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『おっさんずラブ』の林遣都を見てほしい。

私は筋金入りの『おっさんずラブ』ファンである。
ドラマは数十回見ているし、映画(2019年8月公開『劇場版おっさんずラブ Love or Dead』)も40回弱見ている。
両方ともセリフを言えるほど、つまりは飽きるほど見ている。
しかし、先日ドラマの1話と2話を見て、改めて心が震え、荒ぶる気持ちを抑えきれなくなったため、勢いでこのnoteを書いている。
荒ぶりの原因は、林遣都の演技である。

私は『おっさんずラブ』を作品として愛しているためいつも物語全体を見てしまう。だが、今回はあるツイートの影響で林遣都を中心に見てみようと思った。
それは林遣都主演で公開中の映画『犬部』のツイートである。林遣都のキャスティング理由として“目のお芝居”があげられているのだ。


そこで、大好きな作品で林遣都の“目の演技”を見てみようと思った。
『林遣都は目の演技が素晴らしい』というのは彼を誉めるときによく聞く言葉だ(目以外もすべてが素晴らしいのだけどね!)。実際ここで引用した映画『犬部』でもラストの彼の強い視線にこの映画の思いは集約されていると思うほど素晴らしかったを、
そうであれば『おっさんずラブ』での彼の“目”はどうだったのか?と思ったのだ。

話を戻すと、林遣都は『おっさんずラブ』では主人公である春田(田中圭)に恋する後輩の牧凌太を演じている。
よく言われていることだが『おっさんずラブ』の脚本は余白が多く、演出や俳優の裁量に任されている部分が多いようだ。
実際にドラマのシナリオを読んだだけでは、牧が春田に恋していく様子はそれほど胸に迫らない。


しかし、牧を中心にドラマを見ていると、たった一話の中で牧が春田に恋していく様子がありありとわかるのだ。 目の演技もそうだが、  "恋の始まり” や ”恋の苦悩” が瑞々しく見事に表現されている。そのためあっという間にドラマに引き込まれてしまうのだ。
1話と2話を見たら『恋ってこうだよね』と頷いてしまう。それほどまでにこのドラマの牧の恋には説得力があるのだ。
ではまず、牧凌太が恋に落ちる様子を見ていこう。

恋に落ちる牧凌太(1話)

1.出会い:
春田と牧は同僚に連れられて行った合コンで出会うのだが、その際春田は醜態を見せ、牧は春田について「そらモテねーわ」とつぶやく。
その時の牧の表情は春田に対して同僚以上の気持ちを抱いてはおらず、どちらかというと呆れている様子が見てとれる。

2.再会:
春田のいる営業所に異動してきた牧は、行く先々で街の人に好かれている春田の様子を見て、彼を好ましく思うようになる。仕事を通じて春田のことを見直し、先輩として尊敬するようになる。ただ、まだ好ましく思う程度で恋には至っていない。ここの牧凌太の春田への表情は必見。示されているのは恋ではなく好意だ。

3.春田からのルームシェアの誘い:
部屋探しをしているという牧に対し、ルームシェアを持ちかける春田。牧はパーソナルスペースが近い人が苦手な性格(公式本による設定)のため、春田の誘いに対してはどう対応すべきか迷っている。

4.ルームシェア開始後:
春田は牧の作ったご飯をものすごくおいしそうに食べる。その様子を見て、嬉しそうな表情を見せる牧。春田への好意が一段階上がったように見える。

5.春田特製虎の巻をプレゼントされた時:
春田が足で稼いだ大事な情報を手製のマニュアルにして牧にプレゼントしてくれた。この時の牧は完全に恋に落ちていると思う。うつ伏せ寝で顔の見えない春田の背中を優しい見る牧の目は確かに恋している。

6. ケガで病院に運ばれた春田に対面した時:
不安で揺らいだ目をしている牧だが、春田が無傷と聞き、「俺、もうどうしようかと思ったんですよ!」と取り乱す。目に涙をうっすらと浮かべ、恋する相手を心配している。
その後、黒澤部長(吉田鋼太郎)のただならぬ様子を見て一瞬でいぶかしげな表情に変わるところもまたよかった。

7. シャワー中の春田に告白しキスするところ:
その前のシーンから牧の表情がすごい。部長の春田への思いを確信し、部長に取られる前に自分の気持ちを伝えたいという思いに溢れた表情。のちに武川さんが言うところの「かっとなって告白した」という状態だろう。戦闘的な恋する気持ちが強い目線に込められている。
この後浴室に突入し、シャワー中の春田に「キョコンじゃだめですか」という伝説的なセリフとともにキスをするのだが、キスする前の熱に浮かされたような表情、驚いた春田に押し返された後の夢から覚めたような表情、すべてがとても演技とは思えない。
こんなふざけたセリフをギャグにならずに仕立て上げたのは本当に林遣都の力だと思う。そして、このシーンが1話の最後に挿入されたからこそ、1話から多くの視聴者の心を鷲掴みにしたのだ。

このシャワーシーンに臨む前の林遣都の様子が冒頭に添付した公式ツイートだ。林遣都はスタンバイ中からすでに牧になっている。すごい集中力でこのシーンを作ったのだと思う。

ということで、1話の牧からは人を好きになっていく様子が手に取るように伝わるのだ。

恋が止められない牧凌太(2話)

2話は冒頭から冷静になった牧凌太を見ることができる。
かっとなってキスしたはいいものの、その後冷静になり春田と目を合わせることもできない牧。恋するってこういう恥ずかしいこともたくさんあるよなと思う。
その後も揺れ動きながらも自分の恋を止められない牧凌太がここにいた。ちなみに2話はファンの間では神回 of 神回である。

1.春田に冗談だったとごまかす:
キス後の気まずい雰囲気を解消するために、牧は ”男子校のノリで冗談でやったこと” だと嘘をつく。
それに対して春田は安心した表情を見せ、「男同士でキスなんてありえない」と言う。
ゲイである牧はその言葉に傷ついた表情を見せる。
牧は自分を否定する自分のウソに自ら傷つき、自分の存在を否定するかのような春田の言葉に更に傷ついているのだと思う。
それもこれも”好きになってはいけない人を好きになってしまった” 自分へのどうしようもないやるせなさからであり、ここの牧の表情は恋がもたらす切ない思いをフルに表していて
、見ているこちらも辛い気持ちになる。
その直後に黒澤から春田への誘いを見て、またガラッと戦闘的な表情に変わるところもすごい。

2.牧 V.S. 黒澤部長 屋上での戦い:
この屋上での春田をめぐる戦いはドラマきっての名シーンである。コメディに振り切ったこのシーンがあるからこそ、ピュアなラブの部分が生きてくるのだ。ここのシーンが圧倒的に面白いのは林遣都だけでなく吉田鋼太郎と田中圭の力が大きい。
上司と部下という関係を超えて全力で春田を奪い合う部長と牧、それに翻弄される春田、というのはこのドラマを通じて描かれているストーリーの一つであるが、ここはコメディとしてそれを描いた最大の見せ場である。
3人が手を抜かずに本気でぶつかったことにより、この名シーンが生まれたのだと思う。

3.わんだぼうでの牧の告白シーン:
春田と牧ともう一人の素晴らしい出演者である内田理央演じる荒井ちずが作る名シーンである。
コメディではなく本気の恋のシーンである。
屋上で黒澤に楯突いた牧に苦言を呈す春田に対して、牧は「俺は春田さんを本気で好きなんですよ!」と激しい告白をする。その時の牧の口調、潤んだ目、真剣な表情、すべてが恋する人の強さ、まっすぐな気持ちを表していて、それを受けた春田もちずも牧の真剣さに気圧されたような素晴らしい表情を見せる。
そして、「そんなつもりで一緒に住んでるわけじゃない」と拒絶する春田に対して「最初からわかってますよ、それぐらい!」と怒りながら告げる牧。その強い言い方に牧の真剣さ、好きになってはいけない人を好きになってしまったやるせなさが見てとれる。
このシーンは無自覚に人を傷つける春田を演じる田中圭、牧の真剣さに心打たれ、春田をビンタし叱り飛ばすちず(内田理央)の二人の演技も素晴らしかった。何度見ても本当に起きた出来事にしか見えないリアルさがある。

4.公園のでこチューシーン:
牧はこの恋をあきらめようと思っていたのだろう。
でも春田は自分を探しに来てくれた。だけどきっと思いは叶わない。その春田に対し、牧は涙をたたえた目で「何もかも違うのに一緒にくらすことはできない」と告げる。
牧は春田のずるさがわかっていても、好きだから側から離れられない。それも恋の真実である。涙のたまった大きな目で春田を見つめ、優しいキスを送る牧の切ない恋心が見ている私にも痛いほど伝わり、胸が締め付けられた。

頭の中は牧凌太でいっぱい …

そして…

2話まで牧凌太に注目してドラマを見たら、私の頭の中はもう圧倒的に牧凌太になってしまった。牧の辛さ切なさが自分のものとなっている。
牧の気持ちが分からない春田にはもどかしさを感じ、牧のライバルである部長に対しては負けられない気持ちが沸々とわいてくる。
そう、自分の気持ちが牧凌太と一緒になっているのである。
おそらく2話終了時には多くの視聴者も程度の差はあれど牧の気持ちに共感し、牧の幸せを願う気持ちになってしまっているだろう。この牧への共感がこのドラマをラブストーリーの名作とした大きな理由なのだろう。3話以降、視聴者は牧の気持ちに寄り添いながら最後まで行くのだろうから。
視聴者をここまでの気持ちにさせたのは、林遣都の力である。

『おっさんずラブ』は1話と2話にとても力がある。だからこそ爆発的な人気となった。それはここの2話までで、牧や部長の恋する気持ちに視聴者が強く引っ張られるからである。
林遣都は恐ろしい俳優だと思う。このドラマはコメディだと思われそのタイトルから揶揄かいの対象となることもあるが、牧の真剣な表情、真剣な恋を見て、揶揄う気持ちになる人はいないと思う。

田中圭と吉田鋼太郎も凄まじい!

と、ここまで林遣都を中心に書いてきたが、田中圭と吉田鋼太郎もまたすさまじい演技を見せている。

田中圭演じる春田創一は、一方的に好きになられて、恋心をぶつけられ、戸惑う表情が素晴らしい。しかも相手に告白されて、気持ちをぶつけられると一生懸命応えようと泣いてしまう。
こんな魅力的な人いる?こんな誠実な人いる?
脳内が牧になっているせいかもしれないけれど、私はポンコツで人の痛みに敏感で優しい春田創一がまたしても大好きになった。
1話の時点で春田創一という人がとてつもなく魅力的な愛すべき人で、部長や牧が好きになって当然という人物になっているのだ。春田をここまで愛すべきキャラクターにしたのは、田中圭の力である
田中圭の春田創一だからこそ、このドラマに説得力をもたらしたのだ。

そして吉田鋼太郎が演じる黒澤部長。
仕事モードの時のリーダーシップに溢れた表情と恋する時の柔らかい表情。この硬軟二つの表情を操る吉田鋼太郎は素晴らしい。
特に春田に告白するシーンでは、長年の恋する気持ちを春田に真剣にぶつけ、その自分勝手なまでの思いの強さにうっかりほだされそうになってしまう(すみません、脳内牧なので)。
部長から春田への恋はストレートで純粋。強面の吉田鋼太郎が部長を演じることで、コメディ感は増すが、部長が春田に本気で恋している表情を見ると、こちらも胸がじーんとする。
『おっさんずラブ』とはおじさん同士が、イチャイチャしていることを揶揄うことを意味するのでは無いというのは部長の真剣な告白を見ればわかる。
妻がいながらも長年春田を思ってきた黒澤の本気の恋なのである。決して揶揄って良いようなことではないのだ。私だって脳内牧でなければ、部長の恋を応援したいと思う。
そしてここまで部長に感情移入してしまうのは、紛れもなく吉田鋼太郎の力である。

さて、『おっさんずラブ』全7話のうち、序盤の1話と2話を見ただけで、林遣都、田中圭、吉田鋼太郎のすごさがよくわかった。
どうかまだ『おっさんずラブ』を見たことが無い人がいたら、ぜひ見て欲しい。
必ず2話までにこのドラマの良さに引きずり込まれ、あっという間に7話まで見てしまうだろうから。
そして、恋している人や恋したい人、牧の表情を見て欲しい。恋に落ちるってこういうこと。落ちたくて落ちるわけじゃないけれど、落ちたら苦しいけれど、でも恋するってすばらしいっていうのがこのドラマの牧の表情を見ればわかるから。


とにかく『おっさんずラブ』の林遣都はすごいです。見ている私達を恋してる気持ちに連れて行ってくれるから。

どうかこの素晴らしい物語を多くの人が見てくれますように!

そしていつかこの物語の続編を見たい!見るまでは死ねない!と私はそんな思いでいます。
読んでいただきありがとうございました!


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