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【テレビ番組への出演交渉の裏側】一般人キャスティングの際にリサーチャーが心がけているコト&準備してるコト

テレビ番組のリサーチ会社フォーミュレーションnote編集部です。

以前、「テレビ番組のリサーチ領域⑤出演者キャスティング編」でもご紹介しましたが、
フォーミュレーションでは一般の方や専門家、企業などをを対象に、テレビ番組への出演交渉や、それに付随する電話取材を行う「キャスティングリサーチ」と呼ばれる業務を担当しています。

個性的なエピソードやキャラクターを持った一般の方が出演するテレビ番組が人気を集めています。
その番組の中のいくつかでフォーミュレーションがリサーチ会社として番組に参加し、番組の内容に適した一般の方を探して出演交渉を行っているという事は、前述の記事でご紹介した通りです。

キャスティングリサーチは「テレビで扱える事柄を探す」というフォーミュレーションの基本的な業務の一つではありますが、その一方で、一歩間違えれば大きなトラブルを招きかねない難しい仕事でもあります。だからこそ、より専門性が求められ、細かな配慮が必要となってくるんです。

そこで、今回はキャスティングリサーチをどういったプロセスで行っているのかご紹介していきたいと思います。

■キャスティングリサーチはどういった流れで行われているのか

キャスティングリサーチには大まかなパターンがあり、大体下記のフローチャートのように大別されます。

イメージとしては、「○○で悩んでいる人」や「東大生」「職業が○○な人」など広く募集がかけられそうなテーマの場合はアンケートモニター会社を利用し、「○○のマニア」などユニークな人を探す場合、ダイレクトリサーチをかけることが多いです。

今回は、より特殊な業務であるダイレクトリサーチについて架空のリサーチ依頼を例にご説明します。

■例A:書道コンクールで1位になった小学生の現在を取材したいので探してほしい

仮に「コンクールで全国1位をとるような子は人になった今、いったい何をしているのか?をテーマに、当時の作品の内容や現在の仕事の様子などを密着取材していく特別番組」のリサーチ依頼が来たとします。
事前にわかっていることがコンクールの名前ぐらいしかないため、地道に検索をかけていくリサーチとなります。

①新聞記事やコンクールHPで名前・年齢・学校名を確認

まず過去の新聞記事やコンクールのHPで検索をかけ、受賞者の名前・学校名・学年を確認します。いずれも、出身地や年齢を推測するために重要で、ここが間違っていると別人に連絡をしてしまう危険性があります。

②名前を検索し、出身地・年齢などが符合しているか確認して探し出す

まず、シンプルにお名前でインターネット検索をかけます。フルネームがわかっていれば、個人はけっこう絞り込めます。本人がSNSをやっている場合以外にも、例えば大学や企業のHPやWEB会報などにお名前が記載されている場合があるのです。この時、名前の漢字表記が間違っていないかをよく確認します。「サイトウさん」や「ワタナベさん」など、複数の漢字表記があるお名前は特に注意が必要です。

③本人に直接、もしくは所属先を経由して接触

SNSを見つけた場合は、下記のような文面でダイレクトメッセージを送付し
返信を待ちます。

突然のご連絡大変失礼致します。
テレビ番組のリサーチ業務を担当しております
株式会社フォーミュレーションの■■と申します。
弊社で担当しておりますテレビ番組で
学生の頃に書道コンクールで賞を取ったことがある方の現在の様子をを紹介するという企画を考えており、
現在、その企画に出演していただける方を探しております。
●●様と同姓同名、ご年齢も同じ方が、小学◆年生の頃に「全国書道コンクール」で入選したという内容を
下記のHPで拝見し、お名前を検索等させていただき、この度ご連絡させていただきました。
https://www.z-shogei.co.jp/compe/
もし●●様が当時受賞されたご本人でいらっしゃいましたら、当時の作品の内容や現在のご活動の様子などを
取材させていただくことが可能かどうか、お伺いしたく思っております。
もしご興味を持っていただけそうでしたらDMを頂くことは可能でしょうか?
手前勝手なお願いで、大変恐縮ですが、
ご協力及びご検討の程、何卒よろしくお願いいたします。

連絡先が職場や学校などの所属先である場合は電話や問い合わせフォームなどから接触しますが、この時意識するのは、「まず最初にこちらの身分を明らかにする」「要件を簡潔かつ正確に伝える」ことと、「こちらの都合で手間を取らせている」ことです。当たり前ですが、そもそも、取材協力のお願いは完全にこちら(テレビ制作側)の都合で、しかもこの場合はあくまで個人への取材依頼なので、学校や企業にとってはメリットも薄く、「余計な手間」でしかありません。

ご本人に連絡する際も同様で、時間を割いてこちらに付き合ってくれているということを絶対に忘れないように気を付けています。

また、電話口で心掛けているのが「モタモタしない」という事です。番組の企画意図や、なぜその人に取材したいのかを簡潔に伝えることは難しいです。しかし、話が順序立てて出来なかったり、焦って何度も言い直したりすると、先方に余計な時間を取らせるだけでなく、準備不足と思われて不信感を抱かれることにもつながります。
なので、自分は電話をする前に情報を箇条書きで書き出し、場合によっては、読み上げるだけで番組の説明が完結するような簡易的な原稿を作成します。少なくとも、話の導入はこのひと工夫でだいぶスムーズになります。

■例B:お店が老朽化して困っている飲食店の店主にお店を改装するロケを申し込んでほしい

続いて想定するのは、「老朽化したお店を芸能人と一緒に改装のアイデアを練りながら、店主のお店に対する想いやこだわりにもフォーカスし、実際に改装工事まで行いたい」という企画意図の架空の発注です。内容が内容なので、簡単にOKはしてもらえない比較的ハードルの高いリサーチになります。

①SNS等で自ら発信している店主をリサーチ

まず、TwitterやInstagram等で「テナントに入っている建物が古くて困っている」「調理場が旧式のもので使い勝手が悪い」などの投稿を行っている、飲食店の経営者の方を探します。「お店の老朽化」というネガティブなテーマでの取材交渉を行わなければならないので通常の取材交渉よりも気を遣いますが、窮状を自ら発信しているような人は話がスムーズに伝わる確率が高いです。取材するとなった場合にも、より深い話をしてくれる場合もあるので、優先的に取材交渉をします。

②見つからない場合・・・老朽化している店に関連しそうなワードで検索していく

SNSで情報が見つからない場合、役に立つのが「食べログ」などの口コミサイトです。「年季が入った」「歴史を感じる」など建物自体に言及した言葉以外に、「ご夫婦で切り盛り」「長く愛されている」など店主に関するワードでもリサーチをかけます。注意したいのが、第三者が書きこんだ情報をもとに店主にお伺いする場合、本人は店が老朽化しているという認識がなく、気分を害される場合があります。なので、電話等での接触は慎重に、丁寧に行います。

③相手に嫌な思いをさせない、ということが絶対条件

いざ電話取材をする場合、気を付けた方がいい点として「先方が忙しい時間は避ける」ことが挙げられます。この場合は飲食店なので、ランチタイムや夕方~夜の20時ぐらいまでは避けた方が無難だと思います。

忙しい時に電話がかかってくること自体けっこうなストレスです。ましてや、先にも述べたように「取材したい」というお願いは先方からしたら不要不急であることが多いので、電話のタイミングが悪いと心証を悪くするだけでなく「今忙しいから」とすぐに電話を切られてしまうことも珍しくないです。

一度取材を断られたら、そこからしつこく何度もお願いをするのは大抵の場合余計に心証を悪くするだけなので好ましくありません。
なので、先方が余裕をもって対応してくれそうな時間を予想し、電話に出てくれた際も必ず「いまお時間大丈夫ですか?」と一度確認をすることが大事です。電話の最中も、長くなるなら折を見て確認した方がより丁寧だと思います。

■例C:23区内に住んでいる、子供が7人以上いる大家族を探してほしい

続いては、「新たに企画された大家族特番で、今までテレビで取り上げられたことのない大家族を発掘したい」という架空のリサーチです。制作費などの都合上、取材相手を都内に絞っている、という状況を設定しています。  

あえて検索対象を絞り込むことで出てくる情報もある

このリサーチの場合、自分が一番使うのはSNSです。とくに使うのはInstagramで、なぜかというと、非常に狭いお題のため、ハッシュタグを使った方が絞り込んだ情報を効率的に得られるからです。TwitterやFacebookなどはフリーワードで検索できるので便利ですが、テーマと関係ない投稿も多く引っかかってくるので処理が大変です。

より絞り込んだ情報を得るために、「#大家族」というような漠然とした形で探すのではなく、例えば「#3男4女」などより具体的な数字も入れて検索した方が個人にたどり着きやすいです。家族構成もある程度把握できるので今後の取材にも役立ちます。

■過去、実際にあった失敗談

ここからは、過去に実際に起こった出来事を基にしたキャスティングリサーチをするうえで起こりうるトラブル・ヒヤリハットの事例をご紹介します。いずれも、せっかく取材に協力してくれている対象の方々に多大なご迷惑をかけることになりかねない、要注意の事例ばかりです。

①いただいた連絡先が消えてしまった

これは、以前担当した動物の特番で起こった事例です。フォーミュレーションは全国の動物園に、その年に生まれた動物の赤ちゃんがいるかどうかと、各施設の取材の可否、担当飼育員さんにお話をお伺いする業務を担当していました。
複数のスタッフで全国の動物園に電話をして、エクセルにまとめて共有をして作業を進めていました。

しかし、PCの操作ミスにより、情報を一元管理していたエクセルのデータが消えてしまい、復元できない事態に陥ってしまいました。取材した内容が細かく、情報量も膨大だったために記憶から辿ることもできず、上長と相談した結果、一度お電話した動物園に、再度情報をお伺いするという事になりました。

不幸中の幸いだったのは、取材NGをもらった動物園は各担当者が記憶していたこと、動物園の担当者様のお名前と連絡先は別に控えていたものがあったので、ご連絡自体はスムーズに行ったことです。

トラブルが発生した後すぐに、スタッフが事情を説明してお話を再度お伺いしたところ、有り難いことにどの動物園も快くご対応してくださり大事にはならずに済んだのですが、各動物園のご担当者様に二度手間を取らせてしまい、申し訳ないことをしました。

このトラブルが起こった原因は、一つのエクセルを複数人で編集し、しかもバックアップを取っていなかったことでした。これ以降、自分は電話で情報をお伺いする際、スタッフ共有のデータファイルだけでなく必ず自分のPCにバックアップを取るようにし、再発防止に努めています。

②以前やり取りした人と同じ人だと気づかずに2重に連絡してしまった

フォーミュレーションでは調査の部署が複数に分かれており、それぞれの部の中で番組を担当しているのですが、たまに、担当者が複数の部にまたがって1つの番組でリサーチ作業を行う場合があります。これはそんな状況の中起こった事例です。

2つの部がそれぞれ、SNSを通じた一般の方のキャスティングリサーチを行っていました。接触した連絡先はそれぞれの部でエクセルで管理し、新規で探し出した人に接触する場合、必ずお互いの部のエクセル内を検索し、以前にスタッフの誰かから連絡したことがないか確認を取ってから取材のお願いをする、という方式で作業を進めていました。事例が発生した時も、その確認はきちんと行っていたそうです。

では、2重に連絡をしてしまった原因はなんだったのか。

一つは、過去に接触した際と違うSNSから探し出したために、エクセルに記載してあったSNSのURLやID、ユーザー名が違い、被りのチェックから漏れてしまったこと。

もう一つは、スタッフが伺った本名や連絡先をこまめにエクセルに反映しておらず、情報の相互確認ができなかったことでした。

複数人で作業する場合、取材対象からお伺いした情報は全て共有することで、こうしたミスの防止につなげることができます。

2度連絡してしまった当事者の方には深く謝罪をしました。

■【まとめ】大変だけど、喜びも大きい!

最初に書いた通り、キャスティングリサーチはテレビ業界以外の方を相手に直接やり取りをする業務のため、対応を間違えればトラブルに直結する業務です。

しかし、だからこそ一つ一つのリサーチに対して丁寧に対応することになるので、相手に対して思い入れが出てきます。

あくまでネタを採用するか決めるのは制作スタッフなのでフォーミュレーションが取材を取り付けた相手が全てOAされるわけではありませんが、取材OKをいただいた方はどうかOAしてほしいと思いますし、採用され取材を受けている様子をOAで見ると、非常に達成感があり、友人がテレビに出ているような、誇らしい気持ちになったりもします。

放送後に取材を行った方から、
・長年の夢だったテレビ出演をすることが出来た!
・テレビに出たことで、私の人生、背中を後押ししてくれた感じがし好転しました!
・実はお店を近々辞めるつもりだったが、取材の話が来たことでもう少し頑張ってみようと思えるようになった!
など、嬉しいお言葉をいただくこともあります。

大変ですが、非常にやりがいのある仕事です!

以上、「キャスティングリサーチ」についてご説明させていただきました。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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