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#366【ゲスト/イラストレーター】イラストレーター「ラジカル鈴木」という生き方

このnoteは2022年4月6日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。


一度見たら絶対忘れない、ポップ&キュートなキャラを描くイラストレーター

今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める今井佐和です。本日は編集部の森上さんと共にお伝えしていきます。森上さん、よろしくお願いいたします。
 
森上:よろしくお願いします。
 
今井:本日も素敵な大先輩のゲストに来ていただいているということなんですけれども。
 
森上:そうなんですよね。私が編集者になりたての頃、変な話、僕が学生時代からラジカルさんの存在を……。あ! ラジカルさんって言っちゃった。
 
今井:(笑)。
 
森上:存在は存じ上げておりまして、もう20年以上前から存在を存じ上げている方で、あの方のイラストは一度見たら絶対に忘れない、ポップ&キュートさが感じられる、誰もがもしかしたら1度は目にしたことがあるんじゃないかと思われるような、そういうインパクトのあるイラストをお描きになられている方です。
 
今井:ありがとうございます。では、少しお名前が出てしまいましたが、本日のゲストはイラストレーターのラジカル鈴木さんです。ラジカルさん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 
ラジカル:よろしくお願いします。
 
森上:よろしくお願いします。
 
今井:では私から簡単にラジカル鈴木さんのプロフィールをご紹介させていただきます。ラジカル鈴木さん、1966年11月生まれ。イラストレーターとして時代性と普遍性を共有した躍動感のあるキャラクターアートを制作していらっしゃいます。広告や書籍、雑誌、キャラクターデザインなど、媒体やジャンルを問わずに活動中です。代表作には、1999年、国立科学博物館「大顔展」のメインビジュアルですとか、週刊文春の中村うさぎさん連載の「ショッピングの女王」の挿絵などがあります。第80回ニューヨークアートディレクターズクラブ賞(U.S.A.)銅賞をはじめ、受賞歴が多数ありまして、日本国内のみならず海外でも高い評価を得ていらっしゃいます。
 
森上:はい。ラジカルさんのイラスト、佐和ちゃん見た?
 
今井:はい。実は私、『オネエ占い師 むらっち占い』を愛読しておりまして、インドの神様などがいっぱい紹介されている本なんですけど、すごく可愛らしいイラストかつ、インドの神様ってすごく個性的だったり、おどろおどろしかったりするんですけども、それをすごくキュートに特徴をつかんで表現されていて、もう見ているだけで運気が上がりそうだなあっていうようなイラストで、すごく好きです。

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森上:そうなんですよね。今、佐和ちゃんが言ってくれたんですけど、今回私は『オネエ占い師 むらっち占い』という本を作らせていただいて、24人のインドの神様のカード、例えばシヴァとか、ガネーシャとか、そういった24人の神様をラジカルさんワールドですごくキュートに描いてくださって、最近またお世話になっています。
 
今井:先ほどの紹介の中でもありました通り、日本国内のみならず世界にも羽ばたいてご活躍されている、ラジカル鈴木さんなんですけれども、森上さんは編集者になった頃からご存知だったんですよね?
 
森上:そうなんです。先ほど、ちらっと話が出ましたけど、週刊文春の中村うさぎさんの連載への挿絵はもちろん存じ上げていまして、それ以前には……僕の勘違いだったらすみません。「噂の眞相」とかでもお描きになられていましたよね?
 
ラジカル:はい。やっていました。4冊やらせていただきました。
 
森上:やっぱりそうですか。あれ、ラジカルさんですよね?
 
ラジカル:はい。ラジカルっぽいタッチのものもあり、そうじゃないものもありっていう。やっていましたね、99年に。
 
森上:佐和ちゃん、「噂の眞相」っていう、伝説の雑誌があるんですよ。
 
今井:伝説の雑誌ですか?
 
森上:黒字なのにやめたっていう。そうですよね、あれ。
 
ラジカル:はい。もう絶好調のときに潔くやめています。
 
今井:黒字でやめるなんてなかなかないですよね?
 
森上:そうなんですよ。それこそ本当にスクープが……、今の文春砲みたいな感じでしたよね?
 
ラジカル:そうですね。もっと過激な。スポンサーさんなんかいない雑誌だったので、本当に何の縛りもなく。
 
森上:そうですよね。「噂の眞相」の伝説の編集長でいらっしゃる岡留さん、ラジカルさんは岡留さんから直接オファーがあったりしたんですか?
 
ラジカル:いや。実はアートディレクターの杉浦康平先生。
 
森上:ああ! 杉浦康平さん、はいはい。
 
ラジカル:それこそ神様みたいな方なんですけど。恐れ多くもご指名で。あの雑誌は年間12冊を4冊ずつ、3人のイラストレーターがローテーションで描くっていう形になるんですね。それでその一人として担当させていただいて、4冊やりました。
 
森上:そうだったんですね。杉浦康平さんと言えば、「噂の眞相」のアートディレクションをされていた方ですよね。
 
ラジカル:そうですね。そんなにギャラはいただかずに、あの雑誌には協力したいっていう感じでやられていたみたいですね。
 
森上:そうなんですね。広告費がない雑誌でしたもんね。僕も学生時代にすごくハマっていて。
 
ラジカル:だいたい編集部の方はその後ほぼお会いしましたけど、最後の最後に岡留さんはゴールデン街の行きつけのお店で一度だけ。
 
森上:そうでしたか(笑)。
 
ラジカル:そしたら、「もう全部杉浦さんに任せているから~。どうもです」みたいな感じで、あんまりお話もできなかったんですけど。
 
森上:そうでしたか。岡留さんは沖縄のほうに移られて。
 
ラジカル:そうですね。それで、その後は亡くなられてしまったんですけど。
 
森上:そうですよね。岡留安則さん。リスナーの方でも知っている方もいらっしゃると思いますけど。
 
ラジカル:伝説の方ですね。
 
森上:そうですよね。本当に伝説の方で、今の文春より過激だし、スクープもすごかったですもんね。テレビ、新聞を超えるようなスクープをバンバン出して。
 
ラジカル:もうあそこから広がっていったものがいっぱいありますもんね。
 
森上:ですよね。すごい雑誌ですよね。そこにラジカルさんがイラスト描かれていたっていうね。それがまたすごいなと思って。
 
ラジカル:僕みたいなタッチをうまくまとめていただいて、やっぱりアートディレクション、ディレクションの力ってすごいなって。
 
森上:なるほどね。それで、僕がラジカルさんと接点を持たせていただいたのは1人のブックデザイナーさんなんですよね。覚えていますかね? マルプデザインの清水良洋さん。
 
ラジカル:もちろん覚えています。
 
森上:マルプデザインさんは事務所にギャラリーを持っていて、そこにラジカルさんがちょうど展示されているときに、僕が清水さんとお仕事をさせていただいて、それで「あー! ラジカルさんだ!」と思って、そのときに現地にラジカルさんがいらっしゃったんじゃないかな。そこでご挨拶したのがたぶん最初ですね。
 
ラジカル:そうなんですよね。デザイン事務所であんなにちゃんとギャラリーを持っているっていうのも珍しいですよね。
 
森上:清水さんはラジカルさん以外の著名なイラストレーターさん、これからのイラストレーターさんを含めてすごく取り組みをされていましたよね。
 
ラジカル:そうですね。デザイナーやイラストレーターの育成をされている感じで、本当に素晴らしいですよね。
 
森上:そうですよね。ラジカルさんと清水さんは結構長いんですか?
 
ラジカル:あの当時知り合って、そんなに長くもないんですけども、相談したり、スタッフの方も知り合いが多かったので。
 
森上:はいはい。あそこから卒業されたデザイナーさんも今はフリーランスでご活躍されていますもんね。
 
ラジカル:そうですね。いっぱいいますよね。
 
森上:いらっしゃいますよね。そういうデザイン事務所が、今もあるんですけど、今はちょっと縮小してやっているかもしれない。
 
ラジカル:そうかもしれないですね。
 
森上:そういう方がいらっしゃったんですよね。
 
ラジカル:お世話になりました、本当に。

オリジナリティ(自分らしいイラスト)のメリット、デメリット

森上:ありがとうございます。このチャプターにラジカルさんのホームページのURLを貼っておこうと思います。「この絵と言えばラジカルさんだ」ってすぐわかるようなあのイラスト、あのスタイルになるまでは結構早かったんですか?

ラジカル:いや、紆余曲折がいっぱいありまして、「自分の作風はなんなんだ」っていうので、20代はほぼ模索していましたけども、決定的に今のスタイルになったっていうのはあとでお話しする自叙伝にもちょっと書かせていただいているんですけど、Appleのマッキントッシュの導入がなんといっても大きかったですね。
 
森上:ほうほう。
 
ラジカル:デジタルで描くのは今でこそ当たり前になっていますけど、僕は89年に導入しまして。
 
森上:それはイラストレーターさんの中では早い時期ですか?
 
ラジカル:はい。イラストレーター、デザイナーさんもまだ周囲で持っている人はあまりいなかったですね。
 
森上:そうですよね。89年じゃ。
 
ラジカル:まだまだめちゃくちゃ高くて、なぜ僕が買ったかっていう経緯なんかも、自叙伝に書いてありますけども、この流れがなかったら、未だに絵の具で書いたりとかして、全然違う作風だったかもしれないですね。
 
森上:そうですか。やっぱりイラストレーターさんって、デザイナーさんもそうですけど、これは○○さん、っていうイコールになることってすごいことだと思うんですけど、その一方で、それが足かせになることとかっていうのはないもんですか?
 
ラジカル:ありますね。それは大いにあります。特に個性を持たずになんでも器用に描けるっていう方もいらっしゃいます。
 
森上:いらっしゃいますね。
 
ラジカル:そういう方の方が実はいっぱい仕事をしていて、単価は安いのかもしれないんですけど、たくさんこなしていて、実は作家性のある人よりも稼いでいるっていうケースも大いにあると思いますね。
 
森上:なるほどね。やっぱりラジカルさんというと、あのイラストですからね。そうなっちゃいますよね。
 
ラジカル:結局、ただ自分がどっちをやりたいかってことですよね。
 
森上:なるほどね。
 
ラジカル:自分をもっと出したかったので。そこはもちろんいい部分も悪い部分もあるんですけどね。
 
森上:なるほどね。
 
今井:ラジカルさんは最初からずっとイラスト一筋でやってこられたんですか?
 
ラジカル:小さい頃から絵は好きで、ほぼどういう方向に行くかっていうのは決めていましたね。
 
森上:なるほどね。ラジカルさんはどちらかというと、女性を描く方が多いですか?
 
ラジカル:そうですね。圧倒的に多いですね。
 
森上:ラジカルさんは著名人の方の似顔絵も描いたりするじゃないですか。そのときに顔の特徴を掴むポイントとかってあったりとかするんですか?
 
ラジカル:大事にしているのはリアリティというか。例えば、二頭身、三頭身に描いても温もりみたいなものとか、「実際にこういう人いる!」っていう現実感みたいなものを大事にしていまして。デフォルメされているのに、なんかリアルみたいな、その矛盾みたいなところが多分僕の持ち味なんだろうと思っています。
 
今井:確かに。すごく可愛らしいけど、リアリティがめちゃくちゃあって、特に顔とかがすごく繊細に描かれているので。
 
ラジカル:はい。ディテールも描き込んでいるので。そこがオリジナリティと言えばオリジナリティになるのかなっていう。
 
森上:そうですよね。あれはもうラジカルさんしかお描きになれないんだろうなっていう感じの。似顔絵を描く、いろんな方がいらっしゃいますけど、ラジカルさんのあの顔がボーンと出ている、二頭身の絵は本当に可愛いんだけど、リアリティもあるっていう。最近の作品ではあれもすごかったですよね! トランプさん! 男性ですけど。
 
ラジカル:はいはい。
 
森上:あれもすごくインパクトがありましたよね。
 
ラジカル:男性の場合はよりグロテスクにというか……。
 
森上:(笑)。
 
ラジカル:描いちゃいます。その方が面白くなるので。女性はキレイに描かないとっていう。
 
森上:なるほど、なるほど。女性をお描きになるときは、目のパーツとか、眉毛のパーツとか、色々と描き溜めている感じだったりとかします?
 
ラジカル:それは、はい。実はいろいろとパーツ化して、ストックしています。
 
森上:そうなんだ! 今回、描いていただいた24人の神様の中でも、この目とこの目がちょっと似ているなっていうのがいくつかあって。でも、見た目は全然違うんですよ。これ、もしかしたらパーツごとにいろいろとストックをお持ちなのかなと思って。
 
ラジカル:そのままだとコピペになっちゃいますから、少し手を入れて別のものにするっていう。
 
森上:なるほどね。それこそ、鼻は鼻だけで色んなバリエーションがあるわけですね。
 
ラジカル:もう20年以上のストックがありますね。
 
森上:すごい(笑)。だから、佐和ちゃんも描いてくれって言ったら、佐和ちゃんも描けちゃうと思う。当たり前だけど。
 
今井:描けちゃいますか(笑)。
 
ラジカル:アプリもあったりとかしますけど、それと同じことになっちゃうと困るので、そこにオリジナリティで手を加えていきますけどね。
 
森上:そうですよね。

イラストレーターとして、ブレイクした仕事

今井:ここまでラジカルさんはたくさんのお仕事をされてこられたかと思うんですけれども、イラストレーターとして1番グッとブレイクした仕事、転機になったお仕事っていうのはどれが1番になりますかね?
 
ラジカル:先ほどもご紹介していただいたんですけども、「大顔展」、日本顔学会っていうのがありまして、ここが研究発表みたいな形で国立科学博物館で、結構大きなイベントをやったんですね。その時のビジュアルを担当しまして、全国でも4カ所ぐらいでやって、新聞、テレビ、ラジオ、街角や駅の広告と、かなり露出しまして、これでかなり知っていただいたっていう感じですね。この後にめちゃくちゃ忙しくなって。

森上:インパクトのあるイラストが全国区になったっていう感じですね、展覧会のメインビジュアルを担当されたことがきっかけで。
 
ラジカル:そうですね。それはブレイクしたというか、転機にはなったと思いますね。
 
森上:その後ですかね?それこそ先ほどおっしゃっていた杉浦康平さんからの「噂の眞相」の依頼は。
 
ラジカル:そうです。たぶん、それを見ていただいたんじゃないかなと。週刊文春なんかもそうですけど。
 
森上:そうですか。やっぱりあの展覧会はインパクトがすごかったんですね。私も覚えていますもん。その「大顔展」はテレビCMなんかも打ったりしましたか?
 
ラジカル:テレビCMにもなっていたし、番組で取り上げられたりとかもして。
 
森上:そっか、そっか。面白いですもんね。
 
ラジカル:やっぱり当時はテレビに出るとすごかったですね。メディアとしては。
 
森上:そうですよね。広がりがすごいですからね。最後にちょっとお聞きしたいのが、今回24人の神様、ディテールのところまで細かく描いていただいたじゃないですか。いろいろと大変だっただろうなと思うんですが、何が一番大変でしたか?
 
ラジカル:いや、あんまり大変さは感じずに、楽しかったですね。ただボリュームがありましたので、時間はかかるんですけど、本当に楽しくやらせていただきました。神様がこんな性格なんだとか、神話でこういうエピソードがあるんだとか、勉強しながら。
 
森上:なるほど。そういう裏のストーリーもセットで資料としてお渡ししたんですけど、イラストを描く時もそういったバックストーリーみたいなものは意識されながらお描きになるっていうのがあるわけですね?
 
ラジカル:はい。そうですね。やっぱり資料とかバックグラウンドがいっぱいあったほうがイメージが膨らみますので、具体化するときにはなるべくいっぱいあったほうがいいですね。
 
森上:なるほどね。シヴァ神なんて凛とした感じのちょっと怖さもありながら、すごく綺麗な感じとか。ちょっと女性っぽい感じも見えながら。ユニセックスな感じで性別を超えた……。
 
ラジカル:そうですね。性別を超えたキャラクターが多かったですね。
 
森上:多かったですよね。今回はむらっちさんがオネエ系なので、そのあたりがマッチしたなと思って。むらっちさんもすごく喜んでおられて。
 
ラジカル:ありがとうございます。
 
森上:本当にありがとうございます。では、佐和ちゃん、そんな感じですかね。
 
今井:はい。ここまでラジカルさんのイラストレーターとしてのお仕事についていろいろと伺いしたんですけれども、残念ながらお時間がきてしまいましたので、明日も引き続きお話を伺っていきたいと思います。明日はラジカルさんが3月に自叙伝『デザイン無宿』という新刊を出されたということで、その本について詳しくお聞きしたいと思います。ぜひ皆さん、明日もお聞きください。ラジカルさん、森上さん、本日はどうもありがとうございました。

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ラジカル:ありがとうございました。
 
森上:ありがとうございました。
 
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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