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子どもを勉強に向かわせる魔法の言葉かけ

フォレスト出版編集部の寺崎です。

最近は学校教育の現場がいろいろ変化している印象があります。「このままではまずい!」と焦っている感じが伝わってくるニュースとして、こんな記事がありました。

まさに、一夜漬けで乗り切ってきた昭和世代としては耳が痛い話です。

子を持つ親としては、勉強ができてもできなくても、とりあえず「勉強好き」「学ぶことに前向き」にはなってほしいという想いはあります。

「知らない知識を身につけるのは楽しいことだ」という体験を重ねた子と、「勉強はつまらない」「勉強は苦痛なこと」と思い込んでしまった子では、人生の豊かさに雲泥の差を生むことでしょう。

そんな親の気持ちに寄り添いつつ、具体的なメソッドが書かれているのが『「やる気」を科学的に分析してわかった 小学生の子が勉強にハマる方法』という本です。

これはとてもいい本です!
他社さんの本ですが、おすすめしたい。

著者は中学受験専門塾「伸学会」代表の菊池洋匡さん、同じく開発部主任の秦一生さん。

子どもを勉強好きにさせる具体的なメソッド満載で、小学生のお子さんを持つ親御さんには超おすすめ。

ちなみに、親が子にかける普段の声がけ、言葉かけが重要ということは最近よく言われることですが、子どもを勉強に向かわせるにも「親の言い方」がとても大事です。

なかなか勉強に取り組まないわが子に対して、「子どもが勉強したくなくなるワーストNo.1の言葉」である「勉強しなさい!」を言わないで、勉強に向かわせるにはどうしたらいいでしょうか?

『子どもに大切なことが伝わる親の言い方』(渡辺弥生・著)から該当部分を見てみましょう。

なかなか勉強にとりかからない子どもに対する言葉かけ

イラスト:後藤グミ

 親がよく使う言葉のランキングをつくったとしたら、「勉強しなさい」はベスト3に入るかもしれません。一方、効果のない親の言葉のランキングをつくれば、こちらもワースト3に入るでしょう。
「勉強しなさい」というフレーズは、わが子を勉強から遠ざけるだけで、決して勉強好きの子どもには育てません。
 なぜならば、人のやる気は、好奇心や自己決定感(自分でそのことを決めたからには、やるという感情)から生まれるからです。親が「勉強しなさい」と言えば、子どもの自己決定感は削そ がれます。この時点で、子どもの心は勉強から離れていきます。実際、「勉強が好き」という学生の話を聞くと、「親に勉強しなさいと言われた経験があまりない」と話す人がほとんどです。
 しかも、「勉強」とは抽象度の高い言葉です。そのため、「勉強しなさい」と言われても、子どもは何から始めてよいかわかりません。

|自己決定感を持って勉強に
|向かわせる魔法の声かけ

 この2点を考慮して言葉かけをするならば、たとえば、「漢字の練習と算数のドリル、どっちやる?」などと選択肢を具体的に示して、自分で選ばせると効果的でしょう。
 こうすると、「自分で決めたからやろう」と子どもの自己決定感を高めることができます。
 ただし、小学校高学年くらいになると、この言葉かけでは誘導できないことも多くなっていきます。学校でがんばって疲れているぶん、家ではゆっくりしたい気持ちが強く働くからです。この場合は、時間の段取りの選択肢を示してあげるとよいでしょう。

「休憩する時間もとても大切だよね。ただ、学校から帰ってもう1時間になるよ。このままもうちょっと休憩する? そのぶん睡眠時間が減っちゃうけど」

 すると、「あと20分休む」などと答えるでしょう。親のほうも、あと20 分かと思えば、イライラせずにすむと思います。

|勉強好きになるには
|「メタ認知能力」が大事


 子どもの心を勉強に向かわせるには、声かけ以前に重要なことがあります。
 なぜ、子どもが「勉強したくない」と思っているのか、そこを探ることです。まず考えられるのは、どこかでつまずいているのではないかということです。
 心理学の用語に「メタ認知」があります。メタとは「高次の」という意味で、「認知」は「理解・判断・論理などの知的機能」のこと。つまりメタ認知とは、自分の認知活動(行動や考え方、性格、学習など)を客観的かつ俯ふ 瞰かん的に見られるようになる力のことです。イメージでいうと、少し
離れたところから自分を見ているような感覚です。
 学習面においても、メタ認知の力がついてくると、何をわかって、何がわからないかが自分自身で客観的に判断できるようになります。
 勉強が好きな子は一般に、このメタ認知の力が高いとされます。そのため、「わからないな」と思うところが出てきたら、その部分をふり返って、十分に理解できるようにしてから先に進むということを自らしていきます。
 反対に、勉強が苦手な子は、メタ認知の力がまだ十分に育まれていない可能性が考えられます。先生が教えてくれたことを、なんとなくわかったような気がするけれども、実際には「何がわからないかが、よくわからない」という状態です。こうなると、わからないことが連鎖的に続いていくことになり、自分自身ではどうしてよいかわからなくなります。
 ですから、わが子が「勉強嫌い、面倒」という場合には、まずは親が寄り添って「何がわからないのか」を明らかにしてあげる必要があります。「ここまではわかっているんだね。よしよし。じゃあ、ここはわかる?」と一つ一つ確認していく。
 そして、このあたりから理解できなくなってきているな、と見えてきたら、「何を難しく感じているか」をゆっくりと聞いてあげましょう。その部分を理解できたときには、「すごい!」とほめたうえで、モニタリングできた苦手なところをどのように対応していけばよいか具体的な方法を教えていきます。たとえば、「これと同じ問題を、もう1回やってみよう」と段取りを組んであげることです。
 このようにていねいに寄り添っていくことで、子どものメタ認知の発達を促しつつ、「わからないことがわかるようになる」という勉強のおもしろさを伝えていけます。

***

勉強しない子に手を焼いている、そんなママパパの必殺技として「選択させる」をぜひ試してみてください。

ちなみに最近では、子どもを勉強の世界から遠ざける悪魔の装置として「スマホ」と「ゲーム」があります。

「ゲームばっかりしてないで、勉強しなさい!」

こんな風に言ってしまいがちですが、これにも発達心理学の観点からみた「適切な言い方」があります。

勉強せずに「ゲームやっていい?」という子どもに対する言葉かけ

イラスト:後藤グミ

「ゲームは勉強をしてから」というルールは、どこかで続かなくなりやすいものです。
 子どもが幼いうちはお母さんの言うことをまだ聞きますが、学年が上がるにつれて、子どもにも知恵がついてきます。
 すると、毎日のルールを自分に都合のよいように解釈することが出てきます。
 
 実際にこんな例がありました。
「ゲームは勉強をしてから」「ゲームの時間は1 日1 時間」と決めていた家庭で、子どもが2 時間近くゲームをやめなかった翌日、お母さんが「昨日、ゲームの時間の約束を守らなかったから、今日はゲームなしね」と言ったところ、小学校4 年生の息子が「ゲームができないなら、勉強はしない」と答えたそうです。
 あるときには、こう言ったそうです。

「今日は別にゲームしたくないから、勉強もしなくていいよね?」

 お母さんが「勉強は自分のためにするものであって、ゲームのためにあるわけじゃないでしょ!」と言っても、ゲームすることを勉強の報酬ととらえるようになっていた子どもは、もはや聞く耳を持たず、お母さんは困ってしまった……とのことでした。
 では、いったいどうすればよいでしょうか。

|自己決定感を与えて
|勉強に向かわせるコツ

 大切なのは、これまでもくり返し出てきた「子どもに自己決定感を与えること」です。「自分で決めたことは、やる」という心理を利用していきます。
 たとえば「勉強してからゲームにする?」「それとも、ゲームしてから勉強にする?」と尋ねて、どちらを先にするか、決めさせるのも方法の一つです。
「ゲームしてから勉強する」と子どもが答えたとしても、「それだと、勉強する時間がなくなっちゃうんじゃない?」と言ってはいけません。この一言は、子どもの自己決定感を満たさないことになるので、子どもを伸ばす言葉かけにはならないからです。
 その場合は、もう一度子どもに自己決定できる機会を与えます。どのくらいの時間をゲームに使うのか、前もって子どもに決めさせるとよいでしょう。
 といっても、単に「ゲームを何分やる?」と尋ねれば、「2 時間」とか「3 時間」などと好き勝手に答えるでしょう。
 ここで引き出していきたい子どもの能力が、「段取り力」です。

「夜10 時が寝る時間でしょ。それまでに、ご飯とお風呂で1 時間半は使うよね。今が5 時だから、残りは3 時間半。この時間のなかで、ゲームと勉強を両方やるには、どんなふうに時間を使おうか? 勉強にはどのくらいの時間が必要?」

 こんなふうに就寝時間から逆算して、タイムスケジュールを一緒に考えてみましょう。それを紙などに書いて、子どもが見えやすい場所に貼っておいてはどうでしょうか。
 それでも、子どもはゲームをずるずるとやり続けてしまうかもしれません。気がついたら、勉強もせずに寝る時間……ということも起こります。
 この場合は、「子どもに気づきを与えるチャンス」です。
 ここで有効になるのが「説明的・誘導的なしつけ」です。

「今日のような時間の使い方だとうまくいかなかったね。どうしようか?」
「ルールを変える必要があるかなぁと思うけど」
「〇〇くんはどう思う?」


 このように問いかければ、「じゃあ、明日からはこうする」と、自分自身で時間を調整するでしょう。こうしたことをくり返して自分を客観視させていくことが、メタ認知の発達をうながす絶好の機会になります。
 
「一つ提案だけどさ、勉強してからゲームをする、という順番してみるのはどう? 勉強を先に終わらせれば、すっきりした気持ちでゲームを楽しめるんじゃない?」

 さらに、こんな知恵を授けてあげれば、子どもの心に親の言葉がストンと落ちるかもしれません。

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ここで示した事例のように、すんなりとうまくいくケースは少ないかもしれませんが、ポイントは次の3つです。

◎自己決定感
◎段取り力
◎説明的・誘導的なしつけ

わが子を勉強好きにさせるヒントになれば幸いです!


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