見出し画像

昨季王者か、リーグNo.1の名門クラブか 意地とプライドがぶつかり合ったアペルトゥーラ決勝

スタジアムの熱狂、
ゴールの度に上がる花火、
両チームで4枚のイエローカードと3枚のレッドカード、
120分の激闘と3度のゴール、
どこから切り取るか迷うほど、見どころ満載の決勝戦となった。

写真の引用↑ https://www.sdpnoticias.com/resizer/a5v4jNlpH5yD3-oKcODsV-gf6RI=/880x496/filters:format(jpg):quality(90)/cloudfront-us-east-1.images.arcpublishing.com/sdpnoticias/NX4F6YTD3JHYLP2XJKBKAM3SQE.jpg


最高の雰囲気を創り出したスタジアムの熱気

ティグレスとクラブアメリカのLiga MX アペルトゥーラ(前期)決勝戦。
ティグレスのホームで行われた第1戦は、1対1で引き分けた。
リーグ1を誇る攻撃力で猛攻を仕掛けるアメリカに対し、ティグレスは堅い守りとセットプレーで応戦。両チームの良さが存分に出た1戦目だった。

今回は、見どころ満載だった第2戦に注目していきたいと思う。
(第1戦は上記のリンクのハイライトでぜひ)

第2戦は、アメリカのホームスタジアムで、マラドーナの神の手と5人抜きゴール、ペレ率いるブラジル代表のワールドカップ優勝など、サッカー史に残る数々の伝説が生まれたエスタディオ・アステカで行われた。
(ちなみに日本サッカー界が初めてオリンピック銅メダルを獲得したのも、 このエスタディオ・アステカである)

スタジアムは、多くのアメリカファンで超満員となり、選手入場時に花火が上がり、試合前からファンのボルテージは最高潮。
決勝戦にふさわしい雰囲気の中、第2戦のキックオフを迎えた。

開始直後から激しい攻防

試合は、第1戦同様にキックオフ直後から激しい展開となった。
まずは、8分。メキシコリーグ通算200得点に王手がかかっているティグレスの絶対的エース・ジニャックがペナルティエリア外から放った強烈なボレーシュートがアメリカゴールを脅かす。
この強烈ボレーをきっかけに、激しい攻防戦が始まる。

27分、今度はカウンターを仕掛けたアメリカが、ティグレスゴールを襲う。
攻撃のキーマン・キニョネスのアウトサイドのクロスに、10番バルデスが強烈なボレーシュートを放つも、ティグレス守護神・グスマンの好セーブ。

33分には、ティグレスがフリーキックから、ジニャックがフリーで頭で合わせるも、次はアメリカの守護神でメキシコ代表にも名を連ねる、マラゴンが好セーブでチームを救った。

47分には、キニョネスが頭で合わせるも枠外。このシュートは、ゴール裏に設置されている花火(アメリカのゴールが決まると上がる)が誤って上がったほど決定的なシーンだった。

前半は、両者ともスピーディーな攻撃を魅せ、いつ、どちらが先制してもおかしくないと誰もが感じる前半となった。

互いに我慢の後半 

両チームすでに2枚ずつ警告をもらっているからだろうか、
激しい攻防が繰り広げられた前半であったが、後半は互い睨み合いのような状況が続いた。

後半開始からティグレスは、丁寧に繋いでリズムを作ろうとした。ディフェンスラインとキーパーで相手を動かしにいく。対するアメリカは、連動したディフェンスで、流れを渡さない。
アメリカのストライカー・マルティンのプレッシャーは、ティグレス守護神・グスマンがキックフェイントで見事にかわす。
それでも、アメリカの守備も崩れず、ティグレスを簡単には前進させなかった。

両者譲らない展開が続いた66分には、試合の速報を伝える現地サイトには、こう記してあった。

"La aficón americanista se hace sentir, los cánticos cada vez son más intensos para su equipo"
「アメリカファンは、自分たちを鼓舞し、チームチャントはますます激しくなっている。」

https://www.vavel.com/mx/futbol-mexicano/2023/12/18/1166329-america-vs-tigres-en-vivo-como-ver-transmision-en-directo-online-de-la-gran-final-de-la-liga-mx.html

スタジアムが一体となって、ホームのアメリカを後押しした。

そんな中で、後半最初にゴールを脅かしたのはアウェイのティグレスだった。70分、相手のパスがずれ、ピッチの芝に足を取られたのを、中盤のラファエル・カリオカが見逃さなかった。

カリオカは、奪った瞬間、迷うことなく右足を振り抜く。強烈なシュートに、準備が十分でなかったマラゴンも反応できなかった。
しかし、待望の先制点の瞬間はゴールバーに弾かれた。

結局このシーンで、ティグレスは先制できず、両者ともに我慢が続いた。

我慢の後半を変えた1枚のカード

両者譲らないまま時間は流れ、先に1点を獲れば勝負が決まる、そんな状況になった。ディフェンスも激しさを増し、両者共にフラストレーションが溜まってきた。

どちらにも得点の可能性が十分ある中、1つのシーンによって、状況が一変した。
それは80分、ティグレスのアタッカー・レイムンド・フルヘンシオのサイドからの仕掛けに、アメリカのキニョネスが対応した1対1での場面。
キニョネスが距離を詰め、激しくぶつかり合った。そこにフルヘンシオの手がキニョネスの顔に当たってしまう。このシーンに、レフェリーはフルヘンシオに対し、レッドカードを掲示。
その後、VARによる確認が行われたが、判定は覆ることなく、ティグレスは1人少ない10人での戦いを強いられることになった。

この退場により、状況は一変。ティグレスは引いて守り、アメリカが高い位置でボールを動かすようになった。
89分。アメリカは右サイドからのアーリークロスをバルデスが胸トラップからシュート。しかし、ここもグスマンの好セーブに阻まれ、そのセカンドボールはティグレスディフェンスの決死のクリアによって、先制点を奪うことはできなかった。

その後、9分のアディショナルタイムがあったものの、両者得点できず、試合はついに延長戦へと移った。

攻撃力爆発、そして歓喜の瞬間へ

試合終盤に、退場者を出したティグレスが、守りの時間が長くなることは予想がついた。完全アウェイの試合、疲労面も考えて、やむを得ない選択であったのは間違いない。
しかし、これまで何度もピンチを凌いできたティグレスディフェンスが生んだ隙をアメリカは逃さなかった。

延長前半が始まってわずか30秒ほど。左サイドのクロスをファーで待ち構えていたキニョネスがシュート。一度はグスマンが弾いたものの、こぼれ球を自ら押し込んで、ついにスコアが動いた。

待ちに待った先制点に、スタジアム中のアメリカサポーターが湧いた。

優勝を確信したサポーターの大歓声によって、ティグレスの守護神・グスマンは苛立ちを隠せず、相手ベンチへの暴言で警告を受けてしまった。
流れは完全にホームアメリカのものとなった。

そこからわずか4分後。後がなくなったティグレスが前がかりになった攻撃をアメリカは跳ね返し、すぐさまカウンターを仕掛ける。
キニョネスが突破を図り、独走状態化と思われた時、グスマンがペナルティエリアの外に飛び出した。しかし、グスマンの決死のディフェンスは及ばず、ファールを誘ってしまい、グスマンは2枚目のイエローカードを受け、退場。
ティグレスはこの日、2人目の退場を出すと同時に、守護神まで失ってしまった。

ここまでくると、アメリカの勢いは手が付けられなくなっていた。
104分。パラグアイ代表リチャード・サンチェスがペナルティエリア外から強烈なシュートを突き刺した。
本来であれば、ティグレスはディフェンスが寄せ、防げたと思われるシーンであったが、2人少ない状況ではどうすることもできなくなっていた。

”Olé, olé, olé, Campeón, Campeón” 
「オーレ、オレ、オレ、オレ、チャンピオン、チャンピオン」
"Vamos, Vamonos América, que esta noche tenemos que ganar"
「行くぞ、アメリカ 今夜勝つのは俺たちだ」

決定的な2点目が決まった後のアメリカサポーターは大合唱。
動画でも十分伝わるほどの熱狂ぶりであった。

119分には、ジョナサン・ロドリゲスがダメ押しとなる3点目。

サポーターと選手が一体となり、延長戦で圧巻のゴールラッシュを披露したアメリカが優勝を手にした。

死闘となったこの試合は、決勝戦にふさわしかった。
ティグレスのディフェンスとアメリカのオフェンス。両チームの特徴が存分に発揮された。
少々激しい試合となり、両チームともカードが多かったが、それもメキシコサッカーらしい。
スタジアムの雰囲気、選手の気迫、全てがメキシコサッカーを象徴していたように思う。

前期戦(アペルトゥーラ)をアメリカの優勝で終えたリーガMXは、年明けの1月に後期戦(クラウス―ラ)が開幕する。
クラウス―ラでも、メキシコサッカーをより知ってもらうために、毎節1試合取り上げ、様々なチームや選手を紹介したいと思っている。

ぜひ、クラウス―ラ編も引き続き読んでいただきたい。


この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?