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七夕の日に自分の棚卸しをしてみる本

編集部の稲川です。
今日は7月7日。「七夕の日」です。
1年に1度、織姫と彦星が天帝(神様)から逢うことを許された日ということで、私も1年に1度、自分の棚卸しをしてみようと思いました。
もちろん、本の紹介もしていきます。

元旦に1年の計画を立てるとすれば、ちょうど半期が終わっているところですので、七夕の日に1年の半分を振り返るにはいいかもしれませんね。

ちなみに、七夕は中国から奈良時代に由来した儀式で、星に願い事をするというのは、かなり昔からあるようで、韓国やベトナムにも同じ風習があります。
もともと「七夕」は「棚機」といって、日本では神事に使う布を織るための行為をこう呼んでいたそうで、江戸時代には五節句の1つとになり、幕府公認の祝日とされていたようです。
つまり、七夕はとても重要な日だったことがわかります。

ゆえに、願い事だけではなく、自分の棚卸しをするのにもいい機会です(1年に1度、織姫と彦星の願いが叶うという日ですから)。

◆「知的好奇心」から始まった自分の原点について

私が現在、編集者を生業としているのは、今もってそうだなと感じることがあります。
それはさかのぼると、幼少の頃からそうであったと感じる部分が多いからです。
今でも記憶しているのは、たしか幼稚園生の頃にあった、2つのエピソードです。

1つ目は、当時親に買ってもらった図鑑を眺めていて、蟻の生活に魅了された私は、さっそく野外へ出て蟻の巣を観察しました(当時は、土手沿いの家に住んでいたため自然に囲まれていました)。
そこで発見したのが女王蟻です。
私はその女王蟻を捕まえようと手を伸ばし、それに触れた瞬間、チクリとやられたのです。
そう、それは女王蟻ではなく、クロスズメバチでした。

クロスズメバチ

そもそも女王蟻が外にいるはずがないのですが(^-^;
「女王蟻に刺された~」といって、逃げ帰ったのは言うまでもありません。

2つ目は、カマキリでした。
私はカマキリの卵を見つけると、虫かごに入れて家に持ち帰っていました。
その卵を20個くらい虫かごに入れて玄関に置いておいたのだと思います。

カマキリの卵

ある朝のことです。
母親の「ギャー!!」という声とともに目を覚ました私は、玄関で腰を抜かしている母親を目にしました。
すると・・・。
なんと、カマキリの卵がいっせいにふ化していました。
その数、何百というカマキリの赤ん坊・・・。
茶色でとても小さい、しかしすでにカマキリの形をした“物体”が玄関のたたきにうじゃうじゃいます。
私は卵がふ化したら、カマキリはカマキリの形として誕生するんだということに興奮しましたが、その後母親からはこってり叱られました。

カマキリのふ化

とにかく、ザリガニでもカエルの卵でも大量に採取してくる子供でしたから、母親の生物嫌いは私がトラウマにしてしまったことは間違いありません。

小学生になってもそれは変わりませんでしたが、興味は別のところに移っていきました。小学1、2年生の時は、学校まで5キロ近く歩いて通学していましたから、行きも帰りも昆虫は取り放題。
しかし、朝採り(?)のカブトムシやクワガタなどは、クラスのみんなにあげていました。

そんな中、次のターゲットがありました。
それは、土器です。
通学の途中に、山崎貝塚という縄文時代の貝塚があり、私は土器発掘に目覚めたのです。
国の史跡に指定されているため入ることは厳禁ですが、そこは小学生。普通に入って土をほじくり返しておりました(時効としてお許しください)。

山崎貝塚

いまでこそ、たいした土器ではないと思いますが(欠片ですし)、発見しては大興奮しておりました。

と、長くなりましたが、当時から私は知的好奇心が旺盛で、通知表には毎度のごとくそう書かれていました。そのため、ふと思いついたら授業を抜け出し野外観測へ出ていなくなってしまう少年でしたから、クラス総出で私を探し回ったことも幾度となくあり、正直、問題児であった思います(先生や校長のご迷惑をおかけしました)。

しかし、いまの私をかたちづくっているのは、間違いなくこの時に違いありません。
発掘の楽しさ、未知のものへのあこがれ、古代の歴史への興味など、子どもの私の知的好奇心はどんどん広がっていきました。

◆高校のときに間違った扉を叩いてしまった結果・・・

そんな古代への好奇心をふくらませていった結果、前回(6/30)のnoteでも書いたように、シルクロードなどにも興味を示していったのですが、ほかにも決定打があり、それが映画『インディージョーンズ』シリーズです。
この映画を観て、考古学者ってカッコいいと、おそらく間違った固定観念が生まれました(^-^;

そして高校に入り、希望の部活「考古学部」「発掘部」「探検部」「歴史部」なるものを探したのですが、それらしき部がありません。
当時あった部活棟を歩き回り、もしかしたらここかもという部活の扉の前に行き着きました。
すると、中から先輩らしき人が現れ、私は尋ねました。
「ここ、遺跡の発掘とかしているんでしょうか?」
すると、一瞬間を置いたあと、その先輩が満面の笑みで、
「発掘? もちろん、もちろん。さあ中へどうぞ・・・」
そう言われて入ったが最後。
私は「地学部」というところへ入部することになったのです。

そう、たしかに発掘といえば発掘がありました。
それは古代遺跡を超えて、地質年代における発掘です。
「地学部」というところの活動は、天体観測、天気図の作成、地質調査の3本柱の活動を行っており、遺跡とはまったく違う理系の部活だったのです。

まあ、そのおかげで星にも気象にも詳しくなりましたし、関東ローム層へ野外発掘へも出ました。
冒頭の写真は、ちょっと地学部らしく、七夕のロマンではなく星座として織姫と彦星を表してみました。
もともと七夕は、旧暦なら8月上旬から半ばにかけて。つまり、写真にある「夏の大三角形」がくっきり見える時期なのです。新暦になってしまい、雨の多い7月上旬は当然、晴れの日が少ないということです。
天体観測的にいうと、実は夜空を見上げるのはこの時期ではないということですね。

とにかく、私の勘違いで入部することになった地学部でしたが、ここでも新しいことを学ぶ機会をいただいたと思っています。

◆棚卸しから、やっと本の紹介をします

高校時分は部活をそれなりに没頭していましたから、遺跡の興味は忘れていましたが、少々、その手の本は読んでいました。
何といっても、その入り口の本といえばこれです。

『古代への情熱~シュリーマン自伝』(シュリーマン著)

シュリーマン

シュリーマンはドイツの考古学者で、トロイア遺跡を発見した人物。
本では彼の遺跡発掘への情熱が綴られています。また、シュリーマンは世界を旅した冒険家でもり、中国(清)や日本についての著作もあります。

シュリーマンは、幼少の頃にホメーロスの『イーリヤス』に感動してトロイア遺跡発掘を志すきっかけになったと記しています。

しかし、どうも彼の発掘への情熱はまゆつばもので、考古学者になったのは実業家として失敗して、「トロイア遺跡はヒッサルクにある」と主張していた考古学者フランク・カルヴァートに出会ったからだとされています。
つまり、考古学者として名声を得るために発掘に乗り出したとする向きが現在の評価のようです(本を紹介しておきながらすみません)。

しかし、当時の私はシュリーマンへのあこがれを持って本を読んでおりました。

そして、遺跡発掘に関して、いやそれ以上に好きな作品があります。

『MASTERキートン』(浦澤直樹作、小学館)

全巻

浦沢直樹作品は、『パイナップルARMY』『YAWARA!』『20世紀少年』『MONSTER』『PLUTO』など、「ビッグコミックオリジナル」で連載され、有名作ばかりですが、私は『MASTERキートン』が大好きです。
毎回テーマが違うマンガを描き続ける浦沢さん。
そのすごさは、NHKの「漫勉」で知ることができますよ(YouTubeでも上げられています。NHKの番組なので消される前に、ぜひ)。

さて、『MASTERキートン』ですが、主人公キートンは大学の講師として安月給を得て暮らしている考古学者。
しかし、その裏の顔は世界随一の保険組合「ロイズ」の保険外交員で、一流の顧客の保険金調査をする、世界を股にかけて活躍するヒーロー的存在。
そこには、保険金にまつわるさまざまな事情があり、キートンがそれらを解決していくというストーリーです。
事件(?)解決のなかには、さまざまな危険をはらみ、それも乗り越えていくのですが、キートンはその昔、軍のサバイバル(SAS)教官をしていたので、敵の攻撃をかわしていきます。日頃はなんとなくボーッとしているですが、実はすごい人物なのです。

その第1巻の1話目(迷宮の男)に登場するのが、くしくもトロイアなのです(浦澤先生はシュリーマンを意識していたのでは・・・)。

1巻

キートン登場のシーンですが、悪役の相手が狙っていたのが、これまで1枚も発見されていなかったユリシーズ王の金貨。
ユリシーズ王は、トロイア戦争であの木馬の作戦でオデュッセイアに敗れた人物として描かれていますが、栄えある1話目がこんな形で描かれていたとは、いま読み返してみて驚きました。

そんな設定で話が18巻まで続くのですが、考古学の講師、保険調査員、元サバイバル教官という3つの顔で活躍するキートン。

最後に選んだ彼の道は・・・。

これ以上はネタバレになりますのでやめておきます。

さて、これからじっくり『MASTERキートン』でも読みますか・・・。
いや、棚卸しがメインでしたからまたの機会にします。

さあ今日は、織姫と彦星は無事に逢うことができるのか。
はるか宇宙が曇ることはないですから、きっと逢っているんでしょうけどね。

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