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ボーンデジタルをつくってみてわかったこと

フォレスト出版編集部の寺崎です。

このたび、noteにて連載していました『ビジネスマンのための「武器としてのプログラミング」』(登尾徳誠・著)がkindleにて発売となりました。

タイトルは連載タイトル『ビジネスマンのための「武器としてのプログラミング」』がやや回りくどく感じたので、言葉をそぎ落としてシンプルに『ビジネスに役立つ武器としてのプログラミング』に変更。

こちら、編集部としては初のボーンデジタル商品です。

ボーンデジタル(読み)ぼーんでじたる(英語表記)born digital
作成,発生当初からデジタル形式で記録され,印刷されたメディアを持たず,電子メディアによってのみ作成され流通する情報をいう.冊子体が刊行されず,電子体のみが発行される電子ジャーナルや電子書籍,多くのウェブサイトが該当する.
(コトバンクより)

紙で出した書籍の電子化は編集者が制作過程に加わることはほとんどなく、社内担当者と印刷所のやりとりで完遂します。一方、ボーンデジタル(以下ボンデジと略)は最初から最後まで編集者が制作過程に携わります。

いやー、連載初日が2020年12月7日なので、なんだかんだで8か月もかかってしまいました。今回ボーンデジタルを初めてやってみてわかったことを備忘録的に書こうと思います。

わかったこと① 見本日がないから延びる

原稿の執筆期間そのものは紙の書籍と変わりません。筆の早い著者さんであれば脱稿は早いし、逆に遅筆家の著者さんであれば脱稿は遅い。

今回、脱稿は非常に早かったです。しかしなぜ、リリースに8か月もかかってしまったのか。それには理由がいくつかあります。

いちばん大きな理由は・・・
「見本日がないため発売日が自由に設定できる」

もうね、正直これに尽きますね。

これ、どういうことかというと、紙の書籍の場合は「見本日」というものがあって、これが「やべえ、これじゃ刊行間に合わん!」みたいな焦りを生じさせて、自ずと推進するところがあります。

ボンデジの場合はこれがない。

「見本日」とは完成した書籍を日販やトーハンといった取次に「書籍見本」として届ける日のことです(ですよね?違ってたらゴメンナサイ)。この「見本日」というものが決まると、必然的に「取次が全国の書籍に書籍を発送する日」「印刷所へ最終データを渡す日(入稿日)」「校了日」など、もろもろが決定します。

これに合わせて印刷会社は台を押さえます。「台」とは印刷機のことです。部数が多い場合は「輪転機」と呼ばれる大型の印刷機のスケジュールを押さえたりします。印刷機の台数は当然決まっていますので、スケジュールがずれると現場からは顰蹙を買います。

見本日から逆算して⇒入稿日⇒DTPに本文データを渡す日⇒デザイナーへ依頼する日⇒編集期間⇒脱稿日(原稿の〆切)など、一連のスケジュールを確定させていきます。

そして、見本日の営業日○○日後が「発売日」。発売日に合わせて事前販促準備をしたり、Amazonの書誌情報を充実させたりするのが常です。

つまり、紙の書籍の場合、「刊行がずれる」という事態が発生すると、迷惑をかける人の数がとんでもなく多いのです。著者、営業スタッフ、印刷会社、取次会社……。

一方、ボンデジは決まった「発売日」がないので、いくらでもスケジュールを伸ばせます。迷惑をかける相手は著者くらいです(著者のみなさま申し訳ありません!)。

そこで、今回対策を打ったのが、紙の書籍と同様に「みんなでお互いに毎週スケジュール管理をする」でした。やっぱり人間って、自分に甘いので、相互にチェックして当事者意識、問題意識を共有するのが大事だなと実感した次第です。

わかったこと② いちいち前例がない

紙の書籍であれば、原稿作成⇒編集⇒デザイン⇒入稿⇒校正⇒校了と、一連の流れを熟知していますので、それこそ寝っ転がってでもできるレベルです。

しかし、ボンデジに関してはこの「原稿作成⇒編集⇒デザイン⇒入稿⇒校正⇒校了」というすべての局面において、紙の書籍と様子が違うのです。

まず、入稿データはWORDかPDF。「えっ、インデザインじゃなくていいの?」と思いますよね。そうなんです。リフロー型(紙面が固定されないタイプ)のボンデジの場合、書体も文字の大きさも読者が自由に変えられるので、「レイアウトデザイン」というものが存在しません。故に、流し込むテキストデータさえあればOKなのです。

そのほかにも図版をどう処理するか…カバージャケットの画像サイズは…奥付の表記は…など、わからないことだらけでした。

いちばん紙の書籍と異なる景色だったのは「校正」です。通常の書籍の場合、商品の最終形態が「紙」ですから、校正も紙に出力したもので行います。一方、ボンデジは最終形態が「スマホやタブレットやPCの画面で読むもの」なので、同じ環境で校正しないと意味がないわけです。

ボンデジの最終データであるEPUB形式のプレビューを見るためには、専用のソフトウエアが必要になります。そこで活躍したのが、Amazon公式Kindle Previewerです。ただ、こちら、動作が不安定で、ファイルの読み込みにもめちゃめちゃ時間かかります。

Kindle Previewer以外にも、Chromeの拡張機能を利用した「Pub Reader」というのもあります。こっちはファイルの読み込みはめちゃくちゃ早いけど、表示がブラウザビューのような感じになってしまい、校正ツールとしてはイマイチに感じました。

わかったこと③ Amazonの規約が細かい

試行錯誤して、EPUBの校正も6校まで取って、「よし!いざkindleへアップロードぉぉぉぉぉおおおおおおお!」とポチったところ、以下のメールが。

「お客様の作品の一部またはすべてのコンテンツは、インターネット上で無料公開されています。」

え、どゆこと?え?え?

ああ!そうだ!これ、noteに全文無料公開してるんだった汗

AmazonのWEBクロール技術はすごいなー、なんてアナログ世代満載に感じたと同時に、これからの時代は「WEBに残したテキスト」に責任を持たないといかんな……と、改めて思いました。AIに検閲される時代だ。

というわけで、noteの連載記事はそれぞれnote販売最低価格の100円に設定させていただきました。kindleを買わずに、気になる記事だけ100円でお読みいただけます。

フォレスト出版編集部初のボーンデジタル書籍『ビジネスに役立つ武器としてのプログラミング: (Kindle FDBシリーズ)』(登尾徳誠・著)は、7月28日より絶賛発売中です。ちなみにUnlimitedでも読めますので、Kindleunlimited会員の方は読み放題です。

メジャー感のある、ピシッとした感じのカバーデザインを仕上げてくれたのは、デザイナーの三森健太さんです。ありがとうございました!


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