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私とこの1冊

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フォレスト出版の編集者が自らの読書体験を公開。
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2021年1月の記事一覧

敗れざる者、それは美学か新たなる挑戦か。

編集部の稲川です。 先週は大相撲初場所で平幕力士の大栄翔関が13勝2敗で、埼玉県の力士として初めて優勝を果たしました。 十両でも同じ追手風部屋の剣翔関が12勝3敗で2回目の十両優勝を果たし、追手風部屋が平幕・十両のワンツー優勝を飾りました。 いまだにコロナが猛威を振るい、出稽古が禁止されるなか、力士の多い追手風部屋は相部屋力士での稽古ができる環境で有利だったこともありますが、迷いのない押し相撲を貫いた大栄翔関は、毎回見ごたえのある勝負を繰り広げてくれました。 さて、私はス

史上最強の自己啓発書『成りあがり』

フォレスト出版編集部の寺崎です。 今日は「私とこの1冊」ということで、矢沢永吉『成りあがり』を取り上げます。 『成りあがり』は1978年(昭和53年)に小学館から単行本で出版されました。矢沢永吉がジョニー大倉らとキャロルを結成して活動を始めたのが1972年なので、YAZAWAが世に出て5年後に放った処女作ということになります。ちょうどCMソング「時間よ止まれ」が大ヒットしていたころです。 手元にある文庫本『成りあがり』は昭和55年初版、平成元年18刷。平成元年ということ

私にとっていつまでも青春の作家、沢木耕太郎。

編集部の稲川です。 私の青春とも呼べる1ページを刻んだ作家がいます。 沢木耕太郎。 沢木氏の本を引っ張り出して、なぜか数冊消えていたのですが、これも沢木耕太郎の本と言えばしっくりきました。 いかにも放浪っぽく、いかにも歴史を切り取った、“通り過ぎゆく本”が彼らしいと思ったからです。 沢木耕太郎氏も、現在は73歳。 最近の沢木氏は知りませんが、かつてテレビで拝見した時は、背も高くルックスもよく、私にとっては今もあの姿のままです。 沢木耕太郎(さわき こうたろう)。 19

私の人生を変えた1冊。“シャチ”が今の自分をつくっている。

編集部の稲川です。 2021年を迎えました。 あけましておめでとうございます。 今年、最初に紹介するのは、私の人生を変えた1冊です。 それは、私が大学生のときに出会った本で、 1993年に児童書の出版社あすなろ書房から発行された、 高橋健・著の『オルカの歌が聞こえる』という作品です。 この本が書店のどこに置いてあったのか(児童書の扱いですし)も、 なぜ手に取ったのかもまったく覚えていません。 しかし、この本が私の人生に大きすぎるほどの影響を与えた1冊であったとは、こ

野生のシャチ(オルカ)について本とともに語る

編集部の稲川です。 前回、オルカの魅力についてお話しさせていただきましたが、私は学生時代、野生のオルカを実際に見て人生が変わりました。 そもそもなぜ現地で野生のオルカを見ることができたのか。 それはオルカの研究者、ポール・スポング博士を支援する非営利団体オルカラボソサイエティ(現・オルカラボ・ジャパン)の一員としてボランティアで参加したからでした。 この団体は、毎年オルカがやって来る夏の時期に、現地ボランティアとしてオルカラボのあるハンソン島にスタッフを派遣し、現地レポ