攻撃させることを意味する。そこで、相手からボールを奪うことができる。もっとも、ハイプレスに共通するテーマは、高いディフェンスラインにより、チーム全体を垂直方向と水平方向の両方で非常にコンパクトに保てるということだ。彼らは、4-3-3の偽9番プレスを好んで用いる。ウイングはアウトサイドから中央に、ストライカーは相手の1枚のピボットにカバーシャドウを行う。また、彼らはゾーンディフェンスとマンマークディフェンスの両方を混合して用いる。中盤の中央とハイプレスでは、マンマークを使用する。
ミドルブロックに構える場合、高いディフェンスラインで同じようにコンパクトさを保ち、多くの場合、ピッチの中盤で4-2-3-1を用いる。ボールを最初の、最も重要な基準点として、ゾーン・マーク・ディフェンスを行う。積極的にプレスをかけるのではなく、優れたディフェンス構造でボールをの所有権を取り戻そうとする。
前述のように、彼らはできれば高い位置で積極的な守備をしたいわけだが、どんなチームもピッチの下の方にいることもある。ローブロックでは4-1-4-1で、さらに苦戦すれば5-4-1を使うことが多い。フィールドの中央のエリアを守ることに重点を置いており、優れたディフェンス構造で相手のゴールを防ごうとする。
1つの重要な側面は、彼らは守備の形状も流動的であることだ。彼らは特定の試合や試合のフェーズで、どのような形にしたいかをよく理解しており、その構造の中で、ストライカーがプレッシングする場合もあれば、ウインガーがプレッシングし、ストライカーはウインガーのスペースを占める場合もあるといった具合だ。
Farioliは他の多くの監督と同様に、レストディフェンスを用いる。そして、それが、他のチームのレストディフェンスとよく似た設定だとしても、その目的は少し異なるかもしれない。レストディフェンスとは、ボールを失ったときにボールを取り返すための良い位置にいるか、相手のカウンターアタックを止めるための適切なポジションをとることだ。これはFrancescoもレストディフェンスを使うわけだが、ボール奪取時やカウンターアタックを止めたときに、わざわざGKまでボールを戻す選択を選ぶことが多い。テンポを落として、相手をピッチの上方に引き付け、正しい攻撃構造を作り出すためだ。一般的にレストディフェンスの目的は、チームが、相手側のハーフにとどまることだが、FarioliのチームはGKからやり直すことをためらわない。
トランジション
おそらく、Francescoはトランジションにはあまり重点を置いていないようだ。もちろん、高い位置でボールを奪い返し、カウンターの好機になったりすれば、それを生かそうとはする。つまり、中盤や相手陣内でボールを奪ったときのみ、カウンターを選択するわけだ。それ以外の場合は、自分たちの理想とする攻撃構造を再構築することを優先する。
ネガティブトランジションでは、多くの場合、1人か2人のニアサイドの選手によるカウンタープレスを優先し、ファーサイドの選手が守備構造を再構築することを優先する。
Farioliのチームがトランジションにあまり重きを置いていないように見えるのは、さまざまな理由があるだろう。これは彼が監督としての経験が非常に少ないので、単に時間がないのかもしれない。また、彼は構造的な段階を優先しており、いずれトランジションも開発するかもしれません。しかし、トランジションにも原則があり、彼らがトランジションで何をしたいのかを理解していることをはっきりさせておこう。しかし、彼らがRed Bullのチームのように、トランジションのために努力したり、成功したりするわけではない。彼らは、ゲームがより構造化され、より予測可能になるよう、トランジションの瞬間を早く終わらせることを望んでいる。このことは、試合をコントロールしたいというFarilioの哲学に起因しているのだろう。トランジションの瞬間をコントロールすることは、サッカーにおいて非常に難しいことで、ある程度では不可能といえるかもしれない。そのため、できるだけ試合をコントロールし、トランジションの瞬間がいつ・どこで発生するかをコントロールすることにより、その瞬間をできるだけ短く、予測しやすいものにするという試みなのかもしれない。
結論
これはFrancescoがFaithとAlanyasporで指揮した試合の約10試合を分析したものだ。それは彼が最初に指導した2つのチームであり、彼の今後の成長を追っていくのは非常に興味深いことだ。将来、どのようになるかはわからないが、イタリアの若手の監督がサッカーを違った角度から見るのを追っていくのは本当に面白い。
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