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また忙しい夏が始まる・・・高校野球の本を紹介

編集部の稲川です。
もうすぐオリンピックが開催されますが、私のこの時期は別のスポーツで忙しくなります。

それが高校野球です。

私は少年野球の監督・コーチをしていたことがあるのですが、その教え子たちも去年、高校3年生の最後の夏が終わりました。
これまでは地元千葉県の地方大会などにも足を運んでいましたが、この2年間はコロナにより応援に行けませんでした。

私の住んでいる千葉県は、強豪校と言われる高校が多く、毎年どの高校が甲子園に出場するかわかりません。
今日は3回戦が行われています。美爆音で有名な習志野、昨年のセンバツ出場の専修大松戸、甲子園の常連になった木更津総合、新勢力の中央学院、強豪の東海大茫洋、市立船橋、古豪の成田、東海大浦安、拓殖大紅陵など、これから甲子園出場をかけての戦いが始まります。

そして、各地方大会は開幕前から準々決勝まで、すでに熱戦が繰り広げられています。

ここ数年、私がこれまで以上に高校野球熱がさらに上がっているのには理由があります。
それは2018年6月に編集を担当させていただいた『前祝いの法則』(ひすいこたろう/大嶋啓介・著)という本の存在です。

この本は、未来を先に喜んで祝ってしまうことにより、その現実を引き寄せる「予祝(よしゅく)」という夢実現法を解説した本で、この中に著者の1人大嶋啓介さんが、高校球児たちに予祝をメンタルトレーニングとして指導してたのです。
しかも、予祝をトレーニングに取り入れた高校が、続々と甲子園出場を果たしていったのです。

そんなこともあり、甲子園出場を果たした高校を“予祝校”と勝手に名づけ、実際に甲子園に応援に行ったのです。
実際に、監督や野球部長にお会いし、予祝の素晴らしさをインタビューさせていただきました。

そして、本日も予祝校3校が地方大会を戦っています。
秋田県の明桜高校、京都府の京都成章高校、長崎県の長崎海星高校です。

明桜高校と京都成章高校は、『前祝いの法則』の中にも登場しているのですが、当時の2校の甲子園出場の話は、まさに奇跡と言っていいくらいのドラマです。

ちなみに、京都成章高校と言って思い出すのが、今季限りで引退する松坂大輔投手(現・中日ドラゴンズ)。
今から23年前の夏の甲子園、エース松坂率いる横浜高校の決勝の相手は京都成章高校でした。
春のセンバツを優勝した横浜高校は、この決勝に勝てば春夏連覇。
その決勝で、松坂投手がなんとノーヒットノーラン(3VS0)を達成し、高校野球史に残る離れ業をやってしまったのです。

そんな歴史の舞台に登場した京都成章高校。
当時の選手たちは、今ではノーヒットノーランで負けた悔しさよりも、あの歴史の中にいたことを誇りに思っているそうです。

そんな松坂がいた横浜高校も、不祥事からここ最近パッとしません。しかし、松坂引退の話が出ての昨日の神奈川大会2回戦初戦、31VS0(5回コールド)で好スタートを切ったようです。
激戦神奈川は、どこが勝ち上がってくるのか。地方大会から楽しみです。

いまは地方大会からライブ配信されていて、正直仕事をするのも大変です。
試合の様子が気になって仕方がない。
とくに予祝校が出場する試合は、ライブ配信をつなぎながら仕事しております(今、この記事を書いているさなかも、明桜、京都成章が試合中です)。

さて、今回は高校野球一色になってしまい、野球に興味がない方には申し訳ないですが、高校野球を楽しんでいただくための豆知識としてお勧めする本がコチラです。

『甲子園出場校の成績と歴史がよくわかる事典』(別冊宝島編集部、宝島社新書)

出場校

この本、北海道から沖縄までの強豪校のデータをオタクなまでにまとめられたもので、設立、公立・私立、共学かどうか、通算甲子園成績などの銘記に始まり、①歴史、②系列校、③過去5年の甲子園成績、④近年の主な野球部員の進路、⑤出身プロ野球選手、⑥出身有名人、⑦手束メモが書かれています。

余計なことは書かれていない、まさに甲子園出場校の事典です。

今年、甲子園出場を果たす高校がここにあれば、事前に頭に入れておくと、観る試合もより熱が入るのではないでしょうか。

次に紹介するのは、私が高校野球で印象に残っている、“あの日”について書かれた本です。

『甲子園が割れた日~松井秀喜5連続敬遠の真実』(中村計・著、新潮社)

松井

この本は、スポーツライターの中村計氏が「ミズノスポーツライター賞」を受賞した作品で、野球本を超えたノンフィクションとしての名著。

石川の星稜VS高知の明徳義塾の一戦で、5敬遠をされた星稜・松井秀喜のあの事件は記憶に残っている人も多いでしょう。
あの試合は、敬遠される松井選手が表情を変えることなく一塁に向かった姿が、今でも焼き付いています。そして、観客のブーイング、メガホンなどが投げ込まれ試合が一時中断するなど、たしかに“甲子園が割れた日”だったのでしょう。

「甲子園には魔物が棲む」と言いますが、高校野球ファンには“甲子園贔屓”というものがあり、応援がどちらかのチームに一気に傾く瞬間があります(たいていは、負けているチームや強豪校ではないほう)。
私も実際に肌で感じたことがあります。
2018年の第100回の夏の甲子園の2回戦の石川・星稜VS愛媛・済美の試合。最終回2点差を追いつき9VS9とした済美。
そして、延長戦。互いに凌ぐ場面では押さえながら、ついに12回タイブレークとなります。

先行の星稜は、無死1、2塁から始めるタイブレークで2点を取り11VS9に。星稜が逃げ切れるか……。

しかし、12回の裏、甲子園の魔物がやってきました。
これで終わるのは寂しいと思ったのか、観客がいっせいに済美を応援する雰囲気に変わったのです。
そこで生まれた、逆転サヨナラ満塁ホームラン。

星稜サイドで観ていた私も、さすがに鳥肌が立ちました。
こんな劇的な幕切れが待っていたとは……。

甲子園が割れたあの日は、球場の観客全体が当時の星稜一色になったのは間違いありません(アルプススタンドを除いて)。

この本は、あの日の出来事から15年たったあと、監督や当時の選手たちのその後を追ったルポです。
あの試合以来、明徳が完全に悪者になったこと、それが社会現象にまでなったことなど経緯に触れつつ、当時関わった人たちへの入念な取材が試みられています(敬遠後の松井選手についても)。
とくに、指示に従い敬遠をするしかなかった明徳義塾の河野投手、敬遠されたあとの5番月岩選手の話が、何とも言えません。

あの試合後、両校の選手たちが、人生で葛藤や苦悩の日々を過ごすいっぽうで、スターへと駆け上がっていく松井秀喜。
あの日、何を思い、何が行われたのか。封印された記憶、彼らの軌跡が見事に描かれた1冊です。

最後に紹介するのは、そんな高校球児たちの甲子園に対する思いが綴られた本です。

『野球ノートに書いた甲子園』(高校野球ドットコム編集部、KKベストセラーズ)

ノート

シリーズとして6巻あり、高校球児たちの実際のノートも掲載されています。
選手個人のノートであったり、チームのノート(日誌)であったり、監督と選手、父と息子のノートであったりと、そこにこそ真実があるのではないかと思うほど、球児たちの思いと成長が綴られた1冊です。

写真のシリーズ2巻目には、私の好きなチームの1つである履正社の岡田監督と選手たちのノートのやり取りが書かれています。
履正社は今では甲子園の常連として大阪桐蔭高校と2分する強豪として知られていますが、私が履正社を好きなのは、桐蔭に推薦されなかった子どもたちが履正社に行くという不文律があると聞いてからです。

昔東大阪市に出張に行った際、桐蔭の超巨大な校舎を車窓から眺めて以来、野球エリート校そのままのイメージが残りました。
いっぽう履正社は、寮もなく毎日3時間の練習で、球児たちは20時半のバスで帰宅するという、まさに雑草魂を感じたのです(ほかから見れば強豪には変わりないのですが)。

その大阪大会は7月16日から開幕。
履正社は今年、シード校からはずれています。大阪はどこが出てくるのでしょうね。これまた楽しみです。

先ほど、京都大会の2回戦、京都成章VS京都文教の試合が終わりました。
延長10回、3VS2で京都成章が劇的なサヨナラ勝利。

地方大会から熱いです。

高校野球、これだから追いかけるのがやめられません。

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