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「事実は小説よりも奇なり」だ - 映画『トラペジウム』

※この記事は映画のネタバレを含んでいる可能性があります

まず、良い映画だった。
そして、とても考えさせられる映画だった。
自分の青春時代、現在の仕事、将来の夢、どんなことが幸せなのか。
見終わってからしばらくの間は、もはや何も手につかなくなるくらい重い感情に包まれた。

「夢を追いかけている人は、輝いて見える」

人は誰しも夢を持っているだろうか。
私はそうは思わない。
夢を見ることができた人だけが、持つことができるのではないだろうか。

・恋人ができた、その恋人を人生をかけて幸せにしたい
・ボランティアに参加した、世界中の人を支援したい
・ロボットが好きだ、プログラマーになりたい

何か人生の転機になるような経験があって、それを極めたい、続けたい、やってみたいという感情が芽生えていくのだと思う。
そしてそれが夢になってゆく。

理想論

この映画の主人公・東ゆうはアイドルが好きで、自らがアイドルになることを目指してたくましく進んでいく。
たくさんの人を笑顔にできる、そんな素敵な職業だと信じて。

一方で、東ゆうが東西南北のメンバーとして誘うその他の3人はアイドルにそこまで興味がなく、ただ長いものに巻かれていくようにアイドルの道に巻き込まれていく。

現実世界にも、グループ活動における意識の差というものはどこにだってあるだろう。
私自身、様々なグループの中で自分と他のメンバーの意識を比べて悩んだことが多々ある。

いつか担任の先生に言われたことがある。
「メンバーに意識の差があるのは当たり前のこと。大事なのは、全員が高い意識をもって取り組む方法を考えていくこと。」

実際この映画でも、アイドルになっていく過程が楽しくてたまらない主人公と、必ずしもそうではない他のメンバーとのギャップが、耐えられないほど明確に描写されている。
一方で、主人公と他のメンバーとのギャップというのは、各メンバーそれぞれが心の中で思い描いている、自分らしい生き方とのギャップでもあるだろう。

自分らしく生きられないと自覚してしまった人間は壊れていく。
自分が自分じゃなくなっていく恐怖から逃れるために。

「アイドル」とは

誰かの理想の人間になることを強いられる職業だと思う。

不特定多数の人々の理想の集合体、テレビやYouTube、世の中が作り上げた「都合の良い」人間。
恋人のいない、誰にだって優しい、世界一かわいくて、臭いものには蓋をした、完璧で究極の存在。

理想的でない姿は絶対に見せない、イメージを死守するために人生を捧げることができて、誰よりも理想を追い求め続けることができる、屈強な存在。

10年後の自分

生きている場所は違えど、みんなそれぞれに幸せそうな生活を送っているようだった。

10年前、思い描いていた10年後。
10年前を思い返す、今を生きる自分たち。

10年経っても変わらない輝きと、10年の間に変わった自分の理想。

結びつける写真が思い起こさせる10年前の記憶は、各々にとってどんな想い出なのだろうか。

今を生きている自分は、誰かにとっての「10年後なりたい自分」になっているのだろうか。


総括

素敵な映画をありがとうございました。
見飽きない構成、本編を邪魔せずに感情を揺さぶる音楽(横山克さん最高です)、印象的でキラキラした主題歌(星街すいせいさん最高です)、すべてが絶妙なバランスで綺麗にハマっていました。

またこんな映画に出会えたらいいな、と思います。


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