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60年前から変わらない「アイデアの公式」とは?

フォレスト出版の寺崎です。

先日、雑談をしていたときに「企画アイデアとかタイトル案って、なんだか知らないけど、朝の起きがけとか、トイレとか、お風呂入ってるときとか、そーいうときにフッと降りてくるよね」という話になった。

なんででしょうね。
なんでかな。

というわけで、「アイデア」に関する古典といっていいジェームズ・W・ヤングが書いた『アイデアのつくり方』をひさびさに読み返してみた。

アイデアのつくり方に「公式」はあるのか?

いや、そもそも「アイデアのつくり方」というものはこの世に存在するのか。

 南太平洋の海に突然島が出現するという物語に架空小説(ロマンス)が付与しているあの神秘性をアイデアというものも幾分もっていると私は思ってきた。
 昔の船乗りたちによると、海図の上では深い青海原しかないところに突如として美しい珊瑚の環礁が出現することになっている。あたりには不思議な魔法の気(け)がただよっている。
 アイデアもこれと同じだと私は考えてきた。それは同じようにだしぬけに私たちの心の表面に顕れてくる。同じような魔法の気に包まれて、同じような不可解さを伴って。
 しかし、南海の珊瑚は実は無数の目に見えない珊瑚虫の海中におけるしわざであるということを科学者たちは知っている。
 そこで私は自問してみた。〈アイデアだってこれと同じことではないだろうか。それは、私たちの意識下で進行するアイデア形成の、長い、目に見えない一連の心理過程の最終の結実にほかならないのではないか。
 もしそうなら、この心理過程は、意識してそれに従ったり、応用したりできるように跡付けてみることができないものだろうか。端的にいえば《アイデアをあなたはどうして手にいれるのか》という質問に対する解答として一つの公式なり技術が開発できないだろうか〉と。

青海原に突縁珊瑚礁が出現するのは、じつは科学的根拠があって、「珊瑚礁=アイデア」と捉えれば、人間が生み出すアイデアについても、「公式」なり「つくり方」が導き出されるはずだ、というわけです。

アイデアが生まれる際の2つの原理

本書では「アイデア作成の基礎となる一般的原理」が2つあると書いてあります。

① アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
② 既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい

 いうまでもないが、この種の関連性が見つけられると、そこから一つの総合的原理をひきだすことができるというのがここでの問題の要点なのである。この総合的原理はそれが把握されると、新しい適用、新しい組み合わせの鍵を暗示する。そしてその成果が一つのアイデアとなるわけである。
 だから事実と事実の間の関連性を探ろうとする心の習性がアイデア作成には最も大切なものとなるのである。ところで、この心の習性は練磨することが可能であるということは疑いようのないところである。広告マンがこの習性を修練する最もよい方法の一つは社会科学の勉強をやることだと私は言いたい。例えばヴェブレンの『有閑階級の理論』、リースマンの『孤独な群衆』のような本の方が広告について書かれた大概の書物より良い本だということになるのである。

事実Aと事実Bを組み合わせて、その新しい組み合わせの関連性からアイデアを導き出すのは、トレーニング次第で誰でもできるようになるし、そのためには広告ノウハウの本じゃなくて『有閑階級の理論』『孤独な群衆』みたいな社会科学の著作がオススメ・・・ということです。

なぜ、社会科学の本がいいのかについての説明が一切ないが、おそらく想像するに、人間の心、社会、市場、自然科学・・・・・・といった、それこそ事実と事実の組み合わせ的な学際ジャンルであることから、ビジネスやマーケティングのような実の世界に活きる「モノの見方」が養える点にあるのではないか。

アイデアを作る実際の方法

ここまでは「アイデアとは何か」という概論でした。では、さっそくその「つくり方」をみてみましょう。

アイデアのつくり方のステップは、大きく分けて5つあるそうです。

① 資料を集める(インプット)
② 資料を咀嚼する(組み合わせ&アウトプット)
③ いったん寝かす
④ アイデア誕生
⑤ アイデアのチェック

ステップ① 資料を集める(インプット)

アイデアはある事実と事実の組み合わせ。であるならば、アイデアの素になる事実をたくさん知らないと話になりません。で、まずはたくさんの事実をインプットしていく。

 諸君はシャーロック・ホームズの推理小説の各所に出てくるあの有名なスクラップブックのことを覚えておられるだろう。そして、この名探偵がそのスクラップ・ブックの中に自分が書きためた個々の半端な資料を様々な角度から何度も索引分類して暇つぶしをするあのやり方を思い出されるにちがいない。私たちは、アイデア作成家の製粉機にかける穀物となりうる、ほんの束の間に消え去る莫大な量の資料――新聞の切り抜き、出版物の記事、直接自分が体験した事柄など――にしょっちゅう出くわしている。こういう資料から一冊の有益なアイデアの種本を作ることも可能である。

ステップ② 資料を咀嚼する(組み合わせ&アウトプット)

インプットした情報を今度はアウトプットして、さまざまな組み合わせのかけ算を試みます。

 諸君がここでやることは集めてきた個々の資料をそれぞれ手にとって心の触角とでもいうべきもので一つ一つ触ってみることである。一つの事実をとりあげてみる。それをあっちに向けてみたりこっちに向けてみたり、ちがった光のもとで眺めてみたりしてその意味を探し求める。また、二つの事実を一緒に並べてみてどうすればこの二つが噛み合うかと調べる。
諸君がいま探しているのは関係であり、ジグソー・パズルのようにすべてがきちんと組み合わされてまとまるような組み立てなのである。

ステップ③ いったん寝かす

頭の中でさんざん捻ったら、いったんそこから離れます。

 諸君はシャーロック・ホームズがいつも一つの事件の最中に捜査を中止し、ワトソンを音楽会にひっぱりだしたやり方を記憶されているにちがいない。実際家で融通のきかないワトソンにとってはこれはひどくいらだたしい手順であった。しかしコナン・ドイルはすぐれた創作家で創造過程というものがどんなものかをよく知っていたのである。
 だから、アイデア作成の第三段階に達したら、問題を放棄して何でもいいから自分の想像力や感情を刺激するものに諸君の心を移すこと。音楽を聴いたり、劇場や映画に出かけたり、詩や探偵小説を読んだりすることである。
 第一の段階では諸君は食料をあつめた。第二の段階ではそれを十分に咀嚼した。いまや消化過程がはじまったわけである。そのままにしておくこと。ただし胃液の分泌を刺激することである。

ステップ④ アイデア誕生

ここですね。記事の冒頭で抱いた疑問点です。妙な瞬間に「あ!」と降りてくるアイデアの神様。

それは、諸君がその到来を最も期待していない時ーーひげを剃っている時とか風呂に入っている時、あるいはもっと多く、朝まだ眼がすっかりさめきっていないうちに諸君を訪れてくる。それはまた真夜中に諸君の眼をさますかも知れない。

ステップ⑤ アイデアのチェック

最後のステップです。書籍企画であれば企画会議ですね。他人の目を通したチェックをします。

 多くの良いアイデアが陽の目を見ずに失われてゆくのはここにおいてである。発明家と同じように、アイデアマンもこの適用段階を通過するのに必要な忍耐や実際性に欠けている場合が多々ある。しかしアイデアをこのあくせく忙しい世の中で生かしたいのなら、これは絶対にしなければならないことなのである。
 この段階までやってきて自分のアイデアを胸の底にしまいこんでしまうよう誤は犯さないようにして頂きたい。理解ある人々の批判を仰ぐことである。
 そうすれば驚くことが起こってくる。良いアイデアというのはいってみれば自分で成長する性質を持っているということに諸君は気づく。良いアイデアはそれをみる人々を刺激するので、その人々がこのアイデアに手をかしてくれるのだ。諸君が自分では見落としていたそのアイデアがもつ種々の可能性がこうして明るみに出てくる。

「序文」「日本の読者のみなさんに」含めて62ページしかない本ですが、これほど端的に「アイデア」に関する深い知見が凝縮されたコンテンツは類を見ません。原著の初版は1960年。いまからちょうど60年前です。

「アイデア」というと何か、クリエイティブな職種の人にしか関係のない印象がありますが、私はそうは思いません。

ジェームズ・W・ヤング「アイデアのつくり方」は抽象度が高いので、営業マンだって応用できるし、あらゆる業種業態のビジネスに活用できると思う。表現はちょっと固めですが、1時間で読めるので、おすすめです。

帯には、こうある。

60分で
読めるけれど
一生あなたを
離さない本

いいコピーだなぁ!

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