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【本題はコチラ】K-POPだけじゃない!韓国の文化輸出の本気度を垣間見た話。

「K-POPだけじゃない!韓国の文化輸出の本気度」と銘打った記事を投稿しておきながら、結局K-POPのしたたかな戦略のお話に終始してしまった感がある先週の記事ですが、今日が本題です。

アンケートに答えるだけで100ドルくれる

事の発端は、遡ること2020年3月。見知らぬメルアドから、英文メールが届きました。なんでも、K-BOOKについてのアンケートで、答えると口座に100ドル振り込みます、というもの。KPIPAという団体が関係しているようで、調べてみると「韓国出版文化産業振興院」という組織がヒットしました。

しっかりした政府機関のようですが、送り主のメルアドはgmail。う~~~~ん、怪しい・・・。また、こうした一斉メールは、送り先のメルアドをBCCに入力するのが常かと思いますが、TOの箇所に30件くらいメルアドが並んでいます。

送り先がフルオープンになっているので、どれどれ、どこに送っているんだろうと見てみると、ドイツやフランスと思しきメルアドに交じって、日本の出版社のメルアドがいくつか混じっていました。ん? ということは、ちょっと信用できる?? その前年にフランクフルトブックフェアに行っていたので、現地で名刺交換でもしたのかな・・・? お金を送れ、ではないから大丈夫?? などと思い、海外版権担当者に許可を取り、アンケートに答えてみました。「アンケートに答えるだけで1万円くれるのか~、韓国って本当に文化輸出に積極的なんだなぁ」。それが当時の感想です。

参加するだけで250ドルくれる

それから1年が経って2021年5月。今度は、海外版権担当者宛に、KPIPA主催のオンライン輸出相談会のお知らせが。1日商談会に参加して、韓国の出版社から、一対一で、直接、書籍のプレゼンを受ける、というもの。KPIPAから仲介業務を委託されているらしい、招待メールの送り主のメルアドは、今回もフリーメール。そして「参加いただければ250ドルを振り込みます」の一文が。

やっぱり、フリーメールは気になるなぁ、と思い、いつもやり取りをしている韓国の版権エージェントの方に、「この商談会知っていますか?」と尋ねると、「出版社が直接参加しているからエージェントには連絡がないようです。こうしたイベントがあったこと自体知りませんでした」との回答。

メールにある送り主の署名はそれっぽい会社ですし、ホームページもあるので、韓国はビジネスもフリーメール文化なのかな・・・などと解釈。11時から18時拘束されて250ドルもわるくない、掘り出し物があれば万々歳だし、と参加を決めました。

ニューヨークで、コロナのワクチンを接種すると100ドルをプレゼントする、というニュースがありましたが、参加を促すのに現金の右に出るものはないですよね。韓国のあざとさ、さすがです。

いざ参加を決めると、これまでの韓国との取引実績や、企業情報などを提出する必要があり、締め切りも常にタイトでなかなか手間ではありましたが、250ドルもらうのに、適当にやるわけにもいかぬまい・・・と粛々と課題提出をこなしました。

ちなみに、招待メールは日本語でしたが、エントリーしてからはすべて英語で連絡が来るうえに、課題もすべて英語なので、翻訳ソフト経由のかなり怪しい英語もしくは韓国語で回答。「回答をもとに参加できるか審査しますので」みたいに読める英文があったため、ドキドキしながらやり取りをしました。そして締め切りはいつもタイト。途中、この作業量で250ドルは安いんじゃないか、などと思ってしまったことは否めません。

無事、参加が認められ、商談したい韓国の出版社を選ぶことに。ここでも資料はすべて英語なので面食らいましたが、コロナ前まで4年くらい、毎年韓国の出版社と商談する機会があったので、リストにはちょこちょこ知っている出版社もありました。過去に商談したことがあるということは、フォレストの書籍に興味がある出版社ですので、フォレストと相性のいいタイトルを持っているはず、と知っているところをいくつかピックアップ。また、今まで商談したことのない出版社を半分くらい選んでオファーをしました。

弊社と商談したいと言ってくれているっぽい出版社の一覧(英語なので薄い理解)もあったのですが、ライトノベルなど、明らかに方向性の違う出版社は心を鬼にしてスルー。

「これ、断られることもあるのかな・・・?」と、ここでもドキドキしながら結果を待ったところ、こちらの希望通りに商談が決まり、トップバッターは、毎年商談でお会いしていて、インスタでもお互いの近況を確認しあっている方で当日が楽しみに。

各国の言語が飛び交う激アツの商談会

さて、いざ、本番です。時間になり、指定のzoomのURLに飛ぶと、ヘッドセットをつけた通訳の方とご対面。私はゆるっと自宅からの参加でしたが、zoom画面の余白から、現地会場はなかなかしっかりした場所らしいことがわかりました。ザワザワと後ろの方で、行きかう人々の声が聞こえてきます。zoomの背景をオフィスっぽい画像に変えるべきかと悩みましたが、Wi-Fiの安定性を優先して、素で臨みました。

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当日、現地会場で設置されていた弊社との商談ブースを示す看板

多くの版権担当の方は、会場から商談に臨まれており、オファーできるかもわからないのに、気軽に申し込んですみません、という気持ちに。韓国はIT化が進んでいるわりに、コロナ禍でも出社するパターンが多いようで、会場に足を運ぶのもいとわないという感じではありましたが・・・。

始まってみると、zoomを通して、英語や中国語で商談する声が漏れ伝わってきたり、なかなかの活気。(中国語の商談の声はかなり激しかったです)

写真の立派な看板は、商談後、現地から送られてきたものなのですが、250ドルあげますよ、という釣りでもなんでもなく、本気の商談会だったことを再確認させてくれました。

版権担当者が商談に参加する場合と、編集者が参加する場合があり、1人、社長であり編集長でもある方と商談したのですが、ご自身が企画編集した書籍を怒涛のように紹介してくれ、弊社とはちょっとジャンル違いではあったのですが、その熱い口調にほだされました。(編集者は他にもいるとのことでしたが、紹介されたタイトルはすべて編集長が担当したものでした)

韓国でしか通じなさそうな、韓国の伝統や風俗にもとづいたタイトルはそのまま日本に持ってくることはきびしいですが、インスピレーションをもらった、ということで、日本人の著者で同じような企画を立てるのも面白いのではと思ったり。

韓国の出版業界は9割女性と言われるくらい女性率が高いため(ちなみに怒涛の編集長は男性でした)、ちょいちょいBTSネタに会話に挟み、zoomの画面ごしにBT21をチラ見させてアイスブレイクしつつ、個人的欲求も満たしました。通訳の方がBTS好き、とのことで、通訳の方とのラポールはばっちり築けたかと思います。

大手出版社も多数参加していましたし、通訳の方もついて、あんな立派な看板もつくってくれ、参加するだけで250ドルもらえる。もう何年も行われている商談会のようなので、実績も上がってるのだと思いますが、なかなかの先行投資ですよね。

やっぱりお金をボンボンをくれる

なお、KPIPA(韓国出版文化産業振興院)では、海外で翻訳出版される韓国の出版物を対象に2500ドル(1巻あたり)を援助する事業もしているそうです。

以前に、韓国文学翻訳院という政府機関が、海外の出版社が韓国図書を翻訳出版する際に、500万ウォン程度(約50万円)の翻訳費用を支援している、と聞いたときも、韓国ヤバい、と思いましたが、アンケートや商談会といい、小まめに自国のコンテンツ輸出を後押ししていることがよくわかります。

日本でもここ数年、エッセイを中心に韓国の書籍がベストセラーになっていますが、K-POPが人気だからK-BOOKも人気なのだ、とは一概に言えない政府のバックアップがあるんですね。

以上が韓国の文化輸出の本気度を垣間見た話でした!

(編集部 杉浦)

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