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「ルックバック旋風」について考える。
こんにちは、フォレスト出版編集部の小原です。
3連休でしたね。
雨続きではありましたが、皆さんはゆっくり休んだり、リフレッシュしたり、やりたかったことにチャレンジしたりできましたか?
私は、少し前から「観たいな~」と思っていた映画を観て来ました。
いま話題沸騰中の、藤本タツキ先生原作のアニメ映画『ルックバック』です。
![](https://assets.st-note.com/img/1721038976516-3vAi4G16QV.png)
初日の上映館が約120館と少なめだったにもかかわらず、なんと3日間で興行収入1位。
たしかコナンとか呪術廻戦とかは、初日から300〜400館規模で上映されていたはず……。
映画業界には詳しくないですが、この数字は歴史的快挙といっても過言ではないのではないでしょうか。
そこで今回は、『ルックバック』がこれほどまでヒットしている訳を、書籍編集者が勝手に考えていきます。
1.原作漫画は、アプリ配信で1話読み切り
原作は、ジャンプ+(集英社が運営する漫画アプリ)で2021年7月に公開され、史上初となる、1日で閲覧数250万を突破する大ヒットを記録しました。
この時点で、かなり注目を浴びていたんですね。
この背景には、藤本先生の代表作『チェンソーマン』第一部完結と重なったことや、本作の内容そのもの以外にも、いくつかの要因があると考えられます。
たとえば次のようなことです。
①誌面では不可能な、140ページ超えの読み切り
次の話を待つことなく結末まで一気読みできるという、斬新な打ち出し方でした。
つまりは良くも悪くも1日でその作品の評価が決まるので、勢いある波を起こしやすかったのではないかと思います。
②Web公開だからこその、表現の自由度の高さ
本作では、実際に起こったある凄惨な事件を彷彿とさせる描写があります。
その事件から着想を得たかは定かではありませんが、そのせいで、より自分ごと、現実の出来事として、物語を読むことができます。
また、劇的なドラマやハッピーエンドという「お決まりの流れ」からは外れたストーリー展開も特徴的で、ここからもWebならではの表現の自由が感じられます。
2.配信2ヶ月後に、はやくも単行本が発売
2021年9月には単行本が発売されました。
このスピード感もすごいですよね。
単行本は1巻のみで、なんと定価500円以下。
買いやすいし、読みやすいし、勧めやすいし、貸しやすい。
私も、2年ほど前に知り合いから勧められ、単行本を借りて読みました。
アプリでも単行本でもサクッと読めてしまう。
この手軽さも、急速に読者が増えた要因ではないかと思います。
3.アニメ映画化、「どう描かれるか?」の期待と
増え続ける新規ファン
そして2024年2月に映画化決定が告知され、6月28日より公開。
はじめに書いたように、初日の上映館はそれほど多くなかったにもかかわらず、記録的なヒットとなりました。
すでに相当数いた原作ファンの期待と、口コミの波が漫画・映画の両方で再燃したことによる新規ファンのさらなる獲得が、このビッグウェーブを巻き起こした(今後も続く)のではないでしょうか。
さらに、映画は1時間と短めなので、空いた時間にサクッと観やすい。
ODS(非映画扱い)なので、一般料金で観る人にとっては若干安いというのもあります(お得と捉えるかは人それぞれですが)。
ちなみに映画はどうだったか?
私個人の感想ですが、原作の余韻を残したまま、アニメならではのリズミカルでファンタジックな表現がプラスされており、無駄が一切なく、とても濃密な作品でした。
原作と変わらない余白の取り方と、心洗われる画面の美しさ――1時間、どっぷり引き込まれました。
主人公二人の声もぴったりで、「こんな雰囲気の子いたなあ」と学生時代を思い出させるエモさがあります。
ただ、レビューを観ていると、全員が全員絶賛しているという訳ではないようです。
私は原作を1回読んだきりで細部を忘れてしまっていたので、より新鮮な気持ちで楽しめたのかもしれません。
原作やレビューで期待を高めすぎず、前情報なしで観ることをおすすめしたいです。
まとめ
ルックバック旋風の大きな要因は「ファンの口コミ」ではないかと思います。
「読者が読者を増やしてくれる」という流れがここまで強大になることって、今までになかったのではないでしょうか。
その流れを作った、原作者の自由な表現、出版社のスピード感、映画制作側の原作へのリスペクトは、本の作り手としても学ぶことが多いように感じました。
「面白い」「タメになる」以外でも、人が勧めたくなるようなポイントを本で作ることができないか、考えてみたいと思います。
あえてあらすじにはほとんど触れませんでしたが、気になった方はぜひ読んで、もしくは観てみてください。
小原
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