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かつての里山に暮らす動植物 その3 樹木 ~白い花を咲かせる木~

 

 さて、今回も前回の続きでかつての里山に生える中・低木の紹介。
 上の写真は場所としては確かにかつての里山なのだが、木自体は自然にここに生えたものなのかどうか定かではない。というのも、わたしがこの木をよく見たのは信州だったからだ。上の写真は静岡のかつての里山であり、なおかつこの木一本だけがポツンと生えていたので、ひょっとすると誰かが植えた可能性もある。でも、あまりにきれいなので載せてしまった。

 花はサクラ、葉はリンゴを思わせるように、バラ科の木。別名をコナシと言うが、実際、実は小さなナシ(小梨)のよう。高さはせいぜい数メートルにしかならず、冒頭に書いた信州では、やはりかつての里山で数多く見かけた。また、同じ信州・上高地にはその名も”小梨平(こなしだいら)”と呼ばれる場所があり、そこは登山客のキャンプ地にもなっているのだが、山間の開けた平坦な場所にこの木が群生している。

 まったく、花が満開のこの木はきれいである。白い花は初夏に咲くことが多いが、このズミの花もさわやかな初夏の日差しや青空によく似合う。

  こちらは同じ白い花でもトベラ。ズミとは違い、信州のような乾燥した内陸部にはほとんど見られない。太平洋岸などの暖かく、雨の多い地域に生える常緑広葉樹。高さはやはり数メートルといったところなので、里山が里山として利用されていた頃には伐られて薪や柴として利用されていただろう。なので、里山が里山として利用されなくなったいま、森や林のなかでよく見られるようになった。花の香りがとても良い。開花の時期はやはり春から初夏。ズミもそうだが、初夏にはこうした白い花がよく咲く。それは、次第に増えてきた太陽の光を反射することで、虫たちをおびき寄せている気がするのだがどうだろう?

 実が熟して割れると中から真っ赤な種衣(しゅい)と呼ばれる、粘着質のものをまとった白いタネが現れる。この色で鳥の目を引き、さらには種衣になにか味のようなものが付いていて、鳥が好んで食べるようになっているようだ(一度、試してみたが、残念ながらその味はあまり覚えていない…)。タネを食べてもらい、鳥が移動した先でフンをしてもらわないとトベラにとっては不都合なのだろうが、白いタネだけを鳥が好んで食べるとは考えにくい。そこで、目立ってなおかつ、食欲を誘うような種衣を付けるようになったのだろう。

 葉は上の写真のようなので、葉の形だけからトベラと見分けるのは難しいかもしれないが、わたしは学生の頃、この葉の形から「靴ベラ、トベラ」と覚え方を教えてもらった。でも、最近、靴ベラってあまり見ませんねえ。

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