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『劇場版おっさんずラブ』を見てほしい

2018年にドラマ 『おっさんずラブ』 が放送されてからもうじき4年になります。
もう4年かー、そんなに経つんですね。でも、2022年になっても私のおラブへの愛は一向に冷めません。何故かわかりませんが、毎日この作品のことを考えています。
そんな私ですが、お正月に大好きな民友(おっさんずラブをこよなく愛する友人)さんと『おっさんずラブ』の映画ってやっぱり良かったよね!と熱く語り合い、そこから改めて劇場版について色々と考えてみました。
色々批判もされていますが『劇場版おっさんずラブ』が描いた世界は素晴らしいし、意義のある作品だと思います。この映画こそ、多くの人に見て欲しい。
そう思い、このnoteを書くことにしました。
なお、今回のnoteは数字の裏付けがあるものではなく、検証でもなく、いちファンによる作品への『ラブレター』ですので、その旨ご承知おきください。

まず『劇場版おっさんずラブ』について簡単に説明を…

2018年春にテレビ朝日系列で放送されたドラマ『おっさんずラブ』が大ヒットし、2019年8月にその続編である映画『劇場版おっさんずラブ Love or Dead』(以下、『劇場版』) が公開されました。
劇場版の興行収入は約26億5000万円で、観客動員数は191万人を超えました。これは2019年度の邦画興収ランキングでは12位にあたる素晴らしい成績となります。

興行的には大ヒットとなりましたが、『劇場版』は賛否が分かれる作品でした。

各レビューサイトでの評価は …

まず、各レビューサイトでの平均スコア。評価はそれほど高くないです。
Filmarksでは、3.8点。映画.comでは、3.4点。
Yahoo映画では、なんと…2.41点 です(全部5点満点です)。とほほ……

一番低いYahoo映画のレビューを見ると、下記スクショのように8割の人が最高(5点 / 24.3%)又は最低(1点 / 55.2%)のどちらかの評価を下しているので、好き嫌いがはっきり分かれた映画なのだと分かります。
最低の一つ星が多いですね……泣

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ファンも受け止め方は様々

この『劇場版おっさんずラブ』については『おっさんずラブ』ファンの中でも賛否が分かれました。
劇場版では、爆発やらカンフーシーンなど大掛かりなアクション部分に多くの時間が割かれ、2018年のドラマで多くの人の心を掴んだ主人公 春田創一と牧凌太を描く場面が少なかったことが一つの理由です。

以前 note でも書いたのですが、私が調べたところでは、SNS上で『おっさんずラブ』を熱烈に愛するファン(いわゆる 『民』)が最も支持して(愛して)いたのは、”春田と牧の関係” であり、”春田と牧のまわりの人々” でした。
ファンはドラマで恋を成就させた春田と牧の恋の行方を気にかけ、その二人を見守る黒澤や周囲の人物を愛していたのです。

しかし、劇場版ではそこを描いたシーンが少なかった。
それを考えると、爆破や新たなラブバトル(五角関係?)に重きを置いた本作に対してファンからの評価が分かれることも理解できます。

さらに、最後のシーンで、春田と牧は別々の方向に向かって歩いていきます。
これは、海外転勤に向かう牧を見送るシーンだったためですが、映画公開中にパラレルワールドの世界で春田創一が他の誰かと恋をする、という第二弾ドラマ(『おっさんずラブ in the sky』)の制作が発表されるという状況も相まって、別離でのエンディングに不満を持つファンが多かったのです。
私もこのエンディングについては、非常に寂しく感じました。

しかし、それでも私は『劇場版おっさんずラブ』が好きです。

それでも『劇場版おっさんずラブ』を好きな理由

1.春田と牧の ”恋” のその先を描いてくれたから

確かに劇場版の中で春田と牧の二人が登場するシーンは少ないです。
以前Twitterで二人が出ているシーンを計算してくれた方がいて、その方によると劇場版の中では合計約26分とのことでした。
映画の上映時間が114分の中、たったの26分です。割合で言うと22.8%、4分の1以下の時間しか、二人が一緒のシーンは無かったのです。
それでも、春田と牧はその26分で、二人の気持ちや関係がドラマの時から進んでいることを見せてくれました。

2018年のドラマは、春田が牧にプロポーズをするシーンで終わります。つまり、春田は牧に対する恋心に気づいたばかりで、二人の関係も始まったばかりでした。
牧が春田を好きだということは、林遣都の好演によって十分伝わってきましたが、春田の気持ちはまだまだこれから、という所でした。
ようやく牧への気持ちを自覚した春田がその後に牧とどんな関係を築くのだろうと多くのファンが気にかけていたと思います。

そして劇場版です。
ドラマ時の牧の片思いのような関係から一転し、劇場版では二人が共に恋愛に悩む様子が示されます。
これは、劇場版が ”結ばれた二人のその後” を描くことをポイントに置いているためです。
『おっさんずラブ』の貴島プロデューサーは劇場版制作時に下記のようにテーマを述べています。

「映画化が決まり、まずは頭を真っさらにして、そもそもどんなお話がいいのか、本当に続きを描くのが一番いいのか、というところからみんなで考えました。最終的に『連ドラを愛してくださった方々への誠意としても、逃げずに続きの物語を作ろう』という話になりました。連ドラの最後は、キャストの熱演の力もあって、春田と牧が感動的に結ばれた。でも冷静に考えてみると…春田はやっとこさ牧が好きだということに気付き、その気持ちを伝えただけ。恋愛は付き合ってからが本番、大変なことも山積み。映画では、ごく普通のカップルが直面するであろう問題と戦う姿を描くことにしました」

予告編では、春田が「牧と家族になりたかったんだよね」と言う一方、牧は「結婚って、本気で言っています?」と戸惑う様子を見せる。

「よく『恋愛と結婚は違う』と言いますが、結婚して他人と家族になるというのは、好きだけじゃ乗り越えられないものもある。そんな当たり前の壁に、春田と牧もぶつかります。

さらに現代は、恋愛と同等に仕事も人生の一部と考える若者が多い。忙しい日々につい忘れてしまいがちだけど、働く上での自分の夢は何か? もしくは何だったのか…? 年を重ねても子供みたいに夢を持ち続けられたらいいし、それを恋人や家族と共有し、背中を押し合える関係を築けたらいいなと願いを込めて…」

そう考え、映画のテーマを「夢と家族」に。それぞれのキャラクターがこの2つに思い悩む様が描かれる。

劇場版では「夢と家族」をテーマに、春田も牧も一番大切にしたいもの(お互い)を改めて理解し、二人の関係を考え、夢との両立を模索する様子が描かれます。

春田と牧、二人のシーンは少ないですが、どの場面からも二人がお互いを思い合い「好き」の続きに進むためにもがいている姿が伝わってきました。ドラマからは大きく進んだ二人の姿でした。
両想いの二人を見ることが出来たのは大きな喜びでしたし、春田と牧を演じた田中圭と林遣都が本当に二人のことを理解して演じてくれたため、そこにはウソは感じられませんでした。

幾つか例を出します。

まずは映画冒頭のシーン。
香港で単身赴任をしている春田の元を突然訪ねた牧。浮かれた様子は恋する人そのものでした。
あのクールでイケメンエリートの牧凌太が「ニイハオ!」と手を上げて嬉しそうに登場したことには度肝を抜かれました。同時に、ああ二人は春田が単身赴任中(ドラマの後)もこうやって愛を深めていたんだなぁと感じました。

そして、仕事終わりに食事をした二人が仲良く駅まで向かうシーン。そこでは少し酔っている設定なのか、恋人同士の二人がナチュラルにイチャイチャしている様子が映し出されます。
多忙な中でも春田と約束している花火大会を楽しみにしている牧のウキウキした様子。牧にキスされるかと期待する春田の顔、恋する二人は無敵でした。
それぞれ別の家に帰るため、分かれ道で牧に手を振る春田の表情は寂しそうでした。ドラマ時に春田への片思いに苦しむ牧の切ない表情を散々見てきた私には、春田の方がこんな表情をするなんてと、二人の関係が変わったことを実感する場面になりました。

そして、花火大会。
浴衣姿の牧を見た春田の「行こうぜ」という弾んだ声。そんな春田を見つめる牧のこれまた喜びを抑えきれない目。
りんご飴や綿菓子を食べる二人のはしゃいた様子。
綺麗に打ち上がる花火を見る牧に愛しい気持ちがこみ上げ、思わず手をつなぐ春田。そして人前で手をつなぐことに戸惑いながらも、嬉しさが隠し切れない牧。
ここも短いシーンでしたが、田中圭と林遣都の二人が『お互いを好きな春田と牧』をギュッと詰めて見せてくれました。

そして花火大会後半、ここは一転して二人が喧嘩をするシーンになります。
きっかけは些細なことですが、二人の気持ちはすれ違っていきます。
二人は互いに好き合っているのに、互いの言葉に傷つき、傷つけられていく。「愛してるからわかって欲しい、何故わからない?」というような言葉と態度の応酬。胸が痛むようなシーンをたっぷり見せてくれました。

私はこのシーンが好きですし、嫌いでもあります。
なぜなら二人の感情がぶつかる様子が余りにもリアルで、お芝居とは到底思えないからです。
大好きな二人が傷つけあう姿、何度見てもハラハラしてしまいます。
きっと俳優二人の技量や役への理解が同じでなければ、こういう感情がぶつかる名シーンは作れなかっただろうと思います。


そして、爆破現場の中で二人がお互いの思いを確かめ合うシーン。
普通に考えたら滑稽にも見える場面です。周囲を炎に囲まれているのなら、座って話してないでサッサと逃げればいいのに… なんて、私の中の常識は囁いてきます。
でも、そんな常識をすっ飛ばすほど、このシーンの二人は、このシーンの春田創一はすごいのです。
春田は牧に対して、自分が今まで考えてきたことを伝えます。
『牧と本気で家族になろうと思ってたこと』
でも
『男同士では法律上結婚できないこと』
『自分は子どもが好きだけど… (牧とは子どもは望めないこと)』

そして
『それでも牧と一緒にいたい』
『どんな牧でも牧がいい』
『牧じゃなきゃ嫌だ』
と究極のプロポーズをするのです。泣きじゃくりながら。(書いてる私も思い出して泣いてる)

そして春田の告白を聞いている牧も最初のちょっと皮肉混じりの表情から、段々と真剣な顔に変わっていき、最後は泣きながら春田を抱きしめ、『俺も春田さんじゃなきゃ嫌だ』とプロポーズの返事をするのです。
このシーンは、田中圭の圧巻の演技もあり、素晴らしいシーンとなっています。涙ぐちゃぐちゃでかっこ悪い春田さんが世界一かっこよく見える。そんな春田創一を作り上げた田中圭は本当にすごい!彼の熱演によって、ここも嘘のない、胸に迫るようなシーンとなっているのです。

そして、劇場版のラスト。
青空の中で、二人はキスをして別々の方向に離れていきます。
いつものようにふざけ合ったあと、牧の頬を優しく手で包みキスする春田とキスしながら春田の肩と腰にそっと手を置く牧。
とても自然で美しいキスシーンでした。
キスの後にしばらく見つめ合い、流れるように抱きしめ合う二人の姿も恋人同士そのものでした。
旅立つ牧は未来への高揚感と寂しさが入り混じった表情で。そして残される春田は寂しさと牧の夢を応援したいという二つの気持ちが混ざった複雑な表情で二人は互いを確かめ合います。

春田と牧は、恋人というだけでなく、お互い死んでも一緒にいたいほど大事な相手になったのです。

この通り、劇場版は2018年のドラマの後に私が見たかった 『春田と牧のその後の姿 = 恋のその先』をしっかり見せてくれました。
私がそうあって欲しいと願うよりも、もっと強固な関係となった二人として見せてくれました。
だからこそ、私は『劇場版おっさんずラブ』が大好きなのです。

そして、もう一つこの作品を好きな理由があります。
それは ……

2.大ヒットしたことにより、多くの人がこの作品を見てくれたから

前述したように、おっさんずラブファンの間でも、一般の皆さんの間でも、この作品への評価は様々です。
しかし、この作品を 191万人以上の人が見た、という事実は非常に大きなものだと考えます。
191万人という数字を近似の県別人口に置き換えて考えてみます。
東北だと福島県の人口が191万人、関東だと栃木県と群馬県が197万人、東海だと三重県が181万人、関西では滋賀県が141万人、中国では岡山が191万人、九州では熊本が178万人となります。
参照:下記ホームページ

たとえば群馬県に住んでいる方全員がこの映画を見た、と考えてみて欲しいのです。すごい数の人が見たことになりますよね。
そんな風に置き換えて考えると、この映画がヒットして、多くの方が見たことで社会に対してものすごく大きな影響があったと思うのです。

もう少し説明すると、それだけの方がこの映画で春田と牧が家族になっていく様子、二人が愛を育む様子、さらに言えば二人のキスシーンを見たのです。
私が知らないだけかもしれませんが、邦画で同性同士のカップルを描いた作品でこれほどヒットした作品は無いはずです。
この映画を見た人にとっては、同性同士のカップルは何も特別な存在ではないものとなったと思います。私たちの隣にいる存在だと思えたと思います。
私はそのことが嬉しいのです。
191万人という数字は、決して少なくない数字だと思います。
それだけの人にこの映画を見てもらえたということは、本当にすごいことだと思うのです。

そして、誰でも見られるテレビとは異なり、映画はわざわざお金を払って劇場に足を運ばなければ見ることはできません。映画館で映画を見るとは、極めて能動的な行為だと思うのです。
この映画は191万人もの人が見てくれています。もちろん私のように何十回も見るファンや人に連れられて渋々、という方もいるでしょう。
それでも191万人です。それだけの多くの方が見てくれたのです。この数字を見ると劇場版が社会にもたらした影響は大きく、意義のある作品だと思うのです。

この191万人という数字を達成するためには、爆破シーンなどの映画っぽい派手さも必要だったのかもしれません
それにより、より多くの人が劇場に足を運んでくれたのだとしたら、私はこれで良かったのかもしれないと思います。
民としての希望はもちろんありますが、爆破シーンに惹かれてこの映画を見た人も多いでしょう。

以前別のnoteでも、『劇場版おっさんずラブ』について、民以外の多くの人が観客となっていたはずという考察を出しました。

その時も感じたことですが、民と一般の多くのファンが望む『おっさんずラブ』の姿は異なります。
ですから、両者が100%満足するような作品を作ることはなかなか難しいのかもしれません。
それでも、どれだけ登場シーンが少なくても、田中圭と林遣都なら、春田と牧のシーンをきちんとリアルに作り上げてくれます。それは、この劇場版でもそうでした。
田中圭と林遣都が演じる春田と牧なら、どんな物語でもリアルにすることができるのです。それだけ二人の技量とそれぞれの役への理解、俳優としての相性がぴったりなのだと思います。

最後に

この作品では、春田が『同性同士では結婚できないこと』や『子どもを持つこと』に言及しています。
それは牧がドラマの時に悩んでいた『こっち側(同性愛)の世界でのことに春田を引きずり込みたくない』という問題を半歩進めたものだったと思います。
貴島プロデューサーが掲げたテーマの中の『逃げずに続きの物語を作ろう』の一部であるとも思います。

そうであれば、制作陣にはもう少しこの先を描いて欲しいと願います。
テレビドラマには、少し先のより良い未来を作る力があると感じます。現にこのドラマ『おっさんずラブ』で多くの人の意識は変わりました。もちろん私もそうです。自分がいかに何も知らなかったのかに気づくことができました。それほどまでにドラマの力は大きいのです。
だからこそ、もし劇場版の続きを逃げずに作ってくれたら、どれほど社会が前に進むだろうと思います。

劇場版の後、春田の母は二人の関係を受け入れられたのかどうか、再び遠距離となった二人の関係はどうなるのか、春田と牧はパートナーシップ制度を利用するのか、二人は子どもを持とうとするのか、天空不動産は二人を家族として扱うのか、などなど。描けることはたくさんあると思ってしまいます。
もちろん、そのためだけに続きを作って欲しいわけではありません。
とにかくこの作品に出てくる春田と牧、そして黒澤部長や武川主任など登場人物全員がとても魅力的なのです。だから、彼らの劇場版の後の姿を見てみたいと思うのです。

ここまで長々と『劇場版おっさんずラブ』への思いを書いてきました。私はやっぱりこの作品が大好きです。そして、もしまだ見たことがない、という人がいるのであれば、是非見て欲しいと思います。
きっとあなたの心に残ると思いますし、世の中の見え方が少し変わるかもしれません。

もしドラマ自体を未視聴なのであれば、どうかドラマから見ていただきたいです。大爆笑しながらも切なくて泣いてしまい、見終わった後にとてつもなく幸せになれる作品です。

ドラマ『おっさんずラブ』と映画『劇場版おっさんずラブ』、二つともとても素晴らしい作品です。どうか多くの人が見てくださいますように。そして、この続きが制作されますように祈っております。

読んでくださり、ありがとうございました!

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