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【フォレスト出版チャンネル#139】フリートーク|編集者おすすめの3冊【5】

このnoteは2021年5月27日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

『宇宙からの帰還』(立花隆・著)

今井:フォレスト出版のパーソナリティを務める今井佐和です。今日は「編集者おすすめの3冊」ということで、素敵なスペシャルゲストをお呼びしています。フォレスト出版編集部の杉浦さんです。杉浦さんよろしくお願いします。

杉浦:よろしくお願いします。

今井:今日は杉浦さんのおすすめの3冊ということでご紹介をいただくんですけども、どんな感じの3冊になりますか?

杉浦:結構バラバラで共通点はないのですが、思い出深い本もあれば、純粋に読んでいて楽しかったみたいな本もある感じで、緩急を織り交ぜて選んでみました。

今井:ありがとうございます。では、その3冊をさっそく紹介していきたいと思います。ではさっそく1冊目をお願いします。

杉浦:はい。立花隆さんの『宇宙からの帰還』という本です。これは1983年に刊行されたかなり古い本で、私が生まれた頃に出た本なんですけど、私は今から10年くらい前に読みました。この本がどういう本かって言うと、1950年代から70年代にアメリカとロシアが宇宙開発競争っていうものを行なっていたんですね。

今井:そうですね。冷戦の一環みたいなかたちで。

杉浦:そうです! もうちょっと具体的に言うと、宇宙開発競争って言うのは人工衛星を打ち上げたり、人間を宇宙空間に送り、そして月に人間を立たせる技術をどっちが開発するか、いかに先に人間を宇宙に送るかみたいな感じで、二か国が競争していたっていう当時の話なんですけど、その頃に宇宙に行ったアメリカの宇宙飛行士12人に立花隆さんがインタビューしたというものです。
他社なのですが、『夜も眠れないほど面白い〇〇』っていうシリーズがあるんですね。『夜も眠れないほど面白い物理』とかそういうやつなんですけど、その「夜も眠れないほど面白い」っていう表現がまさにこの本を読んだ当時の私にぴったりだったと言うか、結構分厚い本で字も小さいので、ずっと読んでいると夜も遅くなっちゃうし、明日も会社だから寝なきゃってなるんですけど、それでも寝るのが惜しいくらい面白いなと思って、当時夢中になって読んだというのがあります。
なんでこの本を立花隆さんが書いたかと言うと、宇宙飛行士として宇宙に行くというのは、地球環境の外に出るっていう非常にまれな体験をした人たちってことじゃないですか。だけど、「宇宙ではこういうことが観測されました」みたいな科学的な技術的な話っていうのはたくさん記録として残っているのに、宇宙飛行士の人たちが宇宙に行ってどういう体験をしたかっていう内的なことに関して語ったものがないんですよね。

今井:確かにあまり見ないですねー。

杉浦:そうなんですよ。立花隆さんは、宇宙というものを体験した彼らは「宇宙体験というものによって人間の意識がどう変わるのか」ということに興味を持ってインタビューして、まとめた本なんですね。

今井:人間の意識がどう変わるのか。

杉浦:そうそう。宇宙という圧倒的な地球とは全然違う大気もないような環境なわけじゃないですか。重力もないみたいな。そういうところに行ったら、それまでの自分と同じ自分でいることはありえないみたいな話もあったりして。宇宙飛行士って、帰ってきたらヒーローじゃないですか、宇宙に行くって。日本でも私たちの世代だと毛利さんとか。

今井:すごいですよね。

杉浦:野口さんとかいらっしゃるじゃないですか。国民的なヒーローであって、彼らは肉体も強靭だし、精神も安定していて、宇宙に行ってトラブルに見舞われても対応できちゃうような、それですごく頭もいいんですけど、そういったところでブランドもあるから戻ってきた後にビジネスマンとして成功するっていう場合もあれば、中には宗教に目覚める人がいると。

今井:えー! そんな方が!

杉浦:そうなんですよ。それがすごく面白くて、宗教家になった人のエピソードが結構出てくるんですけど。

今井:多めなんですか?

杉浦:多めですね。

今井:ふーん。意外です。

杉浦:それで、彼らが宇宙で何を体験したかという話が出てくるんですけど、月に降り立って、全くの静寂、無音で音がなくって、性質で月って言うのは身震いするほどの荒涼さがあると、そこにものすごい荘厳さがあって、美しさを感じて、神がいると感じたとか。

今井:なるほどー。

杉浦:そうなんですよ。今ここに「神がいるって思った」とか、「本当に神っているんだって思った」とか、そういう話が何人からか出てきて、すごーいと思って、私もちょっと神を感じたいなと思って(笑)。

今井:宇宙に行くしかないですね。

杉浦:そうそうそう。私、飛行機とかもあまり得意じゃないんですけど、ちょっと宇宙に行ってみたいなと思って。

今井:神を感じたいんですね。

杉浦:そう。そういうふうに思ったっていう。あとは、地上では絶対に見ることができない漆黒とか。

今井:真っ暗。

杉浦:真っ黒なわけじゃないですか、光がない。そういうのを見てみたいなと思って、宇宙に行ってみたいなって当時思ったっていう。そういう彼らの話だったり、普通に宇宙の技術的な話だったり、宇宙船がどうこうって話も結構載ってたりするんですけど、面白いっていって勧めると、ハマる人が多い本ではあります。なので、今回1冊目に選んでみました。

『パチンコ』(ミン・ジン・リー・著)

今井:ありがとうございます。杉浦さんおすすめの1冊目は立花隆さんの『宇宙からの帰還』でした。それでは続いて2冊目『パチンコ』ミン・ジン・リーさん、2017年刊行、日本では2020年刊行がおすすめの本2冊目ということなんですけれども。

杉浦:そうですね。これアメリカで2017年に出た本です。著者はアメリカ在住の韓国系のアメリカ人のリーさんで女性なんですけど、ご本人は7歳でニューヨークに移り住んでそれからずっとアメリカなので、全然韓国のことも記憶にないでしょうし、ずっとアメリカで途中、旦那さんの転勤で日本に4年間住んでいて、その4年の間にこの本の基になるようなことをたくさん取材されたみたいなんです。基本はアメリカ人と言うか、アメリカでの経験が長い方でその方が書いた第一次世界大戦前から1980年代にかけて韓国の釜山、日本の大阪、横浜を舞台に描かれた4世代の在日コリアンの家族の物語で大長編な感じで、上下巻あるんですけど、アメリカだと100万部突破のベストセラーで、オバマ元大統領も推薦している作品でもあります。

今井:4世代にもわたってって、なかなかスペクタルな感じで。

杉浦:なかなか終わらないんですよ(笑)。

今井:(笑)。

杉浦:でも、面白いから読めちゃうんですけど。戦争とかあって海外に移住するなんていう話もあるので、歴史のうねりに翻弄されるようなお話で、書評家の中では「『おしん』みたい」っていうような話もあったりとか、ああいった感じで苦労しても生きていくみたいな、食べるのもやっとで、みたいな時期が長く書かれるので、そういったものですね。

今井:この本を手に取ったきっかけみたいなものは、何かあったんですか?

杉浦:私が学生時代に1年間韓国に留学していた経験があって、大学も朝鮮文化研究っていうゼミだったりもしたので、結構韓国に関連するものに親近感があるんですよね。割と最近だとネットフリックスで韓国ドラマ見たりとか、BTSにハマったりとかして韓国漬けの毎日なんですけど、その中で書評家の方が勧めていたりもあったので読んでみたという感じです。ほとんど大阪が舞台なんですけど、小説の中では、全然私とかが読んでいても違和感がなくてすごくリーさんが取材して丁寧に書かれているなっていうのを感じます。あと、あくまでも日本を舞台にした在日コリアの話じゃないですか。これがアメリカですごくウケるっていうのも面白いなって思って。

今井:確かにアメリカは全然出てこないですよね。

杉浦:そうなんです。たぶん一人4世代目の子がアメリカに留学するのかな。そういうのはちょこっとあるんですけど。でも、基本日本が舞台なので、やっぱりアメリカってもの自体が移民国家、移民で成り立っている国家なので、同じ移民としての文脈でかなり共感が得られたみたいで、それもヒットの要因だったみたいですね。

今井:アメリカをまた一つ知る一歩になりそうな小説ですね。

杉浦:そうですね。ベストセラーになったっていうのもあって、アップルTVでドラマ化が決まっているみたいで、ちょっとここで韓国ドラマ好きとして、アメリカが制作するから韓国ドラマではないんだと思うんですけど。ハンスって言う重要人物が小説に出てくるんですけど、彼は大阪を中心に手広くパチンコとか焼肉屋さんとかを経営している実業家でちょっと裏社会ともつながりがあるような実業家なんですけど、彼が物語の重要人物なのですが、確か小説の中の描写にあったんですけど、上下白のスーツとかをパリッと着ちゃうような。

今井:すごい。

杉浦:キザな感じ?

今井:ちょっと浮いている感じはありますかね。

杉浦:そういういわゆる色男みたいな人物なんですけど、その彼をミンホって言う韓流スターが、演じるっていうのでこれは当たり役だなと(笑)。

今井:なるほどー。

杉浦:これはハマるなと思って、私は楽しみにしています。そのイ・ミンホは、中国とかで人気のいわゆる韓流スターみたいな感じですごくイケメンなんですけど。

今井:それはドラマ化期待大ですね。

杉浦:あと南果歩さんも出るみたいなニュースがありました。

今井:南果歩さんまで。

杉浦:そうなんです。

『スピリチュアル系のトリセツ』(辛酸なめ子・著)

今井:では、小説もドラマも一緒に楽しめるということでぜひお手に取っていただけたらと思います。それでは、最後3冊目をお願いします。

杉浦:はい。3冊目は『スピリチュアル系のトリセツ』辛酸なめ子さんですね。2020年に刊行されたものになります。今までの2冊とガラッと雰囲気が変わる。

今井:毛色が違いますね。

杉浦:かなり違うんですけど、辛酸なめ子さんはご存じの方も多いと思うんですけど、コラムニストの方でちょっと斜に構えた感じって言うのかな、相当面白いんですけど。

今井:さくらももこさんにエッセイの雰囲気とかは似ているなって私は感じています。

杉浦:確かにー。

今井:ちょっと冷静な視点が入って、なんとなくユーモアに変えていくみたいな。

杉浦:はいはい。彼女のツッコミどころが面白いんですよね。私、割と皇室とかも好きなんですよ(笑)。

今井:(笑)。

杉浦:なめ子さんも皇室が好きで。

今井:意外な共通点が。

杉浦:皇室ウォッチャーなんですよね。

今井:皇室ウォッチャーって面白いですね。

杉浦:結構なめ子さん、皇室についても面白おかしく書いていて、とは言え、根底にリスペクトがあって常にいいんですけど。そんなんで元々好きだったんですけど、いつの頃からか、なめ子さんが結構スピリチュアルになっていって。私も結構スピリチュアルの本とかやるので、ちょっと気になるなと思ってチェックしていたら、なめ子さんがwebで、この『スピリチュアル系のトリセツ』の基になった連載をやられていて、それをちょこちょこ読んでいたんですけど、これが面白い。

今井:私も読んだんですけど、電車の中で爆笑してました。

杉浦:ですよね。当時、これ面白いねって話をすごくしたのを覚えてます。例えば、この本はスピリチュアル系の生態といって、いろいろなスピリチュアルのジャンルが出てきて、そのジャンルによくいる「スピリチュアル系の人あるある」みたいな。なめ子さん自身もスピリチュアル好きなんですけど、どっぷりハマらずに、冷静な視点で一般人の目線も忘れずに書いているところがすごく面白いなと思って。例えば神社によく行く「スピリチュアル系の人あるある」としては、「奥宮には行かれましたか?」というマウンティングがあると(笑)。

今井:それ、マウンティングなんですね(笑)。

杉浦:あるあると思って(笑)。

今井:わかります。

杉浦:私も神社の本とかつくったので、神社と言うか、神様の本ですね。神社とかにもよく行ったし、スピリチュアル系の神社ツアーとかにも、取材がてら参加とかしたんですけど、わかる、わかると。

今井:マウンティングされたんですか?

杉浦:されたと言うか、確かにこういうフレーズよく言うなみたいな、「奥宮には行きましたか?」みたいな。あとだいたいみんな言うのが、「結界に入ったら空気が違う」。

今井:(笑)。聞いたことがありますね、そういうコメント。

杉浦:言いますよね! 「空気変わったー!」みたいな。

今井:「こことあそこじゃ、全然違う!」みたいな。

杉浦:そうそう。空気の変化に盛り上がりがち。

今井:(笑)。

杉浦:なめ子さんは「敏感な人は、誰よりも空気の変化に気づかないといけません」とおっしゃっていて、わかる、わかると。そうだ、そうだと。あそこで一緒に「キャー」ってやると一体感が生まれるというか。盛り上がっていいんですよね(笑)。

今井:よくわからないけど、「うん!うん!」って言ってみるみたいなことをよくやります。

杉浦:そうですよね。空気を壊さないように。

今井:そっちの空気読んじゃうみたいな。

杉浦:そうそう(笑)。あと、これは私には全然わからないんですけど、「神様はここにはいない」みたいな。

今井:感じる系の人がする発言ですね。

杉浦:そうですね。そうなんだなーって思ったり、あと、これも盛り上がるので私も言うんですけど、「蝶が飛んで来たから歓迎されているんですね」みたいな。「蝶が来た! 歓迎されている証だね」みたいな。ありますよね?

今井:あります! あります! あと、雲が細長い雲で、「龍だ!」って言う方がいらっしゃったり。

杉浦:あるある! 「鳳凰に見える!」とか。

今井:「鳳凰かー」みたいな感じで。でも、星空もオリオン座とか水瓶座に見えるんだったらこれもきっと鳳凰に見えるはずっていうか。

杉浦:なるほど、なるほど。

今井:「鳳凰に見えますね!」って言ってみたりします。

杉浦:確かに。みんなワーって盛り上がるから、水を差さないように、そこは一緒にワーってやって、みたいなのがあったりして、「わかる! わかる!」とすごく面白く読んで。あと、例えば占いとかになってくると、占いでよく言うのは「水星が逆行しているから、メールが届かなかった」とか。

今井:(笑)。

杉浦:電車が遅れたとか。

今井:ある! ある! 水星じゃないよっていうね。

杉浦:水星の逆行、なんでも使えるねっていう。

今井:結構あいつ、逆行してますからね。

杉浦:結構逆行しますよね。

今井:逆行って言っても、宇宙的に見ると常に同じ軌道なんですけど、楕円を描いているから地球から見たときに逆行しているように見えるだけで、太陽とかのほうから見たら、別に逆行はしていないんですよ。

杉浦:そうなんですか。

今井:軌道が楕円だから、一瞬逆行しているように見えるだけなんですね、実は。

杉浦:へー。そうなんですか。結構年に何回も逆行してますよね?

今井:1年間に約3回、約3週間にわたって発生していますからね。

杉浦:そうなんですか !知らなかった!

今井:たぶん……(笑)。

杉浦:そっか。通信トラブルが起きると「あ! やっぱり水星が逆行してる」とか。

今井:素晴らしい理由ですよね。

杉浦:そうですね。

今井:水星が逆行してたら、しょうがない。

杉浦:しょうがない。宇宙にはかなわないですもんね。そんな感じで(笑)、単純に面白くて、笑うと波動が上がるみたいな(笑)。

今井:そこにもつながってくるんですね。

杉浦:そうなんです。そんな感じで、ちょっと疲れたときに読んでいただけたらいんじゃないかなと思って選んでみました。

今井:実際問題、波動というか免疫力が笑いで上がるなんていう話もありますからね。

杉浦:確かに、確かに。そうですね。

今井:リアルに上がるということで、辛酸なめ子さんの『スピリチュアル系のトリセツ』でした。
ということで、ここまで杉浦さんのおすすめの3冊、『宇宙からの帰還』、そして『パチンコ』、最後3冊目が『スピリチュアル系のトリセツ』ということで紹介をしてきましたが、杉浦さん、Voicyのリスナーの皆さんに何かお伝えしたいことはありますか?

杉浦:そうですね、3冊とも全然系統が違うバラバラな感じではあるんですけども、皆さんの新しい出会いになればと思いますので、もしご興味が生まれたらぜひ読んでみていただけたらと思います。

今井:はい。どれも新しい世界が広がるような本で私も読んでみたいなと思いました。

杉浦:ありがとうございます。

今井:杉浦さん、本日はどうもありがとうございました。

杉浦:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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