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真言の意味を知ることに意味がない理由

オン
アボキャ
ベイロシャノウ
マカ ボダラ
マニ ハンドマ
ジンバラ
ハラバリタヤ
ウン

「いきなり、なんだ!?」と思われたでしょうか。

これは「光明真言(こうみょうしんごん)」と呼ばれる密教の「真言」です。

真言とは「神仏の真の言葉」であり、仏さまそれぞれに固有の真言があります。

呪文のような言葉ですが、ついつい「どんな意味があるんだろう?」と気になりますよね。

でも、真言の〝本当の意味〟は言葉にできないし、かえって意味を知らないほうがいいそうです。

どういうことなのか、新刊『すごい真言』の解説から引用してみましょう。

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意味を知らずに唱えるのが最強

 真言は一つひとつの単語から意味するところを知ることよりも、唱えることが大事だとお伝えしました。私の念誦会のイベントでも、その真言に、どのような意味があるかを解説することはありません。
 とはいえ、必ずと言っていいほど「どういう意味なのでしょうか?」と質問をいただきます。言葉の意味を知りたいと思うのは人の性(さが)というものかもしれません。
 では、光明真言を例に、その意味をひもといてみましょう。
 光明真言は、さまざまな不幸事や災いから身を守ってくれるとされており、古く民間にも伝わる密教の真言の一つです。我々阿闍梨(あじゃり)も、お通夜やお葬式、納骨やお墓参りなど法事で多用する真言でもあります。
 これらの単語一つひとつを分解して意味を見てみましょう。

「オン」= 帰命(帰依します)
「アボキャ」= 不空
「ベイロシャノウ」= 光明遍照( 毘盧遮那如来を表し、大日如来のこと)
「マカ」=大
「ボダラ」= 印
(マカボダラで大印:五色の光明の印のこと)
「マニ」= 如意宝珠
「ハンドマ」= 蓮華
「ジンバラ」=光明
「ハラバリタヤ」=放ちたまえ
「ウン」= 種子

 
 真言のほとんどが日本語のような文章ではないので、一つひとつの単語から意味を感じて、その真の言葉からイメージを膨らませた方がわかりやすいかもしれません。
 私は、「大日如来さま、五色の大光明を照らしたまえ」のように、単語の意味というよりは、まるで風景のような、その場面、空間をイメージするようにしています。

小瀧 宥瑞 『すごい真言』より

意味を解説されても、仏教用語なので、なかなか難しいです。一語一語、解説がないと、理解できないコンセプトですので、これを考えながら唱えるのは難しいでしょう。

でも、だいじょうぶ。

「真言の意味を知ること」には意味がないというのです。

繰り返し唱えてこそ真言のパワーが発揮される

 光明真言は、仏の功徳がみっちり凝縮されている、とてつもなく強力な真言と伝えられています。だからこそ亡者を救いに導くことができるわけで、密教の呪術的な力を秘めている真言と言えます。
 この真言を唱えると、仏教でいうところの「滅罪」、まずは自分の罪を滅する祈りの力が働きます。罪を「闇」として見ているのです。続いて、仏さまの光をどこまでも照らすことで、すべての闇、つまり罪障が消滅します。やはりここでも大光明に照らされていることをイメージするといいでしょう。
 光明真言は、単語一つひとつの意味が比較的わかりやすい真言です。しかし多くの真言は、仏教を専門的に学んでいても頭をひねりたくなるような意味不明な翻訳言葉が出てくることのほうが多かったりします。伝統的に伝えられていても、阿闍梨によって意味に違いがある箇所も存在します。
 加えて、こうして言葉の意味を知ったところで、大日如来の宇宙レベルの叡智やご加護のすさまじさを完璧に表現することは困難です。
 それゆえ、意味を知ることよりも、真言を何度も唱えて仏さまにまっすぐに祈りを届けることが大切だとされているのです。

小瀧 宥瑞 『すごい真言』より

ちなみに大日如来(だいにちにょらい)とは、真言宗の中心であり、もっとも位の高い仏さまです。

 たとえば、薬師如来や観音菩薩、不動明王など、誰しもが一度は名前を聞いたことがある仏さまは、大日如来が姿を変えたものだと考えられています。
 もっと言えば、ほかの仏さまはもちろん、森羅万象は、大日如来から生まれたと考えられています。つまり、大日如来は、我々の住む地球、太陽系、銀河系、さらには今あなたを照らす光や風など、それら事象のすべてをひっくるめた全宇宙そのものなのです。
 
 真言は、真(まこと)の言葉であり、すべてが大日如来の言葉、音です。

小瀧 宥瑞 『すごい真言』より

なんと!

大日如来が全宇宙という、壮大なお話です。

ちなみに大日如来の真言はとても短くて覚えやすいものです。

オン バザラダト バン

これだけ。

毎日唱えると、いいことがあるかもしれません。

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(フォレスト出版編集部・寺崎翼)

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